2008年はオリンピックイヤー。良くも悪くも今、世界でもっとも注目される国は中国だろう。今回は、その中国で開催される2008年夏季五輪の舞台、北京を中心にお伝えしよう。

北京は、いわずと知れた中国の首都。大国・中国の政治、経済、文化の中心として、巨大な北京首都国際空港や中国鉄道の核となるターミナル駅を備え、市内には地下鉄がはり巡られている。北京は、古くから中国北部の要所として栄え、特に明代以降は首都として発展した街だけに歴史的建造物も多い。中でも一番の見どころは、明、清の皇宮、昔の名前を紫禁城といい、現在、世界遺産に指定されている「故宮(故宮博物院)」である。

故宮観光の出発点は、天安門である。天安門へは、北京市内でタクシーを拾えば、どんなタクシーでも連れて行ってくれるし、料金もさして高くない。だが、急成長するアジアの大都市の例に漏れず、北京市内も渋滞が多い。そこでオススメは地下鉄だ。ちなみに北京の地下鉄は「地鉄」と表示されているので、乗り場などはすぐにわかるだろう。北京五輪を前に地下鉄の路線網は急速に整備されており、渋滞の激しい北京市内を移動するもっとも便利な手段となっている。

次々と高層ビルやマンションの建設が進む北京市内。人口は1,600万人といわれているが、流動人口を含めると2,000万人を超えると考えられている

地下鉄1号線の天安門駅で下車し、地上に上がるとすぐに、広大な敷地の天安門広場が見えてくる。1989年に起こった天安門事件、悲劇の現場である。20年ほど前の事件を思い浮かべながらここに向かうと少々緊張するが、実際に見てみると今の天安門広場はとてものどかな雰囲気。休日には市民の憩いの場となっており、20年前の悲劇はまったく感じさせない。

休日の朝の天安門広場はのどかな雰囲気。20年前の悲劇をまったく感じさせない

広場の西には人民大会堂、東側には中国国家博物館がそびえ立つ。さすがに大国中国の中心。その迫力には圧倒される

天安門広場の奥、道を挟んで向こう側に建つのが天安門だ。天安門広場の向こう側に、長さ(南北)約1km、幅(東西)750mという広大な故宮が広がっている

天安門は中に入ることができる。僕は時間がなくて上がらなかったが、この巨大な門の上に建ち、前に100万人収容可能という天安門、背後に巨大な故宮を見るのは、さぞかし壮観だろう

天安門の抜けると、石畳の広い広い通路があり、端門と呼ばれる大きな門が見えてくる。さらに、端門を抜けると、その先に巨大な門、午門へと到着する。ここが故宮の入り口である。入場券を購入して、いよいよ故宮の中に入っていく

故宮の入り口、午門。ここでチケットを購入して奥へと進んでいく。午門の高さは約36m。とにかくスケールが大きい

午門を抜けて中へ入ると、そこはまさに映画『ラストエンペラー』の世界。とにかくスケールは、日本人の常識をはるかに超えている。さすがに、中国のみならず、アジア全域に影響を与えた大国の皇宮である。沖縄の首里城や以前紹介したベトナム・フエ王宮など、この故宮に強い影響を受けている建物を、アジア各地で見ることができる。しかし、やはり本家の規模はケタが違う。石畳の上を歩いていると、気分はラストエンペラーの溥儀(清朝最後の皇帝)って感じである。

大都会北京の中心にこんな宮殿があること自体、なんだか不思議な感じ。中国の多くの皇帝は、この城内で一生を過ごしたという

1つの宮殿を抜けると、石畳の向こうに次の宮殿が見えてくる。こうした光景が延々1kmに渡り続いていく

故宮内部の地面はすべて石が敷き詰められている。この石畳を作るだけでも、ものすごい資金と労力が必要だっただろう。中国皇帝の権力の強さを物語っている

それぞれの宮殿は、柵越しに中を閲覧できる。実は僕が行った時、溥儀が即位した大和殿は改装中で見れなかった。残念

こちらは溥儀の母の玉座(だったと思う)。映画のセットみたいな不思議な雰囲気だ

1つの宮殿を抜けると、石畳の向こうには次の宮殿が見えてくる。なお、足元はすべて石畳なので、歩きやすい靴で行くことをお勧めする

とにかく故宮は、広くてでかい。この広大な故宮の宮殿の1つ1つに、古い中国の宝物などが展示されている。だから、何時間あっても時間が足りない。実は僕、この日の午後の飛行機に乗る予定があったので、じっくり1つ1つの展示物を見る暇はなかった。そのため、足早に故宮を通り過ぎただけなのだが、それでも入り口の午門から出口の神武門まで1時間以上かかってしまった。ゆっくり見て回るなら、最低2時間、余裕を持って3時間ぐらいは見ておきたい。

延々と続く故宮の宮殿。ちなみに、手前の小屋あたりにスターバックスがあった。故宮でも美味しいコーヒーが飲める時代らしい。今や世界を牛耳るのはスターバックス?

