バイクの本格シーズンのがやってきた! 連休などを利用してツーリングを考えている人も多いと思う。ツーリングの日程が多ければ多いほど持っていくべき荷物は増えるもの。しかし、搭載できる荷物の量は限られている。さらにバイクはクルマと違ってむき出しで走っているので、荷物も雨や高速走行などの厳しい状態にさらされてしまう。積載について頭を悩ませる人は多いのではないか? 今回はバイク積載について考えてみたい。

ツーリングバッグの種類

バイク用品店へいくと、様々なタイプのツーリングバッグが売られている。バイク本体に取り付けるシートバック、サイドバック、タンクバック、ハードケース。それとライダーが身につけるバックパック、ウエストバック、メッセンジャーバッグと、豊富な種類が用意されている。また自分の乗っているバイクのタイプによっては、装着が限られてくるものもある。しかも容量や素材、機能性などを含めると星の数ほどあるのだ。

ツーリングバックは、ツーリングのために工夫して作られているため、使い勝手は通常のバッグと比べると驚くほど便利なもの。積載するバイクや荷物の量を考えて、自分に合ったタイプのバッグを選ぶことはとても楽しい。はじめにツーリングバッグの種類とメリット&デメリットについて考えてみよう。

地図の収納に便利なタンクバック

タンクにマグネットや吸盤で取り付けるタンクバッグ。重心が中央に近いのでライディングへの影響が少ないというメリットがあるが、前傾姿勢になるスポーツバイクでは邪魔になる可能性もある。大きな特長は、たいていのモデルが地図の収納スペースがあるということ。またタンクの上に設置するので出し入れも容易。お金やカッパを入れておけば、高速道路の料金所や雨が降ったときでも素早く対応できる。タンクバッグは脱着が容易にできるので、貴重品の持ち運びも便利だ。また、タンクバックの類似アイテムでハンドルに固定するハンドルポーチもある。

タンクバッグの脱着はベルトやワンタッチクリップを使うものと、磁力でバッグをタンクに貼りつけるグネットタイプに大別される。マグネットタイプのほうが脱着は簡単だが、タンクに傷が付いてしまうことがあるので注意が必要だ。私も以前、知らないうちにマグネットに砂鉄が付いてしまい、タンクが傷だらけになったことがある。また、最近増えてきた樹脂カバーのガソリンタンクでは使えないし、便利だけども制限が多いのがマグネットタイプなのだ。

ゴールドウィン GSN 17705。専用ベルトと吸盤で固定するタンクバッグ。磁石の付かない樹脂タンクにも装着可能。A4判マップ対応。容量:約13~16リットル、付属品:セッティングベルト、レインカバー

ラフアンドロード RR-9203。上部マップケースとサイドタンクバッグを併せ持つタイプ。磁石の付かない樹脂タンクにも装着可能。B5判マップ対応。容量容量:約7リットル(上部3リットル、サイド2リットル×2)、付属品:セッティングベルト、レインカバー

ラフアンドロード RR-6055。ハンドルに固定する小型ポーチ。付属品のウエストベルトを使用するとウエストポーチにもなる。容量:約3リットル。写真はオプションの防水マッブケースを装着した状態。

長期ツーリングでも心強い大容量シートバック

バイクに荷物を積載する場所でもっとも安定した場所はリヤシート上だ。パッセンジャーが乗る位置なら、積載する荷物が多少重くても安心。シートバッグはタンクバッグやサイドバッグに比べて圧倒的に容量が大きく、設置したときの安定感もいい。シートに固定するのでタンデムはできなくなるが、荷物が増えるキャンプツーリングや長期ツーリングに、余裕を持って荷物をパッキングできることは心強い。ただし、荷物が多く重くなると荷重バランスがリヤ寄りになるため、コーナーリングなどに影響が出やすい。

ゴールドウィン GSN 7501。キャンプツーリング用に開発された大容量シートバック。容量可変ファスナーを備え、容量サイズの変化可能。左右の開口部を備え、サイドからの出し入れも可能。容量:約43~75リットル、付属品:セッティングベルト、レインカバー

GSN 7501をセットした状態。バッグ前面側にキャンプマットホルダーを装備。アジャスターでしっかりと固定できる

ラフアンドロード RA-1017。クラシックデザインのシートバッグ。奥行き24cmと短く設定してあるので、キャリア装着者であればタンデム走行も可能。容量:約12~15リットル。付属品:セッティングベルト、レインカバー

スポーツバイクに心強いテールバッグ

リヤシートが小さい小さいスポーツバイクに便利なのがテールバッグだ。リヤシートに装着する、タンデム走行も可能なタイプも用意されている。簡単に取り付ける工夫がされており、シートバッグに比べ容易に装着できる。比較的容量が小さいので、日帰りから1泊程度のツーリングに適している。

