タイと日本の違いは……

――タイにおけるJ-POWERの強みはどのようなところにあるでしょうか。

新垣氏:「J-POWERは1960年代からタイとのお付き合いがあり、現在も非常に良い関係が維持できていると思います。当初は水力発電からでしたが、送電線や火力発電などのコンサルティング業務を通じ、さまざまな形で信頼関係を築いています。定期的に『何か困ったことはない?』と情報交換できるような間柄であることは強いと思いますね」

――タイに赴任してみて、日本との違いを感じたことはありますか?

新垣氏:「大きな部分では特にありませんでしたが、意外なことに縦割り社会であると感じました。なので、業務ではなるべく情報が共有されるように動くことを心掛けていました。ウタイガス火力発電所は、1年前に運転を開始したノンセンガス火力発電所と設備仕様がほぼ同じものなので、建設中や運転上のトラブル・ノウハウなどをウタイにも伝えるようにしていましたね」

――仕事に携わる中で、やりがいを感じる部分はどのような点でしたか?

新垣氏お気に入りのナムトックムー

新垣氏:「やはり、現地社員と一緒になって汗をかいてプロジェクトを仕上げて、安定した電力を供給することでその国の発展に寄与できるというのは、非常に大きなやりがいですね。ウタイの建設工事が終了し、運転開始の時にも喜びがありました。受電や火入れなどいろいろなマイルストーンを経て、運転開始に向けた試運転を実施して行きます。試運転の最後に100時間連続で設備を稼働させるという総合的な試験があり、それを無事達成できた時はとてもうれしかったですね。

また、せっかくタイにいたので、タイ語も勉強してたくさんの地元の方とコミュニケーションを取りたいと思っていました。住んでいたところは日本人の多いエリアだったので、日本語が通じるお店もたくさんあったのですが、地元の方が行くようなお店にも連れて行ってもらったりしましたね。ナムトックムー(スパイシーな豚肉炒めと野菜のサラダ)がとても美味しくて、私は大好きでした」

新垣氏の送別会の様子。現地社員とも、積極的にコミュニケーションを取っていたという

タイからモンゴルへ

タイを離れた現在、新垣氏はモンゴル担当としてコンサルティング業務に携わっているという。

――現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

新垣氏:「7月に国際営業部に異動し、モンゴルの円借款事業におけるコンサルティング業務を行っています。具体的には、ウランバートル市にある1980年代に建設された発電所で設備の一部を改修する技術コンサルティングを行っています。J-POWERは、入札仕様書の作成支援や入札者の評価、設計図面などの確認、施工監理についてのアドバイザーとして関わっています。

モンゴルは冬場になると-30度まで気温が下がるのですが、発電所は電気だけでなく暖房用温水も市内に供給しているので、文字通り市民生活の命綱になっています。対象としている発電所は旧ソ連製なのですが、ソ連の崩壊にともなって技術者がモンゴルから引き揚げてしまいました。メンテナンスもままならない状態となり、1990年初めから日本政府の支援により改修・更新工事を継続しています」

――今後、どんなお仕事をしていきたいかなど、展望はありますか?

新垣氏:「タイでの経験で人と人とのつながりの大切さを非常に実感したので、まずはモンゴル語を覚えて地元の方とコミュニケーションが取れるようになっていきたいですね。

また、冬場に温水が供給されない地区では各家庭で石炭ストーブを使用しており、その石炭ストーブの煙が非常に深刻な大気汚染を引き起こしているそうです。この事態を、環境問題を考える企業として、何らかの形で良い方向に向かわせることができたらとも思っています」