【痛車】痛車(いたしゃ)とは、自分のお気に入りの漫画・アニメやゲームなどに登場するキャラクターやタイトルロゴのイラストでペインティングを施す、あるいはステッカーなどを貼り付け、同種の趣味を持たない人に視覚的・心理的に"痛い"と思わせる車を指す。つまり、イタリア車のことではない。
近年、痛車の存在がメディアでクローズアップされることが多くなってきた。こちらも負けじと取り上げねばと意気込む折、関東圏で最大規模の痛車イベントが開かれるという情報を入手。しかもその会場は、F1日本グランプリのコースでもある「富士スピードウェイ」! 車持ちではないので肩身は狭いが、総勢300台もの痛車が全国各地から集う現場にお邪魔させていただいた。
最寄りのバス停から歩くことおよそ30分。現場となった「富士スピードウェイ」のパドックCには集まりも集まったり、約300台の痛車、痛単車、痛チャリ、そして痛車ファンの一般車が詰め掛けていた。歩道からパドックCへは坂の上から見下ろす形になるので、かなり壮観だ。「富士スピードウェイ」に走りに来ている痛車乗りがいたことから企画されたというこのイベント、開会式では体調を崩した参加者が倒れるハプニングがあったものの、速やかに「富士スピードウェイ」の救急車が駆けつけ事態は収拾。司会の上沢さんの号令で開幕となった。
さて、開会式が終了すると同時に、数十台の痛車が動き出した。聞けばこれから「富士スピードウェイ」のレーシングコースを走る体験走行会が行われるという! なにを置いてもこれは撮影せねば! ということで急いでレーシングコースに向かってみた。
……こりゃすごい。速いので目を凝らさないとわからないが、サーキットを走っているのは紛れもなく全て痛車だ。あえて呼ぼう、「痛-1グランプリ」と! これだけでも壮絶な光景だが、せっかくなので次の組に同乗させていただき、車内から走行中の様子を撮影してみることにした。
いきなりのお願いに協力していただいたのは北関東痛車連合にも所属している、八潮@シャナビアさん。愛車のシルビアには『灼眼のシャナ』のシャナが全面に貼られており、真っ赤なシンボルカラーと相まって精悍な仕上がり。助手席にはお嫁さん(=『灼眼のシャナ』抱き枕カバー)もいたのだが、「構いませんよ」と言っていただいたので、カメラ片手に乗り込ませてもらう。しかしまあ、配偶者を「尻に敷く」という慣用句はあるが、二次元の嫁を本当に尻に敷けてしまうのは、痛車オーナーならではの特権だろう。それでは一般メディアとしてはおそらく史上初、痛車内から撮影した「富士スピードウェイ」の走行の模様をご覧ください。
ペースカーを先頭に一列になって走る体験走行なので、速度は最高で140キロ程度だが、それでも八潮さんのシルビア自体が馬力があるだけに迫力はかなりのもの。しかしこの光景、初めてのはずなのにわりと最近どこかで見たことがあるような……そうだ、これは『Forza Motorsport2』! ご存じない方のために説明すると、2007年に発売されたXbox 360用のレースゲーム『Forza Motorsport2』にて、ペイント機能を駆使して作られたゲーム内の痛車が、ネットを通じて全世界のゲーマーに衝撃を与えるという一件があったのである。今回はまさしくあれのリアル版を富士スピードウェイを舞台にやってしまったわけだ。恐るべし、痛車オーナーたち。
体験走行が終わり、パドックに戻ってきたところで、ついにフロントガラスに雨粒が当たってきた。うーん、さすがは雨や霧が多いことで知られる「富士スピードウェイ」。予定されている午後の出し物への不安を抱きつつ、痛車ミィティングはさらに続く!