連載コラム『公認会計士直伝! お金に振り回されない生き方』では、公認会計士の平林亮子氏が、公認会計士としての仕事をする中で分かってきた"お金との上手な付き合い方"について、マイナビニュースの読者の方々に"伝授"します。


応援したい企業の株を買って、株主総会で経営陣の話を聞くのも醍醐味

12月に決算を終えた上場企業から、定時株主総会の招集通知が送られてきました。

前回触れたとおり、これは株主としての大きな権利の一つですから出席してこようと思います。

この企業の株主総会は初めてなので、どんな雰囲気なのか、今からワクワクしています。

定時株主総会とは、1年に最低1回開催される株主総会。株式会社であれば規模の大小を問わず実施しなければなりません。

一般的に、上場企業であれば、決算から3カ月以内に開催されます。業績の報告をはじめ、役員の選任や解任の決議があったり、今後の戦略に関するプレゼンテーションなどが行われたりします。レコード会社などでは所属アーティストのパフォーマンスがあったりするなど、工夫を凝らしている企業もあります。

株主総会とは、株主の集会のこと。通常は1株でも株を持っていれば、株主総会に出席することができます。ただし、単元株制度というのを導入している企業は、決められた最低単元の株を持っていないと参加できません。

自分が応援したい企業の株を買って、株主総会で経営陣の話を聞く。それもまた、株式投資の醍醐味です。

「値下がり=損」とは限らない、株主に対して配当が支払われる可能性

最大のリスクは出資した額を失ってしまうことですが、上場企業の株であれば市場で(証券会社を通じて)売買できますから、最悪の事態になることは稀でしょう。

上場していない企業の株の場合には自由に売買できないこともありますが、上場企業の株であれば換金できないリスクはかなり小さいのです。

そうは言っても、値下がりしたら損をする、という声が聞こえてきそうです。たしかに、市場で売買されている上場企業の株は、価格が常に変動しています。そのため、値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります。

とはいえ、値下がりイコール損とは限りません。なぜなら、企業が儲かると、株主に対して配当が支払われる可能性があるからです。

株式会社は、株主からお金を集め、それを元にビジネスをして利益を得ます。利益が出た場合には企業内にプールしておくと同時に、「配当」として株主に還元することができます。

ちなみに、企業内にプールしておくことを「内部留保」と言います。

もしも、100円で株を買い、5円の配当を受け取ったとしたら、株が値下がりして95円になっても、トータルではトントンということになります。手数料やお金の時間価値まで考えると損得の計算はもっと難しくなりますが、株の値下がり分イコール損ではないのです。

株価の変動という点だけに目を向けていると、本当は何が損で何が得なのかがわからなくなってしまうのです。

健康や人生のトラブルは、予防にお金をかける方が「得」

ところで、少し話は飛躍しますが、健康や人生のトラブルは、予防にお金をかける方が「得」だと言われています。

病気になってからの治療より、病気にならないようにお金をかける方が得。

トラブルになってから弁護士さんに相談するより、トラブルにならないように事前に相談しておいた方が安く済む。

知りあいの弁護士からはよく、

「トラブルになる前に相談に来て欲しかった」

という愚痴を聞かされます(笑)

そう考えると、目先の損得にとらわれることなく、先々まで想像できる力を養いたいものです。そして、そこまで考えないと計算できないのだとしたら、損得ばかり気にしていることが時間の損になるかもしれません。

おそらく、「得をすること」が人生の目的ではありませんしね。

さしあたっては、株主総会に参加して、応援している企業の将来の展望について聞いてこようと思います。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。