健康診断で気にしたい項目が、1. 血糖値、2. 血圧、3. 肝機能、4. 脂質、5. 尿酸値。もし健康診断で引っかかってしまった場合、どうすれば良いのだろうか?
そこで本シリーズでは、RIZAPが蓄える「特定保健指導」の知見をもとに、日常生活で実践できる食事法・運動法を紹介していきたい。連載の最終回は「尿酸値」。
話を聞いたのは、RIZAP法人事業本部で保険者トレーナーユニットに所属する市川菜津美さん。管理栄養士の資格を持ち、医療分野を含む幅広い知見からアドバイスできる立場にある。現在は、健診結果に基づいて生活習慣の改善を促す「保健指導」の業務を担当する。
同社の特定保健指導は、生活習慣改善をサポートするオンラインプログラムで、各個人にあわせた食事法や効率の良い運動法などを提案している。「RIZAPでは、会員の生活習慣を3カ月で改善するプランを提供しています。私も利用者の方につきっきりで支援しています」と、笑顔で話す市川さん。
■尿酸値が高くなる原因は?
――尿酸値が高くなる原因と、そのリスクについて教えてください。
尿酸値が高くなると「高尿酸血症」を引き起こし、「痛風」を発症するリスクにつながります。また腎臓の機能にも影響が出てくる可能性も。
尿酸値が高くなる原因として考えられるのが、アルコールなどに含まれるプリン体にあります。プリン体を多く含むものとしてビールが知られていますが、レバーや白子(しらこ)、あん肝など、内臓系や魚卵系の食べ物にも多く含まれています。くれぐれも食べ過ぎにご注意ください。
これは余談ですが、過去に筋トレを始めるにあたり、限度を超えた量の動物性タンパク質を摂取してしまい、わずか1週間で通風を発症してしまった方がいました。動物性タンパク質にはプリン体が多く含まれています。どんな栄養素にしろ、適切な量を心がけるようにしましょう。
■尿酸値が高かったときの対処法
――ふだんの生活で気をつけた方が良いことを教えてください。
アルコールの摂取量を減らし、同時にたくさんのお水を飲むよう意識してください。その量ですが、男女ともに1日1~1.5リットルが目安です。
ボディメイク中の方であれば(炭水化物の食事量を調整しているため)女性なら1日1.5リットル、男性なら1日2リットルをすすめています。1日の間で少しずつ飲み、体の中の水分を維持してもらえたらと思います。
食事面では、野菜、果物のほか尿酸排せつを促進する作用が期待できる低脂肪の乳製品を摂取してもらうと良いですね。
――ちなみに、避けた方が良い野菜はありますか?
尿酸値が高いからこの野菜はNG、というものはありません。根菜類、葉物野菜、緑黄色野菜、いろんな色合いの野菜をバランスよく食べてください。イメージとしては両手に乗るくらい、目標としては350gほどの量を目指してみてください。
ただし、果物には糖質の高いものも多いので、食べ過ぎに注意しましょう。個人的には、果物は朝に食べることをおすすめしています。果物に含まれる果糖はすぐにエネルギーに変わります。夜に食べるよりは、朝~昼に食べて、体を動かす材料にした方が効率的です。
――食事以外ににも、やった方が良いことはありますか?
"筋トレ+有酸素運動"がおすすめです。割合としては、筋トレ : 有酸素運動=4 : 6というイメージでしょうか。
ただし、尿酸値が高い方にとって、激しい筋トレは禁物です。筋肉を分解する過程で尿酸値が一時的に高くなる可能性がありますし、頑張ったご褒美に"肉類=タンパク質"をたくさん摂取してしまうと逆効果になります。
――筋トレはどんな種目をやるのが良いのでしょう?
筋トレで鍛えたいのは、大きな筋肉です。ジムに通える環境であれば、大腿(だいたい)四頭筋を鍛えるレッグプレス、広背筋を鍛えるラットプルダウン、大胸筋を鍛えるチェストプレスなどがよいでしょう。
自宅で鍛えるなら、スクワットを実践したり、タオルラットプルダウンなどを試してみたりしてください。胸の前で手と手を押し合う、合掌トレーニングのようなものなら仕事の合間にもできますよ。
――有酸素運動についても教えてください!
有酸素運動としては、少し息があがる程度の早歩きがちょうど良いです。できる範囲から始め、余裕が出てきたら10~20分くらいを目安にしてもらえたらと思います。
■年齢を重ねたら…?
本シリーズでは全5回の連載を通じて、健康診断で引っかかってしまったときの対処法について聞いてきた。
読者の中には「若い頃と変わらない生活を続けてきたのに」「ある年齢から、突然、健康診断に引っかかるようになった」と困惑している人もいるかもしれない。年齢を重ねれば体も衰え、若い頃と同じようにはいかなくなるもの。
そんな悩みを最後に市川さんにぶつけてみた。
「若い頃より食事の量をセーブする、というよりは、運動量を増やしていくことをおすすめします。現在、その方が1日にどのくらいエネルギーを消費しているかにもよるのですが、学生時代と比べると、どうしても社会人は椅子に座っている時間の方が長くなりがち。
そうなると、代謝機能が落ち、ちょっとした運動をしたつもりでも思うような効果が得られないことがあります。体の健康のためにも、日頃から動く時間をつくってもらえたらと思います。
いまこの瞬間の体が、イチバン若い状態。一過性に終わらない、習慣的なトレーニングを始めてもらえたら、その日からフレッシュな体を維持し続けられます。まずは運動習慣を身につけることを心がけてみましょう!」