東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「レスリング」にフォーカスする。

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レスリングの魅力は、何の道具も持たず、衣服をつかむこともせず、体同士がぶつかりあい、技を掛け合うシンプルな競技であること。その中でパワーとスピード、テクニックが激突する。2人の選手が互いに技を使って相手を組み伏せ、両肩をマットに押しつけようと競い合う。

古代オリンピックでも行われていて、人類最古の格闘技といわれている。近代オリンピックでは第1回アテネ1896大会から行われ、第2回パリ1900大会を除き継続して実施されている。腰から下を攻撃と防御に使うことが禁止されているグレコローマンスタイルと、全身を攻撃と防御に使えるフリースタイルがある。

長い間男子のみの競技だったが、アテネ2004大会から女子も加わった(フリースタイルのみ)。体重による階級別で試合が行われるため、体格の差に関係なく活躍できる。リオデジャネイロ2016大会では男子グレコローマン、男子フリースタイル、女子フリースタイルとも6階級(6種目)で行われた。

試合は敗者復活戦のあるトーナメント方式で行われる。決勝に進んだ選手と直接対戦して負けた選手は敗者復活戦に出場できる。

ダイナミックな技が見られるグレコローマン、スピード感あふれる技が魅力のフリースタイル

試合は直径9メートルの円形マットの上で行われる。現在のルールは、3分間×2ピリオドで、間に30秒のインターバルがある。相手を組み伏せて両肩を同時に1秒間マットの上につけると勝ちとなり、試合は終了する。これをフォールという。フォールできない場合は、相手を不利な状況に追い込むことによって獲得できるポイントによって決まる。

グレコローマンは8点差、フリースタイルは10点差がついた場合もその場で終了となる(テクニカル・フォール)。相手が警告を3つ受けた場合もその時点で勝ちとなる。警告は消極的な姿勢や反則に対して与えられる。

ポイントは技に応じて1点、2点、4点、5点がある。例えば相手の足が場外に出たら1点、寝技の状態で相手の背後に回り込んで、頭部、両手両足のうち3つをマットにつけると2点、腹這いの相手に後ろから組みついて90度以上回転させると2点、立った状態からの投げ技は4点、寝技の状態からの投げ技は5点などがある。

グレコローマンは、立ち技(スタンド)からスタートする。ここでいかに攻撃スタイルを行う事が重要で、相手選手が消極的と判定されたときは1点が与えられ、グランドからの攻撃権が与えられる。

グレコローマンスタイルは、上半身で組み合って投げ技などダイナミックな技が多く見られ、本来の格闘技らしい迫力が魅力。フリースタイルはタックルで相手のバランスを崩すことが基本で、スピード感あふれる技の攻防が見どころだ。

負けている試合の残りあと数秒というところで、相手の一瞬の隙をついてタックルに持ち込み鮮やかなフォール勝ちを決めたり、投げ技でテクニカル・フォール勝ちになったりすると、観客から歓声と拍手が沸き起こる。

イラスト:けん

出典:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会