FXについて勉強すると、「ファンダメンタルズ分析」や「テクニカル分析」という言葉を目にします。いずれもトレードで利益を得るためには大切な要素ですが、どのような分析方法なのでしょうか。

今回は、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の違いや、FXの取引におけるファンダメンタルズ分析の重要性について解説していきます。

為替が動くのはなぜ?

そもそも、なぜ為替は動くのでしょうか。為替レートは、単純に1つの国の金融資産などによって決まるものではなく、2国間の通貨の交換比率によって決定するものです。基本的には、2つの国のうち、より国力の強い通貨が買われますので、一国の経済状態だけでなく交換する通貨の国の経済情勢にも注視する必要があります。

ただし、これは原則的なもの。実際の為替市場の中心はアメリカです。たとえばアメリカの大企業で経営不振のニュースが流れたりすると、日本やヨーロッパの国々の国力に関係なく為替が大きく振り動かされるといったことは珍しくありません。そのため、FXでトレードを行う投資家のほとんどは、米ドルを中心に状況を分析しています。また、たとえトレードで使用する通過ペアに米ドルが含まれていないとしても、交換の際には一度米ドルに換算して交換率を計算しているため、米ドルの動きを無視することはできないのです。

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析

そして、経済動向や政策金利のほかに為替に大きな影響を与えるのが、要人発言や地政学リスクといった要素です。これらの要素が絡み合い、為替レートを上下に大きく動かすことがあります。ファンダメンタルズ分析とは、こうした経済活動の状況を示すさまざまな要因などをもとに分析を行うことを指します。

たとえば、ある国の経済を分析するためには、GDP(国内総生産)や雇用統計、消費者物価指数など多くの指標を用います。こうした経済指標が発表となる時の為替相場は、後述するテクニカル分析だけでは説明のつかない動きをすることがしばしば。そのため、FXに取り組む上では、レートに影響を及ぼすこれらの要素を見逃すことはできないのです。

一方で、テクニカル分析とは、チャートを分析して為替の先行きを予想することです。ファンダメンタルズ分析で大きな方向性は予想できるものの、実際の為替は上下にジグザグと動きながら進んでいきます。そのため、ファンダメンタルズ分析で流れが分かったら、テクニカル分析でタイミングを計りながらトレードするのが賢明と言えるでしょう。どちらか一方が重要ということはなく、両者をバランスよく組み合わせて活用していくことが重要なのです。

相場が動く重要な経済指標や政策金利、要人発言

前述のとおり、ファンダメンタルズ分析でとくに重要なのが、主な経済指標や政策金利の発表、そして要人発言などです。それぞれ、普段では考えられないくらいに相場を大きく動かすものですので、その内容を確認していきましょう。

経済指標

為替相場のチャートを見ていると、ある時突然レートが大きく動きます。そこでニュースを確認してみると、経済指標の発表が行われていたということがあります。経済指標は世界中で毎日のように発表されていますが、その中でも為替に大きな影響を与えるのは、やはりアメリカの経済指標であることがほとんどです。

とくに、原則として毎月第一金曜に発表される雇用統計は、世界中のトレーダーが注目する指標となっています。雇用統計の中でも、非農業部門雇用者数と失業率は重要で、景気の先行きを示しています。このほか、GDPや消費者物価指数、貿易収支なども相場を上下させる原因となります。FXをするなら、大きな経済指標に注視し、影響の大きい経済指標の発表前には、できるだけポジションを調整しておくことが賢明と言えます。

政策金利

政策金利の発表時も、為替が動きやすい時です。政策金利とは、日本なら日本銀行、アメリカはFOMC(連邦公開市場委員会)、EUはECB(欧州中央銀行)が決定している金利のことです。金利が上がれば通貨価値は上昇し、金利が下がれば通貨価値は下落するものですが、政策金利の発表で注視されるのは、「金利が何%になったか」ではなく、「何%から何%になったか」という変化についてです。

また、FOMCやECBの政策金利の発表時には今後の金利の変化についてコメントが出されますが、そこから読み取れるニュアンスに市場が反応して為替が動きます。金利が上がりそう、下がりそうといった判断によって、現在の金利の水準に関わらず通貨が買われたり売られたりすることもあるのです。

要人発言

経済指標や政策金利以外の要素としては、もう1つ要人発言が挙げられます。要人発言とは文字通り、為替を動かすほどの影響力を持つ人による発言のこと。アメリカでは、大統領やFRB(アメリカの連邦準備制度理事会)の議長、EUではECBの総裁などがこれに当てはまる人物です。日本においては、日本銀行の総裁が意外性のある発言をした時に、為替市場が反応することがあります。これらの要人たちがどのような発言をするかを予測することは難しいですが、頭に入れておくと要人発言のニュースがあった時に反応することができるでしょう。

ファンダメンタルズ分析はFXに欠かせないものですので、為替ニュースからの情報収集は常に意識しておきたいものです。チャートによるテクニカル分析と合わせ、それぞれを適切に活用しながら取引のタイミングを見極めていきたいですね。


ファンダメンタルズ分析
経済動向や政策金利、要人発言、地政学リスクなど経済活動の状況を示すさまざまな要因をもとに為替の動きを予測する分析方法

テクニカル分析
チャートを分析して為替の先行きを予想すること


筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。