――事件や事故の真相の再現ドラマを作るにあたって、バラエティ番組の『ザ!世界仰天ニュース』を名乗って取材するのは、やはり最初の頃はハードルが高かったですか?

実は最初の特番は、報道のアーカイブ映像を使おうと思ったので、報道の番組として企画書を出したんです。なので、特番の8回は報道局とやっていたんですが、レギュラー化するにあたって報道局ではできないという話になって、情報局の担当番組としてスタートしました。

最初の頃は新聞記事から拾ってくるようなレベルのものを映像化していたんですが、2010年ぐらいから日本の刑事事件など重い題材を扱うようになりました。その頃には番組の名前が知られていたので、丁寧に説明して取材していくという形ですね。

――改めて、バラエティで近年の大きな事件や社会問題を取り上げることの意義は、どのように感じていますか?

鈴江奈々アナが『仰天』の担当だったとき、2008年の北京オリンピックに報道のリポーターとして事前取材に行ったんですよ。その時、マラソンのコースが大きな壁で覆われて、そこに絵が描いてあって、テレビ中継だと街中を走っているように見えるんですけど、鈴江アナがその壁の裏を覗いてみたら、崩れかけた家が並ぶ生活がギリギリの人が暮らす街だったんです。そこをリポートしていると、髪の毛が生えていないパジャマの女の子がいて、声をかけたらその子が白血病だというんです。聞くと、田舎から薬を求めて北京に来たけど、1回目の薬でお母さんの貯金を全部使い切っちゃったので、2回目の薬が打てず、壊れかけた家でお母さんと2人で命尽きるのを待っているような状態だったんです。

その映像を鈴江アナが撮ってきて、ニュースでも流したんですけど、これは『仰天』でやらなければと思いまして。再現ドラマを作って放送したら、彼女を支援する会が日本で立ち上がり、あっという間に1千万円以上の寄付が集まったんです。そのお金を届けて彼女は治療を受けることができ、今も元気なんですけど、このときに「テレビってすごいな」と、自分で作りながら思って。だからバラエティでも、番組を見て何か行動を起こしたり、変わってくれたりする人たちがいればいいなと思うようになりましたね。

笑福亭鶴瓶&中居正広の存在感

――重い事件や社会問題を扱う中で、バラエティ番組としてゲストとトークするスタジオパートもありますが、そこのバランスはやはり気をつけていますか?

気をつけています。その中で、僕はタレントさんがVTRを受けて何をコメントしてくれるのか、ものすごく興味があるんです。そのタレントさんの言葉だったり、スタジオの皆さんの反応が、事前に想像していたのと全然違うときもあるので、そういうときにはVTRで伝わらなかった部分を直すこともあります。

――そのスタジオを仕切るMCの笑福亭鶴瓶さんと中居正広さんの魅力は、いかがでしょうか。

この2人の存在感はとっても大きいですね。鶴瓶さんは『仰天』が始まったとき40代で、そこから、今72歳になって国や制度に関して、『仰天』で自分の意見を言うとスカッとするそうで、楽しんでくれています。

中居くんも最初は20代で今はもう51歳ですから、完全に大人のコメントになってきましたね。この2人は、ゲストのタレントさんもピリッとする緊張感あるMCなので、皆さんちゃんとコメントをしようと思ってくれて、すごくいいですね。

  • MCの中居正広(左)と笑福亭鶴瓶 (C)日テレ

――事件や事故を再現VTRで紹介する番組は各局でもありますが、細かくチェックされるのですか?

再現を扱う他番組は、見ないようにしています。見てちょっとでも頭に残っちゃったら意識しちゃって自由に作れなくなるので。自由に作った結果、「似てる」と言われても「そうだったの?」って言えるけど、もし見てたら「似てるな」と思った瞬間、自分で遠慮しちゃいますから。

――『仰天ニュース』の今後の展望は、いかがでしょうか。

事件の裏方というのに注目していきたいと思いますね。例えば、京都アニメーション放火事件があって、その事件自体は裁判中ですからまだ一切番組で扱えませんが、瀕死だった青葉(真司)被告の命を助けるために必死に治療した鳥取大学の上田敬博医師の話を放送しました(「36人の命を奪い全身大火傷の被告と死の淵から生還させた医師」24年4月30日放送)。彼がいなかったら裁判が開かれなかったわけですが、大量殺人の疑いのある人物の命を救うということには、医者として微妙な倫理観の中で大きな葛藤と決意があったと思ったんです。そういう裏方の存在を伝えていきたいと思いますね。

  • 「36人の命を奪い全身大火傷の被告と死の淵から生還させた医師」(24年4月30日放送)より (C)日テレ