総合レンタル業のパイオニアとして、長年にわたり経済社会に貢献している西尾レントオール。単にモノを"貸す"だけではなく、独創的な開発力と現場対応力を活かして社会課題の解決を目指しています。

代表取締役社長の西尾公志氏に、西尾レントオールの"いま"と"未来"をお聞きします。

総合レンタル業のパイオニアとして、時代のニーズに応え続ける

大阪府大阪市に本社を構える西尾レントオール。その歴史は、1959年に設立された宝電機から始まります。

創業当時は大手メーカーの協力会社として電気器具部品の加工・販売を行っていましたが、1965年から道路機械のレンタル事業をスタート。本格的にレンタルビジネスへと舵を切りました。

当時は、高速道路や新幹線の建設、1970年の日本万国博覧会など、大型工事が相次ぐ高度経済成長期。建機が慢性的に不足しており、同社のレンタル事業は時代のニーズと見事にマッチしたのです。全国へと営業所を拡張しながら、飛躍的な発展を遂げました。

1978年には、社是「わが社は総合レンタル業のパイオニアとして経済社会に貢献する」を制定。取り扱い商品・事業領域をさらに拡大していきました。

現在では、現場の生産性向上に役立つ無人化施工通信システムをはじめ、油圧ショベルやブルドーザ、ダンプカー、クレーン、フォークリフト、発電機、照明機器、警報・検知器、測量・測定・通信機器など、さまざまなレンタル商品を提供しています。

M&Aによるグループ総合力の拡充や海外事業の拡大

西尾公志氏が西尾レントオールに入社したのは、1987年の1月でした。「当時は会社もまだまだ小さく、売上高は約100億円でした」と振り返る西尾氏。取締役・経営計画室長、東京支店長、常務取締役を経て1994年に2代目代表取締役社長に就任しました。

西尾氏はM&Aによるグループ総合力の拡充や海外事業の拡大なども積極的に推進し、会社を力強く牽引。着実に業績を伸ばし、現在では西尾レントオールを含むニシオホールディングスとして売上高は約2,000億円に達しています。

「レンタル関連事業のうち、約90%が建設系、約10%がイベント関連となっています。レンタルビジネスの市場規模は約1兆3,000億円と大きく、シェアリングエコノミーも拡大 しており、当社はさらに成長できると確信しています」と、西尾氏は同社の現状と今後の展望を熱く語ります。

「貸す」を超越したレンタル商品の改造・開発で、顧客の課題を解決

西尾レントオールが半世紀以上にわたって、業界をリードし続けている背景には、モノを単に“貸す”だけにとどまらない独自の強みがあります。

それは、顧客の現場に深く入り込み、真のニーズを把握して、最適なソリューションを提供する「課題解決力」と「現場対応力」です。この強みについて、西尾氏は次のように説明します。

「私たちは幅広いレンタル商品の中から、お客様のニーズに合わせて最適な組み合わせをご提案しています。さらに、単にモノを"貸す"だけではなく、"現場で本当に使える状態にする"ところまで担っています。だからこそ、各現場の状況に合わせてさまざまな調整を行い、時には改造することもあります。そのきめ細かな対応力こそが、他社にはない西尾レントオールの強みです」

ただ商品を貸すだけの企業とは一線を画し、顧客のニーズや現場の状況に合わせて、レンタル商品を改造する西尾レントオール。この高い技術力は、自社開発にも及んでいます。 「当社には、さまざまな技術開発を経験してきた人材が集まっています。最近では、AIを活用した警告システムなどをゼロから開発していましたね」と西尾氏は微笑みながら、同社のイノベーション力を強調します。

災害現場でも活躍する、業界トップクラスのICT施工

西尾レントオールでは、通信機器を専門に取り扱う部署を設置して技術開発も進めており、ICT施工に関するノウハウは業界トップクラスを誇ります。

建設現場でもICT化やDXが求められている現代において、これは大きなストロングポイントになっています。

災害現場で活躍する「無人化施工」も、同社がパイオニアです。発端は1991年の雲仙・普賢岳噴火だったと、西尾氏は回想します。

「雲仙・普賢岳では、機械に通信機能を付け、中継車を使って何キロメートルも離れた場所から機械を操作して土砂を除去しました。その後も、技術開発を継続し、通信映像システムや重機の遠隔操作技術などで常に業界をリードしています」

