来年のNHK大河ドラマの影響からか、"戦国もの"がスゴイことになっているとの話を聞き、急遽取材を敢行。前回は、神田の古書店街から少し離れた靖国通り沿いにある「歴史時代書房 時代屋」を訪れ、変容しつつある戦国人気について伺いました。今回はさらに、ディープな世界を垣間見てみましょう……。

戦国好きが高じてブランドを - 「もののふ天守」

新宿3丁目、末広亭のほど近く、地下に帯広豚丼の有名店があるビルの5階に「もののふ天守」のショップがオープンしたのは、今年の11月1日。毎週土日祭日のみ営業されています。

店内は小じんまりとして、とってもアットホームな雰囲気

「戦国武将と変わり兜のデザインブランド」である「もののふ」がmixiを媒体として設立されたのは、2004年12月のこと。主宰の田中さんは根っからの戦国好きで、特に武将の自己主張が表れている変わり兜に興味を抱きます。2006年には勤めていた会社を辞めて独立しました。

「主にTシャツやシルバーアクセサリーなどを扱っています。戦国時代は武将の自己主張が際立っているので、それを現代にアレンジしているような感じですね」

津軽の伝統工芸品に六文銭がデザインされていてお洒落

渋いシルバーアクセサリーは定番の人気グッズだ

「もののふ」のロゴコンペには100人近くのクリエイターが参加したとのこと。現在もデザイナーは20~30人いるそうです。サイトではさまざまなデザイナーの作品を見ることができますが、どれもユニークで洗練されたものばかり。もちろんモチーフはどれも戦国なのですが、そのイメージからは離れたおしゃれなアクセサリーが揃っています。

時代屋同様、「もののふ」も最初は男性客が多かったとのこと。「でも、2、3年前から女性が急増して、今では6割が女性ですね。3年前からいろいろなイベントも開催していて、こちらも女性客の方が目立ちます」。田中さんは戦国文化を発信し、地域活性化も目指した「天下『布』武プロジェクト」も進めています。

「戦国武将手拭い」。何本かそろえておきたくなる

デザインの感度の高さは「もののふ」の真価を表している

「戦国や戦国武将について語ることが、サブカルのようにとらえられがちなのですが、本来、歴史の本流、メインストリームであるはず。戦国武将の精神や美意識、戦国の世の豪華絢爛で自由奔放な文化を伝えていきたいと思っています」

ゲームから戦国に興味を持つ人がかなり増えてきていることについては、「入口はどれでもいいのでは」と田中さん。「ゲームや漫画をきっかけに興味を持つと、小説を読んだり、ドラマを観たり、次第に自分で調べるようになっていきます」

やはり何事も好きになれば、世界は広がります。中でも歴史の世界は深く広く、そしてさまざまな新しい事実や解釈が出てきます。それもまた歴史の魅力。デザインから戦国へ目覚める、ということもあるはず。「もののふ」そのものも戦国への入口のひとつなのです。

戦国ニュースペーパー『もののふ公記』の発行も開始。今後もさまざまなイベントを展開していく予定だと田中さんは話します。「もののふ」のサイトにこれからも注目、です。

やっぱり気になる? NHK大河ドラマ『天地人』

ところで、「やはり気になりますよね、来年の大河」ということで、予測(?)も交え、宮本さんと田中さんに話を聞いてみました。もちろん、時代屋、もののふ、どちらも直江兼続関連ものは用意しています。

天地人のことをまとめて知りたい人は前編で紹介した時代屋へ。写真右は、直江兼続に1年間付き合うにはもってこいのカレンダー

ちなみに、時代屋では武将ゆかりのメニューも用意されている。写真右は、出迎えてくれる奉公人(店員)さんたち

時代屋はすでに「天地人コーナー」を設置。原作本をはじめ、関連書籍を充実させています。中には直江ゆかりの米沢市でしか販売されていないという本も。さすが! の品揃えです。もののふでは「直江兼続Tシャツ」などを販売中。こちらも、もののふならではのセンスが光っています。

宮本さん、田中さんともに話をしていて共通していたのは、直江の兜の「愛」の解釈。これは今の「愛」、つまりLoveではなく、「愛染明王」「愛宕権現」に由来するもの。ただ、戦国武将としては珍しく、妻の他に側室を持たなかったことでも知られています。NHKさん、もしかしてLoveを前面に押し出す?

現在の『篤姫』が女性の人気が高いこともあり、次回も女性をターゲットにしているのでは、という見解もお二方同じでした。「配役については、いろいろな意味で話題となっているようです」(宮本さん)

直江兼続役は妻夫木聡、その妻お船(せん)は常盤貴子ですが、その他、石田三成=小栗旬、真田幸村=城田優、小早川秀秋=上地雄輔、などなど。なるほど、これだけでも若い女性を意識していること、わかりやすっ、です。とにかく、どんなドラマになるのか、年明けを待ちましょう。

戦国気分を味わいたければ 「個室乃世 大河の舞」へ

何だか戦国気分の中で料理が食べたい、酒が飲みたい、と思った方は、新宿の「個室乃世 大河の舞」へ行ってみましょう。エレベータのドアが開くと、目の前には鎧兜の武将が。インパクト「大」です。

エントランスでは武田信玄と上杉謙信が出迎えてくれる。迫力満点 (c)個室乃世 大河の舞

「個室乃世」というだけあり、個室がメイン。仕切り方によりけりですが、個室数は25とのことです。店は川中島の戦いをテーマにしていて、信玄の赤と謙信の黒をテーマカラーに使っています。店内のいたるところに飾られた槍や兜などのオブジェに、戦国気分も盛り上がるはず。ライティングも絶妙です。

この季節のおすすめ料理はやはり鍋。白金豚か伊万里牛をチョイスする「風林火山はりはり鍋」と、キムチベースと醤油ベースのふたつの味が楽しめる「赤と黒の決戦鍋」が用意されています。そのほかにも武将にちなんだメニューが数々あり、酒も充実。各地の日本酒、焼酎の逸品が揃っているだけではなく、幻の焼酎である「森伊蔵」「魔王」「佐藤」の白と黒も。

風雲急を告げる戦国の雰囲気が店内いっぱいにあふれている (c)個室乃世 大河の舞

「はりはり鍋」は岩手県の「白金豚」か黒毛和牛の佐賀県産「伊万里牛」をチョイス (c)個室乃世 大河の舞

白金豚で味わう「決戦鍋」。川中島の合戦をイメージしている (c)個室乃世 大河の舞

「月ごとに変わるコースもご用意しています」。店長の園部さん (c)個室乃世 大河の舞

もちろん年末年始はたいへん混み合います。予約をした方がいいことは言うまでもありません。36人まで収容できる座敷もあるので、会社での忘・新年会に利用することもできます。まだまだたいへんそうな2009年。その幕開けを、戦国気分で盛り上げ、気合を入れる、というのはいかがでしょうか。