毎年12月から翌年3月の年度末にかけては、クレジットカードの入会キャンペーンが活発に行なわれる時期。そのため広告も頻繁に見かけるだろうが、宣伝文句を鵜呑みにしていると「話が違う」と後悔する可能性がある。今回はクレジットカードの広告で、注意して読み解く必要がある言葉について解説したい。

  • 広告の宣伝文句に釣られないために

年会費無料

まずは年会費について。単純に「年会費無料」や「年会費永年無料」であれば問題ないが、「初年度無料」や「年1回利用で次年度無料」と言った表記がされているもののなかには、2年目以降や年1回も利用しなかった場合に年会費がいくらになるのか、わかりやすい場所に記載されていないこともある。釣られてすぐに申し込まず、しっかりと確認しよう。

「年間◯万円利用すれば次年度無料」という条件の場合は、それが自分の場合に実現可能な金額なのか、事前にシミュレーションしてから申し込むべき。なかには計算対象が特定の店での利用額に限られている場合もあるので、勘違いしないように気をつけよう。また、「年間」は必ずしも1月1日から12月31日とは限らない。カード会社またはカードごとに締め日は異なり、4月から新年度が始まる場合もあれば、カード発行日から数える場合もある。初年度が1カ月で終わってしまうなんてことがないように、適切なタイミングで申し込もう。

「WEB明細利用で年会費無料」というカードも少なくないが、なかには「年間◯回以上のWEB明細発行」と条件が記載されているものもある。1カ月に一度も利用がないとWEB明細は発行されないので、もしカードを使わなくなっても年会費無料だからと放置していたら痛い目を見ることになる。そうしたカードは月に1回は使うことを心がけよう。

ポイント最大◯倍

最も騙されやすいのが「ポイント最大◯倍」という表記。そのなかでも「最大20倍」「最大30倍」といったものは、たいていはポイントモールを経由してネットショッピングをした場合に得られる倍率で、なおかつその倍率を得られるケースはごく限られたショップ(たいていはウイルスソフトの購入)を利用した場合のみ。大半のショップは2〜3倍で、個人的には規制が必要と思っているくらい悪質な宣伝と考えている。

企業と提携したカードで多いのは、特定の提携先で利用した場合、または特定の商品を購入した場合のみ、突出した倍率で利用できるパターン。なかには倍率アップに「年間◯万円以上利用」と条件が設定されている場合もある。また、提携先によっては、無料のポイントカードでも同じ特典を受けられることがある。誰でも受けられる特典のために不要なカードを作ってしまわないように、その特典がクレジットカード会員だけのものなのか、事前に比較するクセを身につけておきたい。

紛らわしいのは「ポイント2倍」という表記。単純にカード利用に対するポイントが2倍になるなら何も問題はないのだが、たとえばポイントカードを提示して現金で払えば200円につき1ポイント、ポイント機能付きクレジットカードで払えば200円につき2ポイントという場合はややこしくなる。これは現金払いに対してポイントが2倍になっただけで、クレジットカード利用に対するポイントが2倍になったわけではない。

ポイントカードを提示して、100円につき1ポイントが貯まるクレジットカードで支払えば、(ポイントの種類が別になる可能性はあるが)200円につき3ポイントが貯まるので、むしろ別のカードを使ったほうがトクすることになる。これはショップ利用に対するポイントとカード利用に対するポイントが同種の場合に起こりがちな罠で、何に対してポイントが2倍になるのか、その仕組みを理解しておく必要がある。

このほかにも「ETCカード利用はポイント2倍」だがETCカードの発行手数料や年会費が取られる、「携帯電話料金の支払いでポイント2倍」だが格安SIMは対象外、「海外利用はポイント2倍」だが事務処理手数料(為替手数料)が割高といったケースも少なくない。それ以前に、もともとの還元率が低いという場合もある。還元率0.5%のカードがポイント2倍になったところで、還元率1%になるだけ。どこで使っても1%以上の還元率を得られるカードは山ほどあるので、ポイント率よりも還元率で判断するようにしよう。

ポイントを◯◯に交換できる

よく見かけるのがポイントをANAやJALの「マイルに交換できる」カードだが、絶対にチェックしなければならないのは交換レートと最低交換単位。条件を確認すると交換レートが著しく悪かったり、最低交換単位に達するまでに数十万円使わなければならなかったりするカードも珍しくない。「ANAカード」や「JALカード」ではなく、そのカードを作る理由が本当にあるのか、他の使い道ではなくマイルに交換する必要性があるのか、実際の利用シーンを想定して考えよう。

「現金に交換できる」や「キャッシュバックできる」ことをウリにしているカードも注意が必要だ。他の使い道に比べて交換レートが悪かったり、交換手数料が必要になったりするケースが多く、振込に対応する銀行が限られている場合もある。ポイントの利用は、どの交換先が最良のレートになるのかを調べ、交換後に利用機会があるのかを判断してからカードを申し込もう。

逆にポイントの貯まりやすさばかりを宣伝して、使い道については書いていないカードも注意。ポイントの使い道が限られている可能性がある。利用機会が少ないものにしか使えないのであれば、ポイントの有効期限もチェックしよう。なかには年度が変わると全ポイントが失効してしまい、最低交換単位に達しないポイントは使い切れないカードもある。ポイント交換を忘れがちな人は、特に気をつけておきたい。

以上のようにカードの広告には、落とし穴がたくさん含まれている。慣れている人なら、すぐに見分けられるが、ありふれたサービスが特別であるかのように宣伝されていることも少なくないので、面倒でも他のクレジットカードや無料のポイントカードと比較したほうがいい。こうした広告を出しているカードが、すべて悪いというわけではないが、宣伝されているサービスが、そのカードだけの特典なのかを見極めることが大切だ。

なお、最近の入会キャンペーンは利用条件が設定されているものが多く、「最大◯円相当のポイント」や「最大◯円分キャッシュバック」といった文言は、あくまですべての条件を満たした場合のみもらえる特典となる。その条件をどこまでクリアできるのか、事前に目標を定めてから申し込みのステップに進もう。

※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。

■ 筆者プロフィール: タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月8日発売の『最強クレジットカードガイド2017 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川SSCムック)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。