連載第2回目は、中古ゴルフショップへ実際に行ってみて、お店の人にアドバイスをいただく。お店のクラブの在庫量に圧倒されずに、"自分の1本"を選び抜くにはどうすればいいのか? その真相に迫ってみた。

アメ横にあるフェスティバルゴルフ上野本店

お店に入ってまず驚くのは在庫量だ。店内のどこを見てもクラブ、クラブ、クラブ。圧倒的な量だ。一体どれくらいの在庫を抱えているのだろう。

「フェスティバルゴルフ上野本店」副店長・横山宗明さん

お店を案内してくれる「フェスティバルゴルフ上野本店」副店長・横山宗明さんは「新品ショップさんに出て商品はほとんどあります」と胸を張る。「このフロアのアイアンセットだけで900セットくらいあると思います。あとは単品もあるので1,500とか1,600本くらいじゃないでしょうか」。

ただ、これだけクラブが多いと自分にあったクラブを選ぶのは至難の業。特に初心者はお店のどこから見ればいいのかわからないのは当然だろう。ゴルフクラブは電化製品と違い、機能性の比較も難しい。一見見ただけでは、なぜ自分が手に取ったクラブのほうが隣のクラブより高いのか安いのか判断はできないはずだ。

ドライバーだけでも見渡す限りの量だ

では、どうするかというとお店のスタッフに話しかけるのが一番。ただ、知識がないまま話しかけるのは勇気がいる……と思いきや、意外とそんなこともないようだ。横山さんによると中古ゴルフショップを訪れるお客さんの多くが、「これが欲しい!」というスタンスではなく「どういうのがいいかな?」という状態で来るという。

「新品ショップさんだと、ある程度商品を絞ってくる人が多いと思うんですよ。例えば"ゼクシオ"のこれ! というように。でも、中古ゴルフショップのお客さんというのは、店員と話をしながらチョイスしていくことが多いんです」(横山さん)。

さらに、話の中で当人がどういうゴルフの付き合い方、どういうクラブを望んでいるのかを尋ねるそうだ。例えば、会社の営業の付き合いでちょっとやるだけだったり、楽してやれればよかったり、うまくなりたいから今より上手になるクラブが欲しいなど。というのも、当人の希望次第で、どういうクラブを購入すべきか違ってくるからだ。また、ドライバーは知り合いの方からもらったものを使っているので、それに合わせたアイアンセットが欲しい……なんていう場合でも、お店のスタッフはどういうクラブが適しているのか的確にアドバイスする。

「意外とおもしろいと思うんですよね。仮にうちの店で買わなくても、だいたいどういったものを買えばいいのかがわかってくると思うので」と横山さん。お店側としても、切り口を与えてくれれば、それに適した商品を提案できるようになる。勇気をもって、と思ったスタッフへの声かけは、実は、ゴルフ仲間とのおしゃべりを楽しむくらいの気持ちで話しかけるのがちょうど良いのだ。

「これからのゴルフライフの方向性」を話すのが良いクラブにたどり着く近道

そうなると、質問する側としてはどういう切り口を用意しておけばいいのだろう。

実際にクラブを手に取り、会話をすることでお客の希望を反映できるという横山さん

「私どもから聞く場合は、いままでやっていらしたスポーツだとか、体格だとか、その辺から聞くようにしています。それによって適切なクラブが変わってきますので、初心者だからどなたでもレギュラーのシャフト、ということではなくて、お話しをうかがいながらちょっと硬めのものや重めのものを提案することもあります。あとは、体格だけじゃなくて、会社の付き合いで週に1回も練習しないでやりたいというのであれば少し軽めのものにしたり、本格的にゴルフが上手くなりたいのでしたら体が回るように重めのものをお薦めしたり。これからのゴルフライフの方向性を聞いて、それに合わせたクラブをチョイスしていますね。」(横山さん)。

つまり、中古ゴルフショップのスタッフは、お抱えの医者やコンシェルジュと何らかわらないのだ。聞かれる前に、自分の「ゴルフライフの方向性」を持ち出しながら、質問すればスタッフもアドバイスしやすく、グッと楽に好みのクラブにたどり着ける。

ただ、読者の中には「話をしたら買わなくては悪い……」という気持ちが強く、そんなに相談できない、という人もいるのではないだろうか。だが、「中古市場」では、そうした懸念は不要だ。

「お話ししているうちに、このお客さんだったらこのクラブが良いんだろうな、とわかってきたときに、うちの店に在庫が無ければ無理にお薦めしません。この辺だったらゴルフショップがいっぱいあるので、あそこに行ったらあるんじゃないですか、と紹介します。そうすることで、そのクラブを売るときうちの店に来てくれるかもしれない。お客さんはまわってくるので」(横山さん)。

第1回でも話したが、中古クラブショップのお客さんは、"買う人"だけでなく"売る人"。無理な薦め、購入はさせない。これこそ、中古市場のよきルールなのだろう。

気になるランク表の見方について

店内を見回したときに気になるのはプライスとランクだろう。AからCまであるランクは一体なにが違うのだろうか。横山さんは、「あまり気にしなくて良いのでは」という。「極端な話、お客さんが気にならなければいいわけですから。店員がB-をつけても、それくらいの傷は自分ですぐつけちゃうからいいや、という場合もありますからね」。

フェスティバルゴルフで統一しているランク表。上はA、AB、B+のランク。Aは新品同様、ABもB+の違いも微々たるものだ

要するに、ランクは傷の多さでつけられているため、見た目を気にする人は参考にすればいいだろう。また、フェスティバルゴルフではCランクが最も傷が多いものになるのだが、クラブを改造したものもCランクとされているそうだ。

同じメーカーのアイアン。左がABで右がB-のランクになっている

上のアイアンのクラブヘッドを比較。写真では違いが分からない?

左が-Bランク、右がABランク。若干-Bランクのほうに傷が確認できるが、この僅かな差をどう捉えるかは、購入者によってさまざま

とはいえ、傷があることでクラブが折れたりする心配や飛距離の影響はないのだろうか。特にシャフトの傷はゴルフのパフォーマンスにも影響があるように感じる。

「カーボンシャフトに関して、機能面でダメだというものは買い取りをお断りしています。中古車だと、ボンネットを開けてどこをチェックする場所が決まっていますが、中古ゴルフクラブに関しては電化製品みたいに難しい機能はついていませんし、良心的なお店ならばおかしなところがあれば必ず表記します。機能面では、それほど心配なさらなくても大丈夫だと思います」(横山さん)。

それを聞いてひと安心。ランク表はあくまで傷の参考としてみて、あとは自分の納得するプライスか照らし合わせて購入すれば良いのだ。

次回は、女性ゴルファー数の増加を反映して、中古ゴルフショップにおける女性用のフロアやクラブの品揃えについてお伝えしよう。

撮影:中村浩二