さまざまな業界にデジタル・トランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せるなか、「『おもてなしテクノロジー』で人を幸せに」をコア・バリューに掲げ、Webマーケティング支援やSaaS型本人確認システムなど、企業と顧客をつなぐDXクラウドサービスを展開するショーケース。

顧客だけでなく、自社の従業員への「おもてなし」も重要であるという考えのもと、あらゆる業務をオンライン化し、テレワーク制度・環境の整備を積極的に進めている。こうした同社の取り組みは、東京都の第1回「TOKYOテレワークアワード」大賞(2021年)、総務省の「テレワーク先駆者百選」(令和3年度)に選出されるなど、社外からの評価も高い。

今回は、ショーケース コーポレート本部 人事部兼総務部部長 山田剛氏に、リモートワークを中心とした働き方の詳細や、その根本となる考え方について聞いた。

  • ショーケース コーポレート本部 人事部兼総務部部長 山田剛氏|

    ショーケース コーポレート本部 人事部兼総務部部長 山田剛氏

自宅はオフィスであり、オフィスの環境を整えるのは会社の責務

ショーケースでは、コロナ禍以前からリモートワークを導入していたが、当初は育児や介護などを行う一部の従業員向けの制度という位置づけだった。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、2020年4月には従業員へ原則出社禁止を呼びかけ、リモートワークを全社的に展開。積極的かつスピーディーに移行を進めたことで、ピーク時には従業員の95%以上がリモートワークを実践している状況を達成した。

現在でも、週1~2回ほどの出社日を部門ごとのルールに沿って設ける形でリモートワーク中心の働き方が推奨されており、従業員のリモートワーク率は75%程度で推移している。

  • ヴィンテージライクなデザイン家具や倉庫をイメージした会議室が並ぶ

    ヴィンテージライクなデザイン家具や小物が並ぶフリースペースや倉庫をイメージした会議室が並ぶ同社オフィス

リモートワークには、通勤の負担を減らせるなどのメリットがある一方で、チームとして働くうえではさまざまな難しさもある。同社でも、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いた際に、オフィス出社を前提とした働き方に戻すべきか否か、議論が繰り広げられたという。

しかし、「会社へのエンゲージメントをリモートワークの大きな課題として感じていたが、実際に従業員の声を聞いてみると、プラスの側面のほうが大きいことがわかりました。そうであれば、管理職の一方的な考えで元どおりの働き方に戻すのではなく、従業員の安心・安全を確保しながらこの難局をどう乗り切るかという『おもてなし』の視点で働き方を見直すことが重要だと考えました」と山田氏。

結果、リモートワーク前提での働き方は継続し、会社全体の生産性向上につながったという。

ショーケースのリモートワークで注目すべきは、「自宅そのものがオフィス」という発想がベースにある点だ。自宅はオフィスであり、オフィスの環境を整えるのは会社の責務であるという考えのもと、従業員に対しては月額2万円のリモートワーク手当が支給されている。

自宅の光熱費や通信費はもちろん、机や椅子、モニター、コーヒーメーカー、アロマグッズなど、オフィスとしての自宅環境を快適にするためであれば、利用用途は特に定められていないという。ショーケース社員にとっての就労環境は「与えられるもの」から「自分でより快適に構築していくもの」に変化しているそうだ。

地方在住でフルリモートワークを行う第1号・2号社員が誕生

働きやすさを追求するショーケースの挑戦はまだまだ続く。ITエンジニアの採用難が叫ばれるなか、地方に住む優秀な人材を獲得すべく、地方在住型フルリモート勤務制度もスタート。

主にエンジニア職の採用を想定した制度だが、育児や介護など、ライフイベントの関係で地方在住を望む既存社員も利用することができる。すでにパートナーの転勤で徳島県へ移住することになった女性社員が第1号として同制度を利用。今年の春からは、第2号として男性社員が育児のために山形県へ移住予定だという。

こうしてリモートワークに関する新たな制度を次々と打ち出すことができている理由を、山田氏は次のように話す。

「IT企業である当社では、『アジャイル手法』というソフトウェア開発の考え方がエンジニア職以外にも浸透しており、まずはやってみることを重要視し、PDCAを迅速かつ継続的に回していくことで改善していこうという風土が根付いています。人事プログラムにもこうした考え方が根本にあり、他の企業では多くの調整時間を費やしてしまうような制度でも、すばやく実現することができます。もちろん失敗もあるが、リモートワーク制度に関しては、これまで良い選択を続けてくることができました」

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ショーケースが求める人材とは

ショーケースが目指すのは、人の期待を超え、感動や満足感を提供するしくみ=おもてなしテクノロジーで、幸せな人が増えていく世界だ。こうしたコア・バリューの実現に向けて、従業員には「誠実・挑戦・成長」という3つの要素が求められる。

山田氏は「時代が大きく変化し、新しいことを生み出さなければならなくなってきている。3つの要素は、その源泉となるもの」と語る。これらの要素をいかし、チームとして成果を出すことにこだわれる人材にこそ、活躍の場があるという。

「ショーケースが提供しているのは、いわば縁の下の力持ち的なサービスです。あまり知られていないかもしれませんが、サービスのコンセプトや当社の思いに共感していただける方がいらっしゃれば、その縁を大事にしたいですね」