6月23日のEU離脱を問う英国民投票以来、相場が素直でなくなり、上がれば下がる、下がれば上がるの乱高下、いわゆるレンジ相場となり、多くのマーケット参加者が痛手を被ったことと思われます。
これは、昨年12月からの下降トレンド相場とは、全く異にするものです。また、トレンド相場であれば、売り放し、買い放しで大いにもうけられるチャンスはありましたが、レンジ相場ではアップダウンが激しく、すばやく、方向を変えていかなければ、それこそトレンド相場でもうけた収益を減らしたり、下手をすると、もうけを飛ばしてしまうこともあります。
どうして、これだけトレンド相場とレンジ相場は違うのでしょうか。今回は、「なぜ、レンジ相場になるか」について、確認しておきましょう。
トレンド相場とレンジ相場の違い
トレンド相場は、一方向に継続的に流れるフロー(資金の流れ)があるからこそ、トレンド相場(一方向に進む相場)になります。一方向に進む相場になるためには、単に米雇用統計が良かったとか、あるいは、相場を震かんさせる大事件が起きるとかだけでは、長続きしません。
もちろん、一時的に、一方向には動きますが、リアルなフローがなくては、続きません。問題は、この「リアルなフロー」となにかということです。
それは、ビッグプレイヤーとしての、政府系ファンドや、ペンションファンド(年金運用機関)、中央銀行、時には大手の米系ファンドのときもあります。こうしたところは、例えば、米雇用統計や、大事件などにより、実際に資金を大量に移動させようとすると、トレンド相場になります。
つまり、気合いで資金を動かしても長続きしませんが、リアルなマネーが資金を移動すると方針を決め、継続的資金を動かすことになると、長い期間、一方向に資金が流れることにより、トレンド相場が形成されます。
上記のチャートで、2012年初頭から2015年半ばまで、ドル/円は、ほぼ一歩調子の上昇トレンドとなりました。このときは2つのフローがつきました。
ひとつは、2011年3月11日の東日本大震災の発生で国内すべての原発が停止し、その代替エネルギーとして液化天然ガスを大量に輸入したため、輸入代金の支払いのドル買いが大量にでました。
また、2012年後半からアベノミクスに乗って、米系ファンドが大きくドル買いに出ました。これは、2015年まで続きました。
ただし、2015年代は高原状態になりました。その、大きな理由は、2014年7月から原油価格が急激に下がり、原油の輸入額が激減したため、貿易赤字(ドル買い)が激減しました。
これが、相場に反映してきたのが、2015年の年末からで、上昇トレンド相場が下降トレンド相場に反転してきました。
したがって、基本的には、下落トレンドに現在いますが、チャートの左、2014年代を見てみますと、101.00~106.00近辺で約8カ月間もみ合いとなりました。
こうしたもみ合った部分は、かなり強いサポートになるものと思われ、年内いっぱいぐらいは、100.00~107.00近辺のレンジ相場になるものと見ています。
このように、トレンド相場とレンジ相場は、性格が異なり、それぞれの相場の攻略法も違います。
トレンド相場とレンジ相場の難易度は?
難易度という点では、相場の変わり目が難しく、既に申し上げましたように、トレンド相場からレンジ相場への転換は、激しい乱高下を繰り返し、せっかくトレンド相場で稼いだもうけを失うことすらあり得ます。
また、もうひとつの相場の変わり目は、レンジ相場からトレンド相場に変わるときで、この場合は、レンジ相場がかなり収束してきます。
収束自体、相場が動き出すことを示しているのですが、往々にして、そういうときは、逆張りで戻りを売り、押し目を買っていたりするものですが、いったんレンジ相場がトレンド相場に転換すると、強烈な勢いで、一方向に相場は動きますので、場合によっては、結構な損失を被ることがあります。
したがって、例えば、複数の移動平均線が収束してくると、動き出す可能性が高まりますので、こうなったら、早急に逆張りは撤収することが賢明です。
トレンド相場とレンジ相場の特徴をつかんでおくだけでも、利益が随分変わってきますのでご注意ください。
執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)
バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら。