成田発マニラ行きエコノミークラス、ミニボトルのワインは白はシャルドネ、赤はカベルネソーヴィニョン

機内食なんて、おいしくないでしょ。だってエコノミークラスだしね……。そんな斜に構えた印象が一気に吹っ飛ぶのが、全日本空輸(ANA)の機内食である。

自社工場を擁してメニューづくりから独自で行う航空会社の機内食というのはおいしいもの。だがそれはアッパークラスの場合、と注釈がつく。そんな常識(?)を打ち破った! と感銘を受けたのが今回利用したANAの機内食だったのだ。

成田発マニラ行き、たった4時間の短いフライトゆえ、食事をそれほど重要視していなかった。だが17時20分発、つまり機内食がサーブされるのはディナータイムにあたる。いい感じにおなかがすいてくるタイミングで、CAさんがやってきて注文をとってくれた。日系エアラインだし、ここはやっぱり和食である。メニューは「穴子の柳川風御膳」。トレーにはメインのほかにうどん、野菜やデザートがのせられ、なかなかのボリュームだ。黒いトレーに真っ白の器が高級感を醸し出しており、見るなり「おっ」と思わせる。

成田発マニラ行きエコノミークラスの和食機内食「穴子の柳川風御膳」。黒いトレーが高級感を醸し出す

野菜はシャキシャキと歯ごたえも楽しく、ごはんに合うくらいの濃いめの味付け。もともとできたてアツアツを食べる料理ではないゆえ、お弁当や機内食に向いている。もっと量が多くてもいいのに、と感じたくらいのおいしさだ。うどんはつゆをかければほぐれ、コシはないがつるんとしたのど越しでするすると胃袋に収まる。錦糸卵と、別添ののりをかけていただく。つゆはちょっと甘めである。

メインの「穴子の柳川風」

いよいよメインの穴子の柳川風ごはんへ。ふんわりと蒸した穴子とごぼうに餡仕立ての玉子がかかっている。香り高いしいたけと一緒に食べると、上品なだし風味が広がり、文句なくおいしい。ごぼうにしっかりと味がしみているのもいい。ごはんがすすむ。さすが日系エアライン! さすが自社工場!! 器を変えればビジネスクラスで出してもいいのではないか、というくらいの完成度だ。ワインがミニボトルでサーブされるのもうれしく、ご機嫌のミールタイムとなった。

帰国便でも再び和食を

帰国便では洋食を試すぞ! とはりきっていたのだが、残念ながら和食しか残っていないそう。というわけで、またも和食にトライ。こちらのメニューは「白身魚の卵餡かけ」。なんだか往路と似ているような……。だが付け合わせやデザートは違う。タケノコといんげんの炒めは中華風のこってり味。ふと思ったが、これってサラダの扱いなのだろうか。そういえば往路でもサラダはなかった。玉子焼きにかにかまの磯辺揚げ、たくあんのおかかあえ、アスパラガスとたっぷりのおかず。往路より1品多いうえに量も多い。味付けは全体的にはあまり濃くないが、たくあんだけはやたらと塩辛かった。色鮮やかな梅しそ麺は、しその香りがさっぱりといいアクセントになっている。つゆもこれならあまり甘く感じない。

マニラ発成田行き、エコノミークラス和食メニューのメインは「白身魚の卵餡かけ」。ちなみに、餡仕立ては乾燥した機内ではしっとり食感がキープできるメリットもあるし、口の中が乾燥するので食べやすくもある

ほうれん草がクタクタではなく食感が適度に残っていて、素材の味が感じられることに感動

さて、お待ちかねのメインディッシュを。メニューには「卵餡かけ」とある。ゆるめの餡が揚げた白身魚全体によくからむ。魚はぷりっと弾力を残した揚げ具合で、悪くない。だがなにより感動したのは、さりげなく添えられたほうれん草だ。機内食で出てくるほうれん草は、いつもクタクタになるまで火が通っていることが多いが、これはちゃんと食感が残っていて、素材の味がする。こういうところ、意外と気を使っているなぁと感心しきりである。

デザートもなかなかよかった。タピオカココナッツに小豆を散らしたシンプルなものだが、甘さ控えめなところがいい。ただ、タピオカミルクを想像してスプーンを入れるとその固さに驚かされる。

日本のエアラインだけに、ANAでは和食にものすご~っく力を入れているのだという。確かに、味覚や嗅覚が鈍くなる機内では素材の味を生かした薄い味付けの和食は難しいが、べったりした味付けにならないよう努力しているのがうかがえる。やっぱり日本のエアラインを利用したときには和食を選ぶのが正解なのだ。