みんなで協力して築いた万里の長城

子どもは遊びを通じて世界のあらゆるものに触れ、様々なことを学び、成長していくもの。子ども時代にどのような遊びを子供に促すことができるのか、親にとっては有り余る悩みだ。そこで、子供の現場で約40年間活躍してきた、玩具のデザインと生産販売・子どものワークショップを展開している「童具館」の和久洋三館長に遊びのコツを伺った。

究極的な遊びは「積木」と「ボール遊び」

「我が子に玩具を!」と張り切って玩具売り場に行ったものの、あまりの種類の多さに悩んだ挙げ句、結局選びきれなかったという経験はないだろうか? 実際、玩具市場には毎年様々な新商品が登場し、海外から輸入された珍しい玩具も市場に出回っている。また、子どもの年齢にあったものをと考えるとさらに悩ましい。

「玩具には『主食』と『おやつ』がある」というのは和久さんの持論だ。「おやつ」とはスイッチひとつで動いたり光ったりするものや、その時の流行のキャラクターなどをモデルにした玩具であり、複雑な構造のため壊れることもある玩具のことを指す。

一方の「主食」となる玩具は、「おやつ」のような華やかさはないものの、認識する・考える・創造するなどという根源的な学びを与えてくれるものだという。こうした「主食」の玩具には、シンプルなだけに想像力が必要になる。そしてその想像力を縦横無尽に働かせるためには一定の規則が不可欠であり、その代表が「積木」と「ボール遊び」だ。

積木で自分がすっぽり納まるお部屋を作ることも

ボールの特徴は「動く」「秩序」にあるという。子どもは自分に似たものに関心を抱き、中でも「動く」ものへの執着心が高い。また、円形という均等な作りのため、投げたい方向に投げることができ、どの程度の力を加えれば投げたい場所まで届けることができるのかを考え、体感することができる。こうした形状と運動機能の両面において「秩序」のあるボールは、無意識のうちに子どもを心身ともに成長させてくれる。

もう一つの「積木」はさらに奥が深い。積木は○△□などと様々な形があるが、積木の基本となる寸法(基尺)は定められているため、いろいろな種類の積木を重ねていっても、同じ高さや長さのブロックを作ることができる。また、積み方もどの方向が正しいとは決まっていないため、尽きることのない自由な発想を生み出してくれる。

左右の高さを同じにするためには? 崩さないように高く積み上げるには? などと、子どもたちは無意識に大きさやバランスに注意しているため、いつの間にか数量や形体に対する認識が深まる。積木遊びを原数学活動という学者もいて、思考は数学的な理解から始まるともいわれている。

積木は○△□などと様々な形があるが、積木の基本寸法は定められている

積木遊びの始まりは「見立て遊び」から

実際にどのような積木遊びができるのか? 和久さんは初めて与える積木として、積木の基本である立方体と直方体をすすめている。素材はできるだけ重さのある、塗装されていない無垢の木がいいとのこと。「すべすべとした肌触りでずっしりとした手ごたえのある積木に子どもたちは愛着を感じます。また、最初は、積木を身のまわりの物に見立てる『見立て遊び』がはじまるので、できるだけ色々に想像ができる無色(白木)で単純な形のものを選んであげるといいでしょう」。見立て遊びの例として、男の子であれば電車や車、女の子であればままごとの食器や携帯電話などから遊びが広がっていくとのこと。

積木を電車に見立てて遊ぶ

彩色した球で、お皿の上にりんごやレモンが

7,8カ月から大体1歳半の頃の遊びで気をつけたいことは、構造的に積み上げる遊びはまだまだ先だということだ。積木に親しむようになったばかりの子どもたちは、1個から10数個の単純な形の積木で遊ぶ時期が半年ぐらい続くので、親から見れば「いつになればビルやお城をつくるのだろう」ともどかしく感じる日々の繰り返しのようだ。

いつ頃から積木に親しむようになったかで遊びの内容は変わるが、1歳前後の頃であれば、あまり多くの量は必要ない。無色の立方体、直方体以外に積木を追加するのであれば、球や円柱を加えて遊びが広がるようにするといい。

1歳半までの子どもにおすすめする積木「WAKU-BLOCK45 H0」2万2,050円(税込み)

では、構造的な積木遊びができるようになるのはいつ頃か? 子どもの知的作業が飛躍するのは大体2歳半以降と和久さんはいう。言葉で意志が伝えられるようになる頃だ。それまでは数を増やすことによる形の多様性や、形と形の関係性、規則性を直感していくことが子どもの関心事だ。次回はその2歳半までにおすすめの積木と、遊びのポイントを紹介しよう。

プロフィール : 和久 洋三(わく ようぞう)

童具館館長、童具開発研究所WAKU所長、「和久洋三のわくわく創造アトリエ」主宰。1968年に東京芸術大学院終了後、フレーベル館にて遊具開発、保育園にて保父を体験するなど童具の創作・研究を経て、1989年に童具館を設立。同年に「和久洋三のわくわく創造アトリエ」を開設し、子ども創造教育に取り組んでいる。開発した玩具の幾つかはドイツで「優良玩具選定」を受けるほか、『遊びの創造共育法(全7巻)』『子どもの目が輝くとき』(ともに玉川大学出版部)などの著書も執筆している。

童具館