独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

第38回は、大阪府枚方市でヒーリングエステPrim(プリム)を経営する馬場多喜子さんにお話を伺いました。

  • 馬場多喜子さん

お客様が喜んでくださる姿が嬉しくて、美容の世界に夢中に

――馬場さんは、30年以上にわたって、エステサロンを経営してこられたと伺っています。美容の世界に入られたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。もともと美容に関心をお持ちだったのですか?

馬場さん:年の離れた姉のメイクに憧れていたこともあって、幼い頃から美に興味がありました。女性の美しさを保つ仕事がしたいという思いから、エステティックサロンで働き始めたのは、19歳のときです。

はじめは、エステティックサロンの美容部員として働いていました。しかし、次第にサロンの現場に入って施術をしたいと感じるようになり、エステティシャンになりました。お客様が美しくなられる様子を見るのが喜びで、美の世界に夢中になりましたね。23歳のとき、新店舗の店長に抜擢されました。

――就職して4年目で店長になられたのですか。お客様への施術だけでなく、お店の経営も任されたのですね。

馬場さん:店長としての仕事は、わからないことだらけでした。何とかやっていけたのも、他店舗の先輩店長さんが、丁寧に教えてくださったおかげです。それもあって、その先輩が独立されたとき、一緒について行ってお手伝いをさせていただきました。そこでサロン経営を学んで独立の準備を進め、26歳のときに自分のサロンを開業しました。結婚をしたのも、その年です。

人生で最も困難な時期、お客様の励ましが支えに

――開業の年に、結婚もされたのですね。まさに新しいステージの始まりだったのではないかと思うのですが、開業されて、何か苦労されたことなどありましたか?

馬場さん:サロンの仕事が軌道に乗り、子育ても順調に進んでいるところに、夫の肺がんが見つかったのです。手術を受け、一時は良くなったものの、半年後に転移が見つかり、闘病生活が始まりました。同時期に、転倒し脳に血腫ができたため、父も手術とリハビリが必要になり、介護が始まりました。

2年後に父が亡くなり、その1か月後には夫も亡くなりました。母の認知症の進行もあって、子育て・看護・介護が重なったこの頃が、人生で最も困難な時期でしたね。エステの仕事も縮小せざるを得ず、お客様に急な予約の変更をお願いすることもありました。お客様方は快く応じてくださり、励ましの言葉までくださって、大きな心の支えになりました。

生きることを楽しむために、この世に生まれてきた

――お客様の励ましが、困難な時期を乗り切る支えになったのですね。開業されて、今にたどり着かれるまでの思いを、お聞かせいただけますか。

馬場さん:私が美容の仕事を続けることができたのは、素晴らしいお客様と仕事があったから、そして娘たちの励ましや手伝いがあったから、です。だから、どれだけ辛くても頑張って乗り越えて来られたのだと思います。

もともと美容の仕事を志したのは、女性が美しく幸せになって喜んでくださる姿を見るのが好きだからです。特に「第2の人生」とも言える40代、50代になったら、改めてご自身を振り返る時間を持ち、子供のような素直な心に戻って、心から楽しいと思える毎日を過ごしていただけたらと思っています。以前にも増してそう思うようになったのは、孫の誕生があったからです。2020年に、娘に子供が生まれ、私はおばあちゃんになりました。孫の生きる姿を見ていると、「人は、生きることを楽しむために、この世に生まれてきたのだ」と強く感じます。

生きることを楽しむため、健康で美しく生きるためには、内面も外面も、どちらも美しくあることが大切です。2022年4月28日に著書『美人力がアップする薬膳アロマ~五感がよろこべば、カラダは整う』(クローバー出版)を出版しました。エステティックサロンでの施術経験に加え、薬膳やアロマを学んで培った「人生100年時代を美しく健康に輝かしく生きる秘訣」を、オリジナルの薬膳アロマとして一冊にまとめました。読んでくださる皆様の美と健康、幸せのお手伝いができたら本当に嬉しいです。

枚方の魅力を、国内外に広めたい

――今後の展望はいかがでしょうか。

馬場さん:自宅サロンに続く2店舗目を、7年前、大阪の京阪枚方市駅前にオープンしました。従来のメニューに加えて、痩身エステも提供しています。下の娘もサロンを手伝い始めたので、娘の持つヨガや身体の知識を生かしたメニューもご提供できるようになりました。

2024年度は、「京都きものPR大使」としても、活動をする機会をいただいています。私の目標は、京都や日本文化の魅力を広めること。さらに、地元である枚方の良さを広めること、です。大阪万博や、枚方再開発のひらかた万博に向けて、枚方を日本はもとより海外の方にも知っていただき、盛り上げていきたいです。

――ありがとうございます。最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

馬場さん:途中で間違えたと感じたら、それも学びの一つと受け止めて、方向転換をする勇気を持ち、チャレンジを続けることが大切です。そして、自分のやりたいことや願望は、言い続けることで、叶える道が拓けてくると信じています。ぜひ、自分が楽しいと感じる方向に向かって進んでください。