元国税局職員 さんきゅう倉田です。
好きなくまは「バーソロミュー・くま」です。

  • 元国税局職員 さんきゅう倉田です。 好きなくまは「バーソロミュー・くま」です。

『ゴルディロックスと三匹のくま』というイギリスの童話があります。


***


ゴルディロックスという女の子が森を歩いていると、一軒の家がありました。
家に入ると、テーブルの上には、おかゆが3つありました。

「このおかゆは熱すぎるわ、いらない。このおかゆは冷たすぎるわ、いらない。このおかゆはちょうどいいわ」

そう言って、ちょうどいい温度のおかゆをすべて食べてしまいました。
家の中には、椅子が3つありました。

「このイスは硬すぎるわ、座らない。このイスは柔らかすぎるわ、座らない。このイスはちょうどいいわ」

そう言って、ちょうどいいイスに座りました。

ゴルディロックスが座ってしばらく経つと、イスは壊れてしまいました。
奥の部屋に行くとベッドが3つありました。

「このベッドは高すぎるわ、眠れない。このベッドは低すぎるわ、眠れない。このベッドはちょうどいいわ」

そう言って、ちょうどいいベッドに眠りました。
ゴルディロックスが眠っていると、その家の住人である三匹のくまが帰ってきました。


つづく   


その後、ゴルディロックスがどうなったのかは、今回の主旨と関係ないので割愛します。ご自身で想像して、たのしんでください。

ここで大事なのは、ゴルディロックスが3つあるもののうちの真ん中を選んだ、ということです。

これにちなんで、選択肢が3つある場合には真ん中が選ばれやすくなることを「ゴルディロックス原理」といいます。

選択肢は3つ以上が最適?

この原理を使って、選択肢が2つの場合に、選択肢を1つ増やすことで、選択させたいものが選ばれる可能性を高めることができます。

例えば、選択肢AとBからAを選ばせたければ、Aが3つの中間となるようにCを追加します。

日本では、昔から松竹梅の3つの選択肢を提供していることが多いので、「松竹梅の法則」と呼ぶこともあります。25年くらい前に、本体から煙が出るほどプレイしたスーパーファミコンの『がんばれゴエモン』では、宿屋の料金が松竹梅の3つだったと記憶しています。

石川五右衛門は安土桃山時代の人ですが、彼やねずみ小僧の話が庶民のなかで人気を博すのは、江戸時代になってからです。小説や浄瑠璃、歌舞伎の題材となって、親しまれました。つまり、『がんばれゴエモン』も安土桃山時代~江戸時代が舞台で、その頃から松竹梅が使われていた可能性があります(ここで、コナミがゲームをなるべく史実に基づいて作成していると信じることにする)。

行動経済学では、選択肢が極端に少ない場合より、選択肢が多い場合のほうが、選ぶ人間の効用は高まるとされています(「効用」がよくわからない人は「満足度」だと思ってね)。

選択肢を2つから3つにすれば、効用も高まるし、提供する側が意図したものを選ばせることができるのです。

昔の日本人も感覚的に「3つの選択肢があれば真ん中が売れる。そもそも、商品全体が売れるようになる」とわかっていたのかもしれません。

「おとり効果」で選ばせる

ケースによっては、「おとり効果」とも言います。

例えば、ぼくが講演会の料金表を見せるとします(実際には非公開)。

1時間50万円と30分25万円だったらどちらが選ばれるでしょうか。客の予算やイベントの時間によって、選択は変化すると思います。でも、自宅から会場に到着するまでに1時間以上かかると考えると、30分多く喋るのは誤差の範囲です。拘束時間全体を考慮すれば、1時間のほうが効率が良いですよね。

そういうときに、おとり効果を使います。

1時間50万円、30分25万円に、50分50万円を加えます。

1時間も50分も料金が変わらないので、50分を選ぶ人はほとんどいないと思います。ただ、その分、1時間が割安に見えませんか。おとりである50分を用意することで、客は比較がしやすくなって、つられてしまうのです。

なにか選択肢を用意するときは、ゴルディロックス原理とおとり効果を思い出してください。

さんきゅう倉田

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