さて、ここまでの連載で「指示の受け方」「報告の仕方」についてお話をしてきました。それでも、いざ先輩や上司に向かって話していると「何を言っているか(自分でも)わからなくなる」「要点を得た伝え方ができない」「伝えたいことが、うまく伝わらない……」なんていう若手ビジネスパーソンは多いのではないでしょうか?
結論から話したつもりでも、結局冗長になってしまう。でも、ふと先輩や仕事のできる同僚を見ていると、なぜかいつも「要点を得て」話をしている人がいる……。このように、なんだか「的確」に物事を伝えられる「できる」人はどんな思考パターンを持っているのでしょう?
実は、そんな「できる」人たちは、自然と頭の中である「フレームワーク」を使いこなしています。そして、それはこの記事を読んでいるあなたなら「すでに」知っている可能性が高いことでもあるのです!
周りとのコミュニケーションが円滑になるだけでなく、さらには仕事の抜け漏れも防いでしまう、この「できるねえ~」と言われる人は必須の「フレームワーク」を、今回はお伝えします!
■それは「7W2H1G」
今回はさきに結論をお伝えしましょう。その「フレームワーク」とは、ズバリこちら!
「えっ。そんなこと? 」「5W2Hなら聞いたことあるけど…」と思ったそこのあなた。侮るなかれ。実はこのシンプルなフレームにこそ、仕事におけるとても大事なポイントが詰まっているのです。
そしてもう1つとても大切なポイントは、「多くの人が当たり前すぎて見過ごしている」ということなのです。例を挙げて考えてみましょう。
■「できる」人は、曖昧にしない
「○○さん、この前依頼した××株式会社に提出する資料、叩きでいいので明日中に頂戴ね」
そんな風に上司に確認されたとしましょう。
あなたは、その資料はすでに着手しており、明日1日かけて仕上げようという目論見だったので「承知しました! 」と元気よく返事をします。
そして翌日。色々と顧客対応が重なり、その資料仕上げに着手できたのは夕方社内に戻ってから……。まあ今日中には上司に提出できそうだし、急いでがんばろう! と思っていたら、上司から着信。
- 上司:「○○さん、今日中って言った資料どうなった?まだ来てないんだけど? 」
- あなた「えっ、はい。今作ってます。今日中ですよね? 」
- 上司:「え、今作ってるの? 今日中って言ったけど、普通今日中って言ったら最低でも夕方までには送るだろう…」
- あなた:「……」
これは上司の思う「今日中」とあなたの思う「今日中」の認識が、ずれた結果起こることです。
では、「できる」人であればどうするか?
上司に「明日中に頂戴ね」と確認された時点で、この「7W2H1G」がその人の頭を駆け巡ります。そして、その10個の視点において「曖昧になっている点がないか? 」を確認するのです。
■7W2H1Gで「曖昧」をなくすとは
一つひとつにおいて詳しく言うとこんな具合です。
WHY - なぜ何のために
例:××株式会社は新規見込み顧客。△△の商材の提案のため
GOAL - どの状態へ
例:この提案書の叩き、というのはこの前確認した通り、一度自分が思ったように作った状態でいいと言っていたな
WHEN - いつ、いつまでに
例:明日中、でOK。でも、明日中っていうのは終業時間まで、で問題ないのかな? 確かお客様への提出は明日の午前中だったはず…。
WHERE - どこで
例:これはメール提出でOKだな(特に場所の決め事はない)
WHO - 誰が
例:自分が
WHOM - 誰に対して
例:上司に提出(他の人への共有は不要)
WHAT - 何を
例:この提案書を
WHICH - どちらから(優先順位)
例:今のところ他に優先順位に迷うようなものはないから問題ないだろう
HOW - どのように
例:PPTで提出、くらいしか社内の提案書の決め事はないから問題ないだろう
HOWLONG - どのくらいかけて(時間・コスト)
例:コストはもちろんかけないが、かける時間は自分の塩梅でOKだ(自分の提案書作成の経験値アップのためでもあるから)
そしてこの中で、「少しでも曖昧だな」と思った点(WHEN)について、すぐに確認をしておけば、上司の思っている「普通」とのずれが起こる可能性は減らすことができるのです。
■5秒の早口で、覚えよう
なぜこんな細かなことまで考える必要があるか? それは人によって「普通」や「当たり前」が違うのが当然だからなのです。
若手社員だけでなく、転職をした場合も同じなのですが、多くのミスやコミュニケーションギャップは「当たり前」と感じることの違いから起きます。
特に、若手社員は「大丈夫」と思っても、この「当たり前」に対する思い込み度合いが高いもの。だからこそ、常にこの「7W2H1G」のフレームを常に頭に入れて、確認をしながら仕事を進めることで、先輩や上司との「当たり前」についてのギャップが埋まり、「できる」人としての信頼を高めることができます。
今回は「時間」についての例を挙げましたが、実は一番ギャップが生まれやすいのが上から2つの「WHY(目的)=なぜ何のため」「GOAL(目標)=どんな状態へ」。この2つをしっかりと周囲と確認しながら進めると、実は「巻き込み力」も高まっていくという、重要なポイントでもあるのです。
ちなみに…… このフレームワークを覚え使いこなすポイントは、「早口」。私の実施する新入社員研修では、この「7W2H1G」の日本語部分を、「なぜなんのため、どの状態へ。いつ、いつまでにどこで…」という感じで、暗記して5秒以内の早口で言い切るプチテストを実施します。早口で言い切れるようになると、意外と人は忘れません。
ここまでついつい読んでしまった、そこのあなたはぜひ!今から10分時間を取り、5秒でこの「7W2H1G」を暗記して言えるように練習してみてくださいね。明日からの仕事の質が、一気に変わるかもしれません!
今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。