本連載の第228回では「Excel VBAを使った作業の効率化10選」という話をお伝えしました。今回はGoogleのツールを使った作業を自動化する方法についてお話します。

職場によっては、ExcelやPowerPoint、WordなどのMicrosoft Officeのソフトではなく、主にGoogleのスプレッドシートやスライド、ドキュメントを使っているというところもあるでしょう。ひょっとすると、そのような職場にいる方は「VBAは使えないから作業の自動化はできないのか」と諦めてしまっているかもしれません。しかし、諦めるのはまだ早いです。VBAに替わる自動化の手段がGoogleにも備わっています。それがGoogle Apps Script(GAS)です。

GASはGoogleが提供するスクリプト言語で、Google Workspaceに含まれるアプリケーション(Google Docs, Sheets, Forms, Drive, Calendarなど)を用いた作業を自動化するツールです。

GASを使い始めるにはGoogleアカウントが必要です。GoogleにログインしてGoogleドライブを開き、新しいGoogleスプレッドシートを開いて、メニューの「拡張機能」から「Apps Script」を選択します。これにより、GASのエディタが開き、ここにスクリプトを書いて実行することができます。

実際のコーディングについては、詳しい情報がブログや動画で説明されているものが無数にあるので、ここでは「GASを使ってどんなことができるか」に特化してお伝えします。

1. Googleフォームからのデータ自動収集

営業職のアンケートやフィードバックの収集でよく使われるGoogleフォーム。しかし数が多く集まれば、それだけ集計作業の手間が増えてしまいます。そこでGASの出番です。GASを使ってフォームの回答を自動でGoogleスプレッドシートに転記し、集計まで行うスクリプトを作成できます。これにより手作業でのデータ転記の誤りをなくしつつ、時短を実現できます。

2. 定期レポートの自動生成

経理職には月次や四半期ごとの報告が欠かせません。GASを利用して、特定の日付になるとスプレッドシートのデータからレポートを生成し、PDF形式で自動的に関係者にメール送信するシステムを構築できます。GASを使った仕組みを一旦、作ってしまえばあとは勝手に作業をしてくれるので、残る作業はスプレッドシートへのデータ入力と送り先の更新だけで済みます。

3. メールベースのワークフロー自動化

人事や総務での新入社員の受け入れプロセスにおいて、GASを使用してメールをトリガーに各種ドキュメントの提出リマインダーを自動送信することができます。これにより、迅速かつ正確なプロセス管理が可能になります。

4. スケジュールの自動調整

Googleカレンダーと連携させ、GASを使用して会議のスケジュールを自動調整します。参加者全員のカレンダーを確認し、全員が参加可能な時間を提案するスクリプトを書くことで、時間のロスを削減できます。

5. インボイスの自動作成と送信

売上が発生するたびに、GASを用いてインボイスを自動作成し、PDFに変換して顧客にメール送信することが可能です。請求漏れの防止と迅速な請求処理が実現できます。

6. 在庫管理の自動化

商品の在庫が一定数以下になったら、GASで自動的に発注リストを作成し、メールで通知することができます。これにより、在庫切れによる機会損失を減らすことが可能になります。但し、在庫の受け払いや在庫数をある程度リアルタイムに把握できていることが前提になります。

7. タイムシートの自動集計

社員が入力した勤務時間のタイムシートをGASを使用して自動集計し、労働時間の計算や残業時間の管理を簡略化します。これにより、人事部門の負担が大幅に軽減されます。

8. ドキュメントのテンプレート化

よく使用するドキュメントのテンプレートをGASで管理し、新しいドキュメントが必要な際にはスクリプトで自動的に作成します。これにより、ドキュメント作成の際の一貫性と効率が保たれます。

9. カスタマーサポートの自動化

顧客からの問い合わせをGoogleフォームで受け付け、GASで自動的に優先度別に分類し、適切なサポートチームに振り分けることができます。レスポンスの迅速化と顧客満足度の向上を実現します。

ここまで効率化の例を見てきたとおり、GASはビジネスの多岐にわたるプロセスを自動化し、業務効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。これらのスクリプトは比較的簡単に作成でき、特にITに詳しくない20代のビジネスパーソンでも取り組みやすいのが特徴です。今回紹介した10の効率化テクニックを実践することで、日々の業務にかかる時間を削減し、より創造的な仕事に集中する時間を確保できるでしょう。