ラフアンドロード RR-9001。容量可変ファスナーを備え、容量サイズの変化可能。メイン気室にはロックホールを装備。南京錠の取付が可能になる。容量:約12~17リットル。付属品:セッティングベルト、レインカバー

ゴールドウィン GSN 7600(上部)/GSN 7503(サイド)。バッグ本体を90度引き起こしてタンデムが可能になるテールバッグ(GSN 7600)と、パッセンジャーを考慮したサイドバッグ(GSN 7503)。容量:GSN 7600が約14~19リットル/GSN 7503が約10~15リットル×2、付属品:ともに装着ベルト、セッティングベルト、レインカバー

GSN 7600のタンデム走行時。クッション入りのシートや固定ストッパーベルトなど、タンデムライダーの快適性・安全性も追求されている

バイク降車後に便利なバックパック

両手の使えるバックパックは、通常の旅行などでもたいへん便利。バイクに積載する時間と手間が省けるので、気軽に荷物を持ち運べるというメリットがある。またいつも持ち運ぶのが基本なので、盗難の心配もない。ただライダーが荷物を背負っているので、ライディングにも影響があり、バイクに搭載するより疲労の進行が早まるというデメリットがある。パッキングでは、軽い物を下に重い物を上に配置すると、重心がまっすぐ腰にかかるようになり、負担が減少する。バイク用にタンデム対応グリップを備える物もある。

ラフアンドロード RR-9002。シートバッグとデイバッグに使える2WAYタイプ。防水仕様で、天候を気にすることなく使用できる。容量:約15~17リットル、付属品:セッティングベルト、マッドカバー

RR-9002のデイバッグ仕様時。収納式ショルダーハーネスを備え、積載時にタイヤなど巻き込みを防止する

ラフアンドロード RR-6051。脱着式のタンデムグリップを装備。シートの積載時に便利な4ヶ所のループを備える。積載時の巻き込みやバタ付きを抑えるマジックテープも装備。余ったベルトを巻き取って固定できる。容量:約25リットル+フルフェイスヘルメットを収納できる15リットルのメットインスペースも備える

雨の日に便利な防水タンク

ツーリングの準備を万端にしても、天気だけはどうしようもならない。多くのツーリングバッグには専用のレインカバーが付属されているが、暴風雨のような悪天候では隙間から浸水してしまうことだってある。防水タンクは、簡単にいえば非常に丈夫で大きな袋。バッグそのものが防水機能を持っているのでまず中身が濡れることはない。夕立のような急な豪雨でも、カッパを着るだけで対処できる。防水タンクは防水と丈夫さを優先するので、通常のツーリングバッグのような細かな工夫はあまりされていない。しかしこのざっくりした使用感にはファンも多く、結局これがいちばん便利という声も少なくない。サイズは大小様々なタイプが登場している。

ゴールドウィン GSN 7511。素材は軽量で高強度なTPU防水加工420Dリップストップナイロン。バッグの上下にあるDカンに付属のフックを掛け、セッティングコードで固定する。容量:約50リットル、付属品:ショルダーベルト、セッティングコード、セッティングフック、セッティングループ

GSN 7511の開口部の閉め方。端部をあわせ、3回折りたたみ、両脇のバックルを締める

ラフアンドロード RR-6005。AQUADRYチューブはコンパクトに収納出来るよう設計されている。完全防水。日常から使えるコンパクトなサイズから大容量まで種類が豊富に用意されている。写真のものは容量35リットル。ネットは別売り

タンデムツーリングに便利なサイドバッグ

サイドバッグを固定する位置は、ウインカー、マフラー、チェーン、タイヤなど取り付けに干渉するパーツが密集している。ちょっとつけにくいという難点もあるが、シートバッグのようにシートの面積を取らないので、タンデムツーリング向き。

ラフアンドロード RA-1014。クラシックデザインのセパレート式サドルバッグ。セパーレート式の装着パーツを採用することで、シートへ挟み込みの干渉を軽減。容量:約30(15×2)リットル

ラフアンドロード RR-9203。パッセンジャーのポジションと荷物を考えたタンデム対応サイドバッグ。量可変ファスナーを備え、容量サイズの変化可能。容量容量:約26~38リットル(ポケット込み)、付属品:セッティングベルト、レインカバー

RR-9203のタンデム使用時。購入時には、自分のバイクのマフラーに当らないかなどを確認しよう

セキュリティ性の高いハードケース

プラスチックなどでできたハードケースは、ある意味で究極のバッグ。クルマのトランクのように鍵も掛けられるので、セキュリティ面でも安心だ。もちろん防水性も高い。専用か汎用のマウントを車体に取り付けて固定する。リアキャリアの上に設置するトップケースはシート面積を取らないのでタンデム走行も可能。高価だが、ツーリングには心強いアイテムだ。車両後端の比較的高い位置に取り付けるため、荷物が重くなり過ぎないよう注意したい。

