「ネット生保」と大手生命保険会社の保険料はどう違う?
年々売り上げを伸ばしている「ネット生保」。第一回では、その成り立ちと、特徴をご紹介しました。今回は「ネット生保」の最大の魅力ともいえる<安い保険料>の秘密をひも解いていきましょう。
「ネット生保」の保険料は安い、というイメージを持っている人は多いと思いますが、実際のところ、その保険料は、大手生命保険会社と比較してどのくらい安いのでしょうか。30歳の男性が、3,000万円の保険金額を10年間確保するために必要な保険料を、「ネット生保」と大手保険会社とで比較してみましょう。
■定期保険の月払保険料例
(30歳男性、保険期間10年、保険金額3,000万円の場合)
・ネクスティア生命「カチッと定期」 3,450円 / 月
・ライフネット生命「かぞくへの保険」 3,484円 / 月
・大手生命保険会社A 7,200円 / 月
・大手生命保険会社B 7,240円 / 月
※ネクスティア生命およびライフネット生命は無配当
※大手2社は5年ごと利差配当付定期保険
このように同じ保険金額の定期保険であるにも関わらず、「ネット生保」と大手生命保険会社では、保険料に何と約2倍以上の差があることがわかります。
たとえば上記の保険料を10年間支払った場合の支払総額で比較してみると、ネクスティア生命では41万4,000円で済むのに対し、大手生保会社Bでは86万8,800円。差額は何と45万4,800円にもなります。
この差は、保険金額が大きくなればなるほど、また保障期間が長くなるほど、大きくなっていくことに。長引く不況で家計が厳しい中、この違いは軽視できませんね。
それにしても、この大きな差はどこから生じるのでしょうか?
この謎を解くためには、まず保険料の仕組みを理解する必要があります。
実は一般的に言われる保険料は、「純保険料」と「付加保険料」の2つで成り立っているのをご存知でしょうか?
「純保険料」は将来の死亡保険金などの支払いに備えて積み立てられるお金。また「付加保険料」は、保険会社の運営費にあたる部分です。
保険会社は保険商品を販売するために、店舗維持費や人件費、広告宣伝費など、の費用を必要としますが、この費用は「付加保険料」から捻出されています。
このため、たくさんの店舗や従業員を抱える大手生命保険会社の場合、どうしても「付加保険料」が高くなってしまうことに。結果、「付加保険料」が保険料全体の50%~60%を占めている場合もあるのが現状です。
これに対し、店舗を持たずインターネットのみで保険を販売する「ネット生保」では、人件費や店舗維持費などのコストがあまりかからないため、この「付加保険料」を安くすることができます。このため保障額が同じ保険でも、契約者が支払う保険料に大きな差が生じてくることになるのです。
「ネット生保」は大丈夫? 生命保険会社の信用度ってどうやったらわかるの?
このように、安さで人気の「ネット生保」ですが、その安さゆえに、安かろう悪かろうではないかと懸念する人も少なくないのではないでしょうか?
しかし、このようなシンプルな定期保険の場合、「ネット生保」でも「大手生命保険会社」でも保障内容に大きな差はありません。
また、会社としての信頼度が心配、という声もたまに聞かれますが、ここでチェックしておきたいのが、各保険会社のソルベンシー・マージン比率です。
ソルベンシー・マージン比率とは保険会社の保険金の支払い余力を示す数字のことで、保険会社の大小に関わらず、その健全性を計るのに役立ちます。
ソルベンシー・マージン比率が200%を下回ると、金融庁から早期是正措置が取られることになっていますが、2010年3月末時点で、ネクスティア生命・ライフネット生命のソルベンシー・マージン比率はいずれも1000%以上。今のところは全く問題のない水準です。
また、万一生命保険会社が破たんした場合でも、契約者を保護するために、「生命保険契約者保護機構」(以下「保護機構」)という法人が設立されています。この「保護機構」には国内で事業を行うすべての生命保険会社が加入を義務付けられており、もちろん「ネット生保」もこの「保護機構」に加入しています。
では、生命保険会社が破たんした場合、契約中の保険はどうなるのでしょうか?
もしも契約が解約されてしまうようなことになると、年齢や病歴により新たな保険契約を結ぶことが難しいケースも少なくありません。
このため、救済保険会社が決まった場合には、その会社で契約が継続されることに。また救済会社が決まらなかった場合でも、保護機構が設立する継承保険会社に継承されるか、保護機構自らが引き受ける形で、契約は継続されることになります。
しかし、この場合補償されるのは、破たん時点の生命保険会社の責任準備金(生命保険会社が保険金の支払いのために積立ている準備金)等の90%までと定められています。また予定利率の変更などもあり得るため、結果的に受け取れる保険金額が減額されることがある点には注意が必要です。
このように、生命保険会社に万一のことがあった場合には、セーフティネットが用意されており、万一のときにも契約した保険が無駄になってしまうことはありませんが、保険会社を選ぶ際には、格付けやソルベンシー・マージン比率などで、会社の信用度はしっかりチェックしておきましょう。