こんにちは。住宅デザイナーのタブチキヨシです。今回は、「洗面洗濯室」を紹介します。あまり耳慣れない名前だと思いますが、「洗面洗濯室」は筆者が間取りを決める打ち合わせの中でかなり力を入れて提案している空間です。
洗面洗濯室とは
「洗面洗濯室」は、その名の通り「洗面室」と「洗濯室」を兼ねた空間です。洗顔や歯磨き、服の着脱などを行う「洗面室」に、服を洗濯し、そのまま干すという機能を備えた「洗濯室」をプラスしています。
では、この「洗面洗濯室」ではどんなことができるのか? また、通常の「洗面室」に比べてどのようなメリットが得られるのか? 住む人が「洗面洗濯室」で取る行動から、一つひとつ考えていきましょう。
服を脱ぐ・体を拭く・服を着る
「洗面室」は浴室の脱衣所も兼ねている場合が多いですが、私の設計する「洗面洗濯室」も同様です。入浴のために服を脱ぎ、入浴後は体を拭いて服を着替える、という行動が考えられます。
服を脱ぐということは、着ていた服を入れる脱衣かごが必要となります。また、ぬれた体を拭くためのバスタオルは、浴室から出てすぐに取れるようになっていると便利ですよね。
続けて服を着ることを考えると、着る服を置いておく場所も必要。特に下着類は、洗面洗濯室に収納場所があると楽です。当たり前の行動ですが、一つひとつの行動を細かく考えて収納計画を立てる事が重要です。
例として、私が手がけた「洗面洗濯室」の事例のひとつを紹介します。浴室の出口正面に洗濯機を置き、脱いだ服は洗濯機の横のかごに入れられるようにしています。かごの上には棚を設置し、タオル・バスタオル・下着・家着を収納できるような作りに仕上げました。
歯を磨く・髪を乾かす・ヒゲをそる・化粧をする
当然ながら、洗面室は顔を洗うだけの空間ではありません。歯を磨いたり、入浴後に髪を乾かしたり、男性はヒゲそり、女性は化粧をしたりと、家族それぞれの身だしなみを整える場でもあります。ここで重要になってくるのは、それぞれの道具の置き場所や収納場所です。
歯磨きの際に使う歯ブラシの置き場所は、住む人によって考え方が異なる部分です。取り出しやすく衛生管理もしやすい洗面台の外側に置く人もいれば、見られないように収納しておきたい人もいます。
また、ドライヤーの収納場所も検討が必要です。引き出しに収納するか、壁にかけるか、かごに入れるか、多種多様のパターンが考えられます。当然、コンセントの位置も重要になりますので、それも考慮しなければいけません。
シェービングや化粧道具など、プラスアルファの収納についても検討を忘れずに。洗面台の鏡にしても、3面鏡仕様にするか、デザインを重視してホテルのような大きな鏡にするかなど、決めることは意外に多いものです。家族のライフスタイルによって柔軟に変えていくべき部分が、これらの収納場所です。
洗濯物を干す
「洗面洗濯室」で最も特徴的なのは、今までの常識では考えられなかった「洗濯物を洗面室に干す」という行為ができる点です。
共働き世帯が増え、「いつも家に誰かがいる」という状況が減った現代では、洗濯物を室内干しする機会も増えます。しかし、リビングが部屋干しの洗濯物だらけになってしまうと、デザインを損なうばかりか、住む人の気持ちも落ちてしまいます。そこで、洗濯物を干したり家着を収納したりするスペースを確保した「洗面洗濯室」の必要性が生まれます。
洗濯機の上部に物干し竿(ざお)を設置すると、洗濯物を一度かごにためることなく干す事ができるので便利です。室内干し以外にも、天気がいい日は「洗面洗濯室」で一度洗濯物をハンガーに掛けてまとめて庭やバルコニーに持っていく、という使い方もできます。
機能性を大事にしたい洗濯機周りは、オシャレは二の次になりがち。そこで、洗面台と洗濯機の間に壁を設け、洗濯スペースでは壁紙を貼り分けるなどの遊び心を入れると、洗濯物を干すのも少し楽しくなります。また、洗面洗濯室の天井部に天窓を設置すると、光もたくさん入った明るい雰囲気の部屋となります。
このように、「洗面洗濯室」を設置し、充実した空間にする事で、家事ストレスが少しでもやわらぐ可能性があります。設置にあたっては綿密な打ち合わせが不可欠ですが、新築やリノベーションなど、家づくりを考えている方はぜひ参考にしてください。
著者プロフィール: タブチキヨシ
日本中にハッピーな家をたくさん建てる事を夢見る住宅のプロ。
Instagramでは2万6,000人(2016年4月時点)のフォロワーがいるカリスマ住宅デザイナー。
attract style・house stageの代表取締役を務めながら可愛すぎずカッコよすぎないデザインを追求し、ワクワクキャーな家を提供している。
インテリアショップ「THE WOW」も経営し、家具販売も手掛けている。
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