「スポーツカー」だと思って運転を楽しんでいたクルマが、よく調べてみると「GT」だった。あるいは、その逆。こんなことが時々あるのですが、スポーツカーとGTとではいったい、何が違うのでしょうか? モータージャーナリストの内田俊一さんに聞いてみました。
深入りは危険? 議論が続く永遠のテーマ
GTとスポーツカーはどう違うのか。これは、クルマ好きにとって永遠のテーマといっても過言ではない。はるか昔から議論されてきたテーゼだ。
そもそも、スポーツカーとは何ぞやということになる。先人曰く、乗用車(セダンやSUVなどの実用車)が終わるところから始まり、レーシングカーが始まるところで終わるという。その話で行くと、実用性よりも走りを重視し、かといって街中でもぎりぎり使えるクルマということになろうか。
ここからは個人的な意見も交えながら述べると、ドアは2枚で車体が軽く、きびきびと走ることだけを考えて作ったクルマ、というイメージだ。例えばロータス「スーパーセブン」やポルシェ「911」、日本ではマツダ「ロードスター」などは、典型的なスポーツカーといえるだろう。
では、GTとは何か。グランツーリズモ(グランドツーリング)を略してGTというのだが、長距離旅行用のクルマとでも訳そうか。これを最初に名乗ったのは1951年にデビューした2ドアのランチア「アウレリア」だ。ボディ形状はクーペで、走りの良さにエレガンスを兼ね備えたクルマだった。もちろん高性能を誇り、2リッターV型6気筒を搭載。その後、2.5リッターまで排気量は拡大していった。
同じく個人的見解を交えると、長距離を疲れなく快適に、しかもハイスピードで駆け抜けられること、それもエレガントさと共に。これがGTだと思う。
スポーツカーとGTとで大きく違うのは、この快適性とエレガントさを重視しているかどうかだ。特にヨーロッパでは、1日500km程度のドライブは日常茶飯事。そういった時に、2人分のスーツケースを飲み込み、ちょっとしたリゾートホテルなどに横付けし、優雅にディナーを楽しむのに様になるのはスポーツカーではなく、やはりGTであろう。従って、最近はやりのシューティングブレークもGTのひとつと呼んでもいいと思う。
多分、ここまで読んできた諸兄は、「いやいやそれだったら、最近スポーツカーといっているクルマの多くはGTではないか」と思われるかもしれないし、「ポルシェ911だってそうじゃないか」というかもしれないし、「いやいや、4ドアにだってGTといっていたクルマがあるぞ」とおっしゃるかもしれない。それはその通りで、だからこそ、長年にわたり議論が続いているものの、このテーマには明確な結論がでていないのである。
本音でいえば、運転を短距離で楽しむのがスポーツカー、長距離で楽しむのがGTと“何となく”思っているのだが、果たして……。