5月30日に仙石東北ラインが開通し、東北本線と仙石線の直通運転が始まる。直通列車の運賃計算のために、東北本線松島駅と仙石線高城町駅の間に「0.3km」の営業キロが設定された。実際の線路は松島駅の仙台寄りで分岐し、高城町駅の仙台寄りで合流する。仙石東北ラインの列車に乗っても松島駅では下車できないので要注意だ。

松島~高城町間に設定された営業キロ「0.3km」は、JRの営業距離では最短となる

発売されたばかりの市販の時刻表を眺めてみたけれど、仙石東北ラインは巻頭の地図も時刻表も松島駅を通るように示されていない。松島駅経由はきっぷの計算上の話だから、利用客が困る事態にはならないだろう。

東北本線松島駅より盛岡方面の駅から仙石線に乗り換える場合は、松島駅で降りても乗り継げないため、隣の塩釜駅まで行く必要がある。ただし、運賃計算上は松島駅から高城町駅へ行ったとして計算されるから、松島~塩釜間の距離は加算されない。ひと駅だけ遠回りになるけれど、運賃に含まれないから、ちょっとお得ともいえる。

実際の乗車経路ではなく、松島駅と高城町駅の最短距離に乗ったとして運賃を計算する

ところで、駅間の営業キロ「0.3km」は、JRグループの最短駅間記録を更新する。いままでは営業キロ「0.5km」が最短だった。設定区間は仙石線のあおば通~仙台間、山手線・京浜東北線の日暮里~西日暮里間、境線の博労町~富士見町間だ。これら営業キロ0.5kmの区間は実際に乗車して短さを確認できたけど、新記録の「0.3km」は前述のように両駅を結ぶ列車がないので、短さを体験できない。松島~高城町間は、「営業キロが設定されているにもかかわらず、実際には乗車できない」という珍しい区間となった。

ところで、松島~高城町間の営業キロが0.3kmで、実際には塩釜駅乗換えが必要となると、列車に乗るよりも歩いたほうが早いかもしれない。そこでオンライン地図サービスで測定してみたところ、徒歩11分と表示された。乗換えルートでは高城町駅15時30分発、塩釜駅15時42分着、同駅15時43分発、松島駅15時51分着の所要時間16分が最短。やっぱり歩いたほうが早かった。

もうひとつ気になった数字がある。この徒歩ルートの道のりは0.8km。営業キロ0.3kmの倍以上になっている。道路を無視して両駅間の直線距離を測っても0.6kmだった。そうなると、営業キロの「0.3km」は実際の距離の半分だ。実際の距離と運賃計算のための「営業キロ」は一致しないし、運賃計算上はお得になって、利用者としてはうれしい。それにしても、「0.3km」の根拠はなんだろう?

実際の距離と営業キロの関係

JR東日本広報に聞いてみたところ、「営業キロの設定は仙台支社が実施した」という。最終決定は本社だろうけど、起案は仙台支社になるらしい。そこでJR東日本仙台支社にも聞いてみた。回答は「東北本線の分岐点の上下線中心と、仙石線の分岐点を結ぶ線路の距離です」とのことだった。

つまり、「0.3km」は駅間の距離ではなく、仙石東北ラインを設定するにあたって建設した「新しい線路」の距離だった。じつは、東北本線側の分岐点は「松島駅構内」、仙石線側の分岐点は「高城町駅構内」という扱いとなっていて、両方を結ぶ線路の距離を駅間の距離として決定したわけだ。通例なら、駅中心同士を結ぶ線路の実距離が基準となり、もっと長くなりそうだけど、かなりお得な設定といえる。

「最短営業キロ更新」「両駅を結ぶ列車なし」「実距離の半分の営業キロ」と、仙石東北ラインの松島駅~高城町駅間は話のネタが3つもあった。その意味でもお得な路線といえそうだ。