元国税職員さんきゅう倉田です。好きな 銀行は「投資銀行」です。

昔あったベストセラーをモジって題を『人は聞き方が9割』としましたが、実際には聞き方の重要性は7割くらいだと思います。何の話かというと、人から良い情報や凄まじい知識を得るとき、その人の話し方より周囲の人間の聞き方の方が重要だということです。

ぼくは税金のサークルを主宰しています。10人くらいで集まって、税金やお金のためになる話、おもしろい話を共有するサークルです。

始めてから3年ほど経ちますが、初参加の方で稀に「自分は話すことがないので、聞くだけでも良いですか」とおっしゃる方がいます。その場合は「趣味やお仕事など、何か得意な分野について話していただけたら嬉しいです」と事前に伝えています。

本人にとって価値がなくとも

情報や知識というのは、本人にとっては全く価値がなくとも、他人にとってそうとは限りません。だから、話そうとする意思があり、質問の方法が優れていればアウトプットが苦手な人からでも良い情報を得ることができます。

ある会に、スキューバダイビングが好きな方が参加してくれました。

その方がなぜ潜るのかというと、海の生物、とりわけサメが好きなのだそうです。ここで、スキューバダイビングにかかる費用やおすすめのスポット、サメの魅力を聞いても、有益な情報が得られたかも知れません。聞いてみないとどうなるかわからない。しかし、このときは、「サメっているんですか? みんなザメではありませんか? 」と聞きました。

カニはいない、みんな「ガニ」

その3日前に、TBS『水曜日のダウンタウン』で、「◯◯カニ」という名のカニはおらず、存在するカニの呼称はすべて「◯◯ガニ」であると紹介していました。

ぼくは、参加者から「サメが好きです」と聞いて、もしかするとサメもみんなザメなのではないかと思ったのです。

サメ好きの参加者の方は、知っているすべてのサメの名前を言い、それらすべてが「ザメ」であることを確認しました。

そこで、どうしてそんな質問をしたか参加者の方に説明して質問の意図を伝えることで、カニもいないしサメもいないという結論をひとつの話としてまとめました。

質問の根拠まで伝えることで、話し手は質問の意図を理解して、より的確な情報を提供することができるし、参加者はより深度のある情報を得ることができます。

仮に質問の背景を説明しなかったとすると、疑問に思ったことを何でも質問していいと他の参加者に思われてしまいます。

それは危惧すべき事態です。

芸人や新聞記者など、話す訓練や質問する練習をしていない人の自由な質問は、リズムを狂わせ、話の腰を折ります。

先日サークルの集まりでこんなことがありました。結婚はしているけれど、そのことを隠している女性に対し、「ご主人は今何しているんですか? 」と聞いた人がいました。

何をしているか答えれば、配偶者の存在を認めることになります。しかし「いません」と答えれば嘘をつくことになります。配偶者の存在を隠すことといないと嘘をつくことは全く異なる。

質問された女性は、曖昧に誤魔化していましたが、質問者がさらに深く質問をしたことで、不穏な空気が漂いました。今日は参加しなければ良かったなと思ったことでしょう。

ああ、自由に質問させてはだめだな、と感じた瞬間です。

自分の催しで、みんなで話をするときは、全員に話を振るようしています。参加者、特にぼくが興味のある話にならないと判断すれば、早めに「ありがとうございました」と言って、他の人に話を振ります。盛り上がれば、質問を繰り返し、より深い話をしてもらいます。

主催者は、聞く側のアプローチ次第で、会合全体の質が大きく変化すると意識して話を聞くようにしなければなりません。

そうすれば、誰もがおもしろい話ができるし、ヒーローになることができると思っています。

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