デイトナ GIVI V46。樹脂製トップケース。プッシュボタンにより取り付け取り外しが可能で、携帯性に優れる。容量:46リットル、本体重量4kg

GIVI V46の使用例。フルフェイスヘルメット2個を収納できる大容量の収納スペース

デイトナ GIVI E41。ツーリングの使い勝手を考慮したサイドハードケース。装着したままでフタを開閉できるシステムを採用。容量:41リットル、本体重量4kg

憧れの自作プラスチックケース

これは自作のケースの話。ホームセンターで売られているプラスチックケースをバイクに取り付けているライダーをときどき見かけるが、私はとてもカッコイイと思う。私の勝手なイメージだが、ちょっとぞんざいな感じがワイルドで、旅人ぽくって憧れてしまうのだ。鍵付きのケースを使えば鍵付きになるし、容量もまったく問題なし。自信のある人は道交法、重量バランス、強度などを検討してチャレンジしてみるのもいいだろう。

積載時の重心を考えよう

お次は荷物を積載するパッキングについて。パッキングの基本は"重心"だ。重心を考えて積載するだけで、必然的に荷物は整って配置されてくる。まず、持っていく荷物を選んだら、バックの中にどのように詰めていくかを考えよう。何も考えず手当たり次第詰め込んでしまうと、荷物を出すとき苦労することもある。また重い物を片一方に寄せると走行に支障をきたすことだってある。パッキングの上手い下手で、ツーリングの快適性が決まってくるのだ。

バックの中身を詰めていくとき、左右のバランスを考えて重たい物がバイクの中心に来るように配置したい。また、よく取り出す物と取り出さない物を分けて、よく使う物は取り出しやすいようにバックの上部に入れておく必要がある。サイドポケットがあれば有効に活用しよう。とくに雨具はすぐに取り出せる場所に配置したい。また荷物と荷物の隙間はなるべく作らず、キッチリ詰め込んだほうが安定する。

パッキングが終わったら、いよいよバイクへ積載しよう。初めて大きな荷物を積載する場合は意外に手間取ることがある。また、いつもと違う重心で走ることになるので、慣れるために前日に荷物を積んで近所を実際に走ってみると安心だ。

積載は、重心をそろえてゴムコードやゴムネットでがっちりと固定すること。ゴムコードは2本用意して、X字に交差させると左右のバランスが取りやすい。形状にもよるが、バッグは前後方向よりも横方向に置いたほうがずれにくい。固定する器具が付いているツーリングバックも、バックルなどを弛みがないように、しっかりと締め付けておこう。

荷物が積載できたら発進する前に必ずチェックするクセをつけよう。走行中、積載が崩れると大変危険で、事故の原因にもなる。チェック方法は(1)後ろから見て左右のバランスが取れているか? (2)荷物を押してみて、車体が一緒に動くか? もし荷物の位置がずれていたり、ぐらつきがあったら面倒くさがらずに最初から積載し直そう。

手当たり次第詰め込むのではなく重心を考えてパッキングしていこう

雨具はすぐに取り出せる場所に配置するのがセオリー

ゴムコードはX字に交差させて固定する。2本以上かけるとより安心

ゴムネットはまとめて荷物を固定できるのが便利。ただ、ネットの中で荷物が動いてしまうような場合はゴムコードと併用する

バタつきを抑えるため、ベルト類は弛みがないようしっかり締めておこう

積載後は、チェックする癖をつけよう。写真の状態はベルトが垂れ下がっていて巻き込む可能性があるので危険。余ったベルトは短くまとめたい

さぁ! ツーリングへ出かけよう

キャンプなど荷物が多くなるツーリングでは、搭載した荷物が高く積み上がってシートの面積も狭くなる。するといつもの乗り方ではうまく跨いで乗れないこともある。荷物が搭載できても、自分が乗れなくては意味がない(笑)。私がよくやるのは、サイドスタンドをかけたほうのステップを踏み台にして乗る方法だ。この場合、ハンドルを左側に切って、前ブレーキを握って(もしくはギアをローに入れて)またがるようにする。ハンドルが右に切れていたり、乗った拍子に車体がぐらついたりすると、立ちゴケの原因になる。また、縁石を踏み台として利用して乗り込めば、簡単にバイクを跨ぐことができる。ただしカッコつけて勢いよく乗ると反対側に倒れることもあるので注意しよう。

積載すると車両重量がその分重くなるため、ハンドリングやブレーキの効き具合などが変化する。また普段の走行ポジションや車幅も変化していることも多いので、そのことを常に意識して運転しよう。積載上手はツーリング上手だっといってもいい。積載を極めて、快適なツーリングを楽しんでほしい。

レポート:加藤真貴子(WINDY Co.)