高校生のころ、学校が本当に嫌いだった。なんのために勉強するのかもわからなかったし、先生はくだらない、楽しい友達もいない。授業が終わればさっさと荷物をまとめて学校を引き上げたし、毎朝、家を出て学校に向かっても途中で引き返してそのまま遊びに行ったりして、ほんと学校に居着かなかった。

まーそんなのが10年後、大学受験(インチキ入試だけど)し直したりするんだから、人生わからないものである。高校時代の家庭教師の先生と再会して「今、早稲田いってんだよ」と言ったら泣いて喜んでいたので、当時私を勉強させるのに、どれだけ大変だったかが伺える。悪かったよう。

というわけで高校時代、授業もろくすっぽ受けなかったのだが、国語の論文の授業で、クラスで一番を取ったことがあった。「学校教育は生徒の自立を促すことが一番だ」的な内容だった気がするが、この論文の元ネタは『パズルゲーム☆はいすくーる』なのであった。漫画かよ。

『パズルゲーム☆はいすくーる』は、ひと言で言うと、学校でいろんな事件が起こって、それを解決していくミステリ研の人たちの話である。もーこれが、学校という小さな囲いの中で起こっている事件とは思えないほど、多種多様な問題が持ち上がるのだ。教室荒らしが起きたり、校内でなんとヘロインを作ってみたり、デートクラブができてみたり、プールの大きさまで問題になったりする。こんなにいろんなことが起こったら、学校、楽しいだろうな。毎日通っちゃうよ。

ストーリーはオムニバスになっていて、トラブルを毎回解決していくのだが、少女漫画には珍しく、きちんとしたミステリ仕立て。ミステリと少女漫画の融合がなかなか心地のよい作品である。舞台が学校だけあって、殺人とかヘビーな事件が起きないのもよい。

少女漫画で推理ものというと、篠原千絵くらいじゃないのかな? むかーし『名探偵江戸川乱子』というのがあったけど、真面目なミステリとはちょっと違ったような。篠原千絵の作品は、特定の探偵が出てくるというわけではないので、『パズルゲーム☆はいすくーる』作者の野間美由紀は少女漫画唯一のミステリ作家と言っていいかもしれない。

よく、「男性に読ませたい少女漫画は?」というテーマが話題になるけれども、『パズルゲーム☆はいすくーる』なんか結構、上位に入るのかもしれないな。絵が大丈夫かは少々心配だけど、メリハリのある小作品ミステリは、非常に読みやすい。目標・攻略・達成の少年漫画の構造そのものだしね、ミステリって。

で、作中、主人公・香月と大地は幼なじみで恋人同士。美女(みめい)は下級生の卓馬と付き合い始める。このカップル2組が、ミステリ研のメンバーである。香月と大地は、人気がなければすぐイチャイチャし出すし、推理をするのも布団の中でだ。なんつーか、人はエロの最中に頭が冴えるとかなんでしょうか。若かったころはこういうシーンを「なんていやらしいんだ!」と思ったものだが。今の少女漫画の描写に比べたら鼻毛みたいなもんだよな。

エンジョイ学校ライフ、というのは結構憧れだ。学校が楽しくて楽しくて、家に帰るのがイヤ、という生徒はどれくらいいるんだろう。仲良しの友達がいっぱいいて、彼氏ができそうになったりできたりして、憧れの先生がいて、高圧的な生徒会に立ち向かったりして。最近の少女漫画では、主人公が友達作りに悩む話がえらいこと多いので、エンジョイ学校ライフの率が低くなっているのではないかと思う。

学園ものだっつうのに授業のシーンがほぼないというこの作品、学校ライフはやっぱり放課後が命だってことなのね。
<つづく>