前回伝えましたが、話し手のパッションを伝えることで、プレゼンテーションで人が動くようになります。人は話し手のパッションで心を動かされるからです。
「パッションを伝えるなんて、どうすればいいの?」と思うかもしれませんね。ちょっとしたコツで、あなたのパッションは聴き手に伝わるのです。
まずはあなたの現状把握。下記チェックリストで、あなたの振る舞いをチェックしてみてください。
プレゼンテーション・チェックリスト
□身振り手振りはつけない
□資料はいつも読み上げている
□聴き手と意識して目線を合わせたことがない
□話すときは舞台の横に立っている
□熱心に聞いてくれる人なんていないと思う
□客席全体に目を配ることが大切だ
□プレゼンテーションのための服装を考えたことがない
チェックが4つ以上の方は、パッションが伝わっていないか、または印象を下げている可能性があります。
そこで今回は、すぐにできるパッションが伝わる手振り、目線、さらに印象を上げるファッションのコツについてお伝えします。
手振り
手振りを使うだけで、どんな人でも簡単に堂々として見えて、パッションを伝えられるようになります。
しかしほとんどの人は、プレゼンテーションのとき手振りを使っていません。話すことで精一杯。「内容に合わせて手振りをつけましょう」と言っても、手振りの出来ない方が多いのです。しかし慣れない方でも手振りをつけて話ができるコツがあります。
手を両脇でカチッと固めると、いざ動かそうと思っても動かすタイミングを逸してしまいます。
後ろに手を組む方もいますが、これは手を動かせないどころか、何か大事なことを隠していたり、威張っていたりする印象を与えてしまいます。これはちょっと損ですよね。
基本姿勢は、まず手をパーの形に広げ、ベルトよりも上の位置に手を置き、常に動かせる体勢にしておくことです。この配置を忘れないようにしましょう。
これで自由に手を動かせるようになります。
基本姿勢ができたら、次に話のリズムに合わせて手を動かしてみましょう。使いやすい手振りを3種類ご紹介します。
(1)ろくろまわし:両手をひろげて、ろくろを回すように動かします。
(2)ドリブル:強調したい部分では、利き手をバスケットボールのドリブルをするように上下させます。
(3)グー:力強いメッセージが伝わります。出す位置が高ければ高いほどパッションは強くなります。グーを頭より高い位置に掲げると強烈なイメージになります。ガッツポーズのように両手をあげれば最強です。
手振りをつけると自分が話しやすくなります。カラオケで手をリズムに合わせて動かしたり、身体をゆすったりするとノってきますよね。それと同じです。
最初は手振りをつけるのは恥ずかしいかもしれませんが、手振りをつけることで自分自身が話しやすくなり、聴衆とのコミュニケーションもとれるようになり、話に集中して聞いてもらえるようになります。
さらに手振りをつけることで自然と姿勢も良くなりますし、立ち振る舞いも堂々として見えます。手振り一つで様々な課題が解決しますので、ぜひプレゼンテーションで取り入れてみてください。
アイコンタクト
目は心の窓といわれます。同じ内容でもアイコンタクトをとるだけで、パッションが伝わり、聞き手の満足度は確実に上がります。
しかしこのようにおっしゃる方がとても多いのも現実です。
「お客さんの顔を見たら、頭が真っ白になっちゃいます」
「資料を読むのに手一杯。お客さんの顔を見たことがない」
そこでぜひ憶えていただきたいのが、アイコンタクトを取るコツです。実は意外と簡単です。ぜひ憶えて下さい。
まず話に入ったらターゲットを決めて、その人と目線を合わせることです。10人以上いれば必ず熱心に聴いてくださっている人がいるはず。その人をターゲットに選びましょう。
ターゲットは数分ごとに変えていきますが、あまり短い時間で常に目を動かし続けるのは落ち着きがなく見えてしまうので、避けたほうが良いでしょう。
「目を据えること」を目標にしてください。そしてアイコンタクトをとったら、大勢に話しているという感覚ではなく、その人一人だけに語りかけているつもりで話してください。
こうすることで良いことがあります。一人に話しかけるように話せば、話し手に目力が宿り、演技をしなくても自然に語りかけるような表情になり、説得力が格段にアップします。
聴き手にとっても、目線が合うことにより一対一で話を聞いているように感じられるようになります。
アイコンタクトを取るには、プレゼンテーションの立ち位置も気をつけましょう。よく舞台の端に立つ方がいます。これだと聴衆と目線が合わなくなります。
聴き手から見て、プロジェクターと話し手が同一線上の目線になる位置に立ちましょう。
服装
あなたのパッションを表現するために、プレゼンテーションでの服装はとても大事です。
「どんな服装で出たらいいのでしょうか? 最近、Tシャツやジーンズ姿の人もいるようですが……」
という質問を受けることがよくあります。
確かに、最近カジュアルファッションでプレゼンする方が増えてきました。しかし、プレゼンは公式な場です。どんなファッションでも自由に出て良いわけではありません。ファッションには、お約束があるのです。
ある社長さんは、プレゼンはもちろん、いつでも会社のロゴが入ったコーポレートTシャツを着ています。社員さんも全員Tシャツを着ています。
その社長さんがTシャツを選ぶのは理由があります。「合理的で、分かりやすく、無駄がない」という自身の経営理念を体現しているのです。
それは一般社員さんでも同じです。お客さんの前でプレゼンテーションをするとき、聴き手はあなたを会社の代表として見られています。「あなたはどうしてこんな格好で出ているのですか?」と聞かれたとき、説明できることが必要なのです。
納得できる説明ができれば、繰り返し着ても大丈夫。プレゼンテーションのファッションには、説明責任が伴うのです。私は、これを「ファッションのアカウンタビリティー」と名付けています。
この社長さんは、ファッションのアカウンタビリティーが明確。だからTシャツでOKなのです。ある飲料メーカーの社長さんは、ご自分のパッションを表現するために、いつも商品をイメージした仮装でプレゼンテーションを行っているほどです。
これも、「商品と一心同体」というアカウンタビリティーが明確なのです。
もし説明できる自信がなければ、清潔感のあるスーツ姿でプレゼンテーションするようにしましょう。パンツにシワがよっていたり襟元が汚れていたりなど、清潔感がないと、いくらパッションを持って語っていても印象が下がり聞いてもらえないのです。
その際、会社のコーポレートカラーの入ったネクタイなどの小物を身につければ、あなたの気合いが表現されてさらに好感度も上がるでしょう。
さて、次回はプレゼンテーションの構成についてです。あなたの強みを見極めて、戦わずして勝つための構成を学んでいきます。
執筆者プロフィール : 永井千佳(ながいちか)
広報・IR・リスクの専門メディア月刊「広報会議」では、2014年から経営トップ「プレゼン力診断」を毎号連載中。さらに、NHK総合、週刊誌「AERA」、文化放送、J-WAVE、TOKYO FM、雑誌「プレジデント」、日経産業新聞など、さまざまなメディアでも活動が取り上げられている。主な著書に、『DVD付 リーダーは低い声で話せ』(KADOKAWA 中経出版)がある。