座っている人と壁の高さを比べると、スケールの大きさが少しは伝わるだろうか。故宮は広いので、ぼちぼち休みながらのんびり散策するのがいいだろう

南北900m以上に渡って続く、高さ10mの壁。中国の多くの皇帝は、この故宮から外に出ることがほとんどなかったというから、庶民的な政策なんて、浮かぶはずがない

故宮の裏の正門、神武門の向こうには小高い景山が見える。僕は時間がなくて行けなかったが、ここに登れば故宮が一望できるらしい。ちなみに、この山、人工の山らしい

とにかく故宮はでかいのである。だが、せっかく北京に来たのだから、さらに大きな建造物も見ておかねばなるまい。そう、宇宙からも見える(ホントかウソかは別にして)という世界最大の建造物、万里の長城である。

万里の長城は、中国北部に延々約6,000kmに渡って横たわる壁である。北部からの侵略者を食い止める目的で作られたといわれている万里の長城。その一部は北京近郊を通っているので、北京から、半日もあれば見学に行くことができる。北京市内の旅行会社やホテルのツアーデスクに頼めば、簡単にツアーに参加することができるし、時間がなければタクシーをチャーターしても数千円で行って帰って来られる。

北京から気軽に見に行ける長城の眺望ポイントは「八達嶺(はったつれい)」という所だ。八達嶺は、明代に改修されており、現在では修復作業も進んでいるので、観光しやすい。北京から高速道路を飛ばして1時間ちょっとで、八達嶺のロープウェイ乗り場に到着する。

八達嶺のロープウェイ乗り場から万里の長城へ上がる。ちなみに、ここを僕が訪れたのは12月初旬。気温は0度前後と強烈に寒かった

最初は「え~、ロープウェイ? 」と少々興ざめしたのだが、よくよく考えてみると万里の長城は、山の尾根づたいに建てられた城壁である。つまり、山の頂上にあるので、ちょっとした山登りなのである。ちなみに、ロープウェイを使わず、徒歩でも1時間半ほどで登れるらしい。僕は大人しくロープウェイに乗ることにした。

(上)というわけで、何の苦労もなく、万里の長城の上に到着。下から眺めていても、山上の大きな建造物は迫力があったが、実際に登ってみるとやはりすごい。延々と続く長城に感激(右)万里の長城、実はかなりの急斜面。こんな険しい山の上に、わざわざ石を運んできて長城を作ったのだからすごい

万里の長城は、やはり期待を裏切らない迫力、スケールである。長城の上から遠くを見渡すと、尾根に沿ってどこまでも延々と長城は続いている。6,000km以上もこんな物を作る中国の皇帝って、どれほどの権力を持っていたのだろう。故宮も驚いたが、やはりアジアの大国! スケールの大きさも世界最大級である。

(左)とにかく行ってみて驚いたのが、結構な急斜面だということ。ぶらぶら散策なんて考えていたが、実際にはかなりの運動だ(上)万里の長城は未整備の所も多いが、八達嶺は観光向けに整備されていて歩きやすい。ただ、写真で見える以上に急斜面なので、歩くのは結構つらい

僕は12月にここを訪れたが、山々が緑になる初夏が一番きれいらしい。とはいえ、12月の殺風景な山々も長城の迫力が増すようで悪くなかった

この日の北京の最高気温は5度。湿度は限りなく0%に近い超乾燥地域で、しかも山の上は風が冷たい。体感温度は-10度(僕調べ)。冬の長城には、とにかく暖かい格好で行こう

古くから中国のみならず、東アジアの中心として栄える北京だけに、この街ではアジアの歴史、中国の強大さを肌で感じることができる。さらに、五輪開催を控えて急成長を遂げており、古い物、新しい物が入り交じった今の北京は、是非とも見ておきたい街の1つといえる。次回は、北京五輪のヨット競技が開催される街、青島(チンタオ)を紹介する。