前回に引き続きご紹介するのは、杉並区「いおぎみんなの学校」。楽しみながら学べる本格的なプログラムを通じて、勉強だけではない、子ども達の人間力を育む場を提供している。

サイエンス実験に挑戦!

プログラムは毎日16時から1時間開催。学校から到着した児童は、まず宿題を終えてから思い思いに遊んで過ごす。その間も「今日のプログラム何だっけ? 」と代わる代わる子どもがスタッフに尋ね、毎日替わるプログラムが待ち遠しい様子がうかがえた。15時のおやつで小腹を満たすと、いよいよプログラムタイム!

取材当日は、立教大学の学生サークルによるサイエンス実験教室が行われた。砂鉄と活性炭、食塩水で使い切りカイロを、尿素と水で保冷剤を作るという。子ども達は学年も学校も異なるが、みんなとても仲が良い。また児童数15名程度に対し、講師2人の他に高橋代表含め学童スタッフが4名と手厚いため、大人がうまくフォローすることで実験もスムーズに進む。

実験を進めると「あったかくなった! 」「あ、冷たい! 」と教室内に子ども達の嬉しそうな声が響く

「本当だ、あったかい! でも、なんで? 」「代わりにこれを入れたらどうなるの? 」

実験中、子ども達はとにかくよく発言する。自分で考え、疑問に思ったら共有する。いつも明確な答えが出る訳ではないけれど、みんなで議論する。考える基礎ができている子どもの自由な発想を大切にし、子ども達がのびのびと過ごしていることに感動を覚えた。実験が終わると、講師がパネルを使い温度が変わるメカニズムを分かりやすく説明。自分の手で起こした不思議現象の仕組みは、1年生でも集中して聞けるから驚きだ。

しかし1日たった1時間のプログラム参加で、どれだけ知識が身に付くのか。実際に子供が同校に通っている保護者に疑問を投げかけると、「そば打ちを習った後、実際に年越しそばを皆に打ってくれた」「ヨガを習ってきた晩は、全部実演してやり方を教えてくれた」などの声が。体と五感をフルに使い楽しみながら覚えたことは、簡単には忘れないようだ。

スタッフの数も多いため、サポート体制も万全

温かく・冷たくなる理論をパネルを使い分かりやすく解説。身近な商品のメカニズムに納得!

社会も、子どもも、親も win-win-winな仕組みづくり

いおぎみんなの学校で大切にしているのが、教えることができる大人と、教えを受けたい子どもの円滑な出会い。鉄棒が苦手な子がいれば、体操のプロを探し鉄棒教室を開催。IT関連企業がCSRで行うネットや携帯電話の安全教室をプログラムに取り入れたり、通りがかりの尺八奏者から「講義をしたい」との申し出を受けてプログラムが実現したりしたこともあるそうだ。

自由時間は、工作をする子の傍らでチャンバラトーナメントも開催。子ども達の間でも、それぞれの自主性が尊重されている

「教えたい・伝えたいと思っている大人達は意外とたくさんいるんです。企業も人も、自分たちの活動を子どもに知ってもらえたら嬉しい。子ども達は、学校では習えないワクワクするような知識が得られ楽しい。子どもが笑顔で充実した時間を過ごせたら、保護者も嬉しい。そんな好循環のお手伝いができたら」と語る高橋代表。来年からは高学年を対象にした中高一貫校受験対策のワークショプを開講予定だが、やはり「考える」「理解する」ことを念頭に、詰め込み式ではなく長期記憶に働きかける知識と学力の育成を目指すという。

学童保育に求めるものは各家庭によって異なるだろうが、やはり一番は「楽しかった! 」という子どもの笑顔だろう。本連載で紹介するような特色のある学童保育が今後も増え、それぞれの子どもに合った放課後時間が見つかることを期待したい。