その高い技術力と対応力によって、2011年の東日本大震災の際も、がれき処理をはじめとした復旧・復興工事に大きく貢献しました。現在では、全国で50を超える自治体や企業と災害協定を締結しています。

さらに、2020年には「うめきた外庭SQUARE」で、BCP(事業継続計画)対策とにぎわいの創出を両立させる「MIDORIオフィス」を実施。これは「災害時に屋外で通常業務を行えるか」を確かめる実証実験で、実際に西尾レントオールの本社機能を、屋外に一時移転しました。

「通常業務を行うために大切なのは、インターネットの通信速度や情報のセキュリティーです。私たちは建設現場で鍛えた技術を使って通信環境を整備し、大きな成果をあげることができました」

レンタル事業で培った技術と豊富な商品力、そして経験に裏打ちされた現場対応力を活かしながら、さまざまな社会問題や各産業が抱える課題を解決していく。それこそが、西尾レントオールが目指す未来です。

2025年の万博パビリオンでも採用! 持続可能な社会に貢献する「木造モジュール」

西尾レントオールは、2025年日本国際博覧会(通称:大阪・関西万博)のイタリア館・インドネシア館・フィリピン館の建設に参加しました。各パビリオンでは、同社の「木造モジュール」が採用されています。

木造モジュールは、木材を金物・ワイヤーを使い、屋根などのトラス構造の構造物をつくる「ATAハイブリッド構法」という技術で構成されています。

一般流通材で40mの大スパンの無柱空間を叶えられ、デザイン性と強度、そして環境負荷低減をすべて満たせるのが特長です。今後「移転・転用」ができる可能性があります。その意味で持続可能な社会の実現に貢献できる、未来志向の木造建築です。

長崎県・五島列島の風力発電所の宿舎や事務所への採用をはじめ、店舗や体育館、事務所、倉庫、工場など、その用途は多岐にわたります。

「人口が減少していく今後の日本社会において、場所や用途を変えて何度も使用できる建物は、さまざまな社会問題を解決する切り札になるはずです。木造モジュールで、『中規模から大規模な仮設建造物は鉄骨で行う』という固定概念を覆し、より良い日本の未来を切り拓いていきたいです」と、西尾氏は力強く決意を述べます。

経営感覚と責任感を養うプロフィット制

西尾レントオールでは、「プロフィット制」という部門ごとの独立採算制を採用しています。1970年代にスタートした当制度は、同社の発展の原動力になってきました。西尾氏はプロフィット制の魅力を、次のように力説します。

「小さなユニット単位で利益を管理し、利益の管理や分配まで任せることで、社員一人ひとりが経営感覚と責任感を持てるようになります。また、自分たちが本当に"やりたいこと"に挑戦できるため、革新的なチャレンジが生まれます。これが結果的に、会社の成長へとつながっていくと考えています」

また、本社を東京に移さず、大阪に構え続けることにも強いこだわりがあると話す西尾氏。人材育成の面で極めて重要だと語ります。

「あるゼネコンさんの話では、例えば東京の建設現場では、大規模な再開発のような1,000億円規模の仕事がたくさんありますが、そこで働く人々は自分が担当する部分しか見えないことが多い。一方、大阪で50億~100億円規模の仕事に携わることで、プロジェクト全体を把握できる人材が育つそうです。私たちも『全体を把握できる人材』を育成していきたいのです」

このように独自の経営哲学を持つ西尾氏は、未来を担う若い世代へ、次のようなメッセージを贈ります。

「みんなと同じを目指すのではなく、自分自身で考え、『こうなったらいいな』を実現できる社会人になってほしいと思います。そのためには、積極的に挑戦し、全体をとらえる力を身に付けてください。そうすれば、仕事が本当に面白くなりますし、人間としての成長にもつながっていくはずです!」

執筆:山中 悠禅
撮影:祐實 知明
編集:アワード、マイナビ学生の窓口編集部