人生における30代は、悩み多き年代と言えるのではないだろうか。就職間もない20代に比べ、結婚や出産といったライフステージの変化を経た人が圧倒的に多くなり、年収や貯金額も同世代間で差が付き始める。それに伴い、悩みの種も増えてくるというわけだ。
そこで本特集では、30代の悩みとしてあげられることが多い「結婚」「貯蓄」「健康」「住宅購入」の4テーマに関し、各分野のエキスパートによるアドバイスを紹介する。今回のテーマは「抜け毛」。美容皮膚科・美容外科・形成外科のやながわ厚子医師に毛が抜け落ちるまでのサイクルや抜け毛の要因などについて解説してもらった。
毛が生えてから抜けるまでのサイクル
抜け毛について知るには、髪が生えて抜け落ちるまでの過程をしっかりと理解しておく必要がある。髪が生えてから抜け落ちるまでの期間(毛周期)は「成長期→退行期(移行期)→休止期」というサイクルで成り立っている。それぞれの特徴は以下の通りだ。
成長期……成長期の期間は男女で異なり、男性は2年から5年、女性は3年から7年と言われている。成長期には「毛包幹細胞」と「色素幹細胞」という2つの細胞が存在するバルジ領域から、毛に対して「生えろ」とのサインが出る。この発毛の指令を受けて毛乳頭部分が毛根に栄養を送り、毛が成長する。
退行期……退行期の期間は約2~3週間。毛乳頭の活動が止まり、毛乳頭から栄養素や酸素を受けとり、細胞分裂することで髪の毛をつくりだす毛母細胞へ栄養が行かなくなってしまため、毛の成長が止まる。毛包が収縮してしまうため、毛が上に押し上げられていく。
休止期……休止期は3カ月ほど。毛乳頭は次の成長期が来るまで活動を休止し、次の毛を作る準備をしている。ただし、バルジ領域は無くなっていると言われている。
「自然に抜けていく抜け毛は毛周期に基づいており、一日に約50本~100本は自然に抜けていきます。そのうち、約半分が洗髪の際に抜けると言われています」
抜け毛を増やす主要因は
30代になれば、職場で管理職に登用される人も増えてくる。その両肩にかかる責任や重圧も増えてくるため当然、ストレスも増大する。そしてこのストレスが抜け毛につながりやすいとやながわ医師は指摘する。
「ストレスやホルモンバランスの乱れが抜け毛を増やす原因と考えられています。ストレスを溜め込んでしまうと自律神経の乱れが起きてしまい、ホルモンバランスが崩れてしまいます。そのため血行不良になりやすく、栄養分が髪に届かないので毛根が弱ってしまいます」
さらにそのストレスを解消させるべく、喫煙や暴飲暴食をしてしまう人もいるだろうが、これらの生活習慣も髪にとってはNGだ。
「『喫煙』『睡眠不足』『不規則な生活』などの生活習慣も髪に与える影響が大きいです。そのほかでは、『PM2.5』『花粉症などのアレルギーの発症』『紫外線』『乾燥』などの環境因子も抜け毛につながります」
「春に抜け毛が増える」は本当か
環境因子という観点から言えば、「春は抜け毛が増えやすい季節」といった類の言葉を見聞きした人もいるのではないだろうか。この言葉のいわれは、入学や入社、転勤、異動などの環境の変化や、アレルギーの発症などでストレスが増えてしまうことにあると考えられている。
「春に特に抜け毛が多くなるわけではないのですが、春になる季節の変わり目は気温の変動もあり、肉体的にも体調に影響を受けやすいと言えます。新しい生活が始まるなど、普段の生活の環境が変わってしまう方も多く、精神的にもストレスも多い季節です。また、花粉症を発症しやすい季節でもあり、肌荒れや肌の乾燥に悩む方も増えます。紫外線も徐々に強くなっていくタイミングでもあるので、いろいろな抜け毛につながる因子が重なりやすい時期です」
頭皮の乾燥は皮膚炎を引き起こし、髪にとって必要な栄養分を補えなくなる。新天地での慣れない仕事で心身とも疲れてしまい、食事や睡眠といった日常生活が乱れてしまえば、ホルモンバランスも崩れやすくなる。春先は抜け毛を招く因子がいくつか重なりやすいことが、「抜け毛の増加」という印象につながっていると考えられそうだ。
抜け毛を減らすための予防策とは
抜け毛を招く原因は、ストレスなどの人的要因と紫外線などの環境要因に大別できるが、予防には人的要因をいかに取り除けるかが重要となる。以下に今日から実践可能な抜け毛予防策をまとめたので参考にしてほしい。
・自分なりの方法でストレス発散をし、ストレスを可能な限り減らす
・栄養バランスを考えて食事をする
・就寝前のスマホいじりなどを避け、睡眠時間をきちんと確保する
・胃腸に負担がかかる食事(脂っぽい食事や濃い味の食べ物、刺激物)を避ける
・頭皮に良いと言われている海藻やゴマなどを摂取する
・血行を良くして髪が必要な栄養分を吸収しやすくなるよう、入浴時は髪についた花粉などのアレルギー物質をぬるま湯で洗い流し、指の腹で頭皮マッサージをする
「入浴時は体を温めたり、軽い運動で筋肉をほぐしたりして血流を改善させることもいいでしょう。ブラッシングも重要です。ただ、ブラッシングを強く過度にしてしまうとかえって皮膚を痛めてしまうおそれがあるので注意しましょう。また、髪に良いとされる成分(ビタミンやミネラルなど)を含んだサプリメントを摂取するのもおすすめです」
※写真と本文は関係ありません
取材協力: やながわ厚子(ヤナガワ・アツコ)
美容皮膚科・美容外科・形成外科。En女医会所属。
美容皮膚科クリニック ヤナガワクリニックの院長を務める美容のエキスパート。
美容医療や化粧品に詳しく新しい美肌治療や化粧品や食事やサプリメントもふくめてカラダの中からも美肌を目指す。インスタグラムなども活用し、積極的に情報を発信している。二児の母でもある。
En女医会とは
En女医会は150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。