独立・開業には勇気がいります。そして人それぞれの理由があります。もちろん稼ぐことを目的に開業する人もいるでしょう。しかし、それ以上に「思い」を持ってビジネスに取り組まれている人が大勢おられます。ここではそんな人々にスポットを当てて、独立・開業への思いや、新しい人生の価値観などを伺っていきます。

1回目となる今回は、東京都内で巻き爪専門フットケアサロン「巻き爪専科」を開業されている豊留菜摘(とよどめ・なつみ)さんにお話を伺いました。

  • 「巻き爪専科」を開業されている豊留菜摘(とよどめ・なつみ)さん

一人でも多く、巻き爪で悩んでいる方の痛みをなくしたい

――お祖父さまへの思いがこもった巻き爪専門のフットケアサロンと伺いました。そもそもなぜ巻き爪専門で開業されたのでしょう、ジャンル的に珍しい気もするのですが。

豊留さん:以前、柔道整復師として整形外科に勤務していまして、患者様の骨折・脱臼の整復や固定、リハビリ等を行っていました。その当時から祖父が巻き爪で悩んでいたことを知っていたのですが、手立てがわからずそのままにして過ごしていたのですね。

そんなある日、巻き爪の痛みを庇いながら歩いていた祖父が、外出中にバランスを崩し転倒してしまい、大腿骨(足の付け根)を骨折してそのまま入院してしまいました。以前から内臓の疾患を持っていたこともあり、祖父はそのまま入院先で息を引き取ったのです。

祖父は長らく巻き爪で悩んでいたのに、なぜすぐに調べてあげなかったのだろうと、とても後悔しまして……。その後、現在行っている巻き爪矯正技術に出会い、巻き爪の痛みに悩んでいる方に快適な生活を送っていただきたいと思って、4年前に起業しました。

  • 祖父への思いがきっかけで巻き爪強制技術に出会い、4年前に起業した

店舗を増やしたタイミングでコロナ禍に突入

――なるほど、だから「巻き爪専門」なのですね。でも巻き爪に絞り込むのは難しくありませんでしたか? 当初から揺らぐことなく開業に踏み切れたのでしょうか。

豊留さん:いえ、私もこれでいけるのか必死で考えました。単に人のためにとか、笑顔だけでは事業は継続出来ないので、コストや利益率等を考えるのが大変でしたね。副業というスタイルでの営業形態を模索していた時期もあったんです。

――確かに「思い」は大切ですが、それだけではビジネスが成り立たないですからね。コロナ禍の経営も大変だったのではないでしょうか?

豊留さん:はい、店舗数とスタッフを増やしたタイミングで、新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、介護施設へ出張して巻き爪のケアをする仕事がほとんどなくなりました。これではスタッフのお給料が払えないのではないかとあまりに不安でしたので、自分の仕事時間以外に早朝の清掃アルバイトを1年間やりました。

結果的には巻き爪事業だけで大丈夫でしたが、特に第一波で多くの方が外出を控えていらっしゃった時期は先行きが不安で、本当につらかったです。しかし清掃の仕事を通じて学べたことがたくさんあったので、今では良い経験になったと感じています。

  • コロナ禍の不安を解消するために行っていた清掃アルバイトが本業の糧にもなっているという

"日々を楽しむために生きる"祖父の生き方、お客様やスタッフにも広げたい

――今では4店舗を経営されているとのことですが、ここに来られるまでの思いややり甲斐などお聞かせいただけますか?

豊留さん:サロンには『巻き爪の痛みで、大好きな山登りができない』とか『出かけるのに億劫で引きこもっている』『運動を全力でできない』など、痛みのせいで生活を楽しめていない方が大勢お越しくださいます。

私たちは『痛くない・切らない・目立たない』をコンセプトに、爪やお客様に負担のかからない施術を心がけています。巻き爪の施術だけではなく、巻き爪になる原因や再発防止のためのアドバイスもさせていただいているんです。

祖父が『日々を楽しむために生きる』を体現していた人でしたので、皆さんにも「痛みのない快適な生活を笑顔で過ごしていただきたい」という想いで、日々施術をさせていただいています。これは開業してからも、そしてこの先もずっと変わらない気持ちです。

また、私達スタッフも『私生活を全力で楽しむ』ことが巻き爪専科の方針です。

働くために生きるのではなく、私生活を楽しむために働く。私生活が充実している人は仕事も全力で取り組めると考えています。

そのため、スタッフにも『仕事も遊びも全力で』楽しんでいただいています。

――豊留さんがお祖父さまから受け継がれた「楽しむために生きる」という思いはお客様だけでなくスタッフの皆さんにも向けられているのですね。

豊留さん:施術後、お客様から「旅行に行けた」「テニスがまたできるようになった」「今まで痛くて履けなかったお気に入りの靴が履けるようになった」「巻き爪の痛みがなくなったら頭痛がなくなった」と言っていただくことが多く、お客様が笑顔で好きなことができているという変化を感じられることが一番のやりがいですね。

――今後の豊留さんの展望をお聞かせいただけますでしょうか。

豊留さん:引き続き、お客様一人ひとりに寄り添った施術を心がけて、日本中にいらっしゃる巻き爪の痛みをお持ちの方のために、さらに事業を拡大していく予定です。医療系の国家資格保持者の方や、お客様の笑顔を作りたい! という方々とぜひご一緒できますとうれしいです。

――ありがとうございます、では最後に、読者の皆さんへメッセージをお願い致します。

豊留さん:私が独立して感じたことは、失敗も成功も全て自分の責任になるということ。もちろん失敗は怖いのですが、失敗の先に成功があると信じて進んで行くことができます。そしてそれが『相手のために何ができるか』貪欲に追求することにも繋がると思います。

起業することが全てではありませんが、起業したからこそわかる景色があります。もし、失敗したとしてもまた働けば良いですし、その経験は必ず何かで活かされるはずです。

人生は一度きりです。ぜひ、迷われている方は一歩勇気を出して新しい世界へチャレンジしてみてください。一緒に頑張りましょう!!