まいど、"相場の福の神"こと藤本誠之です。この連載では、上場企業の経営者との面談から気づいた、藤本がすごいと思った、ユニークなビジネスモデルの企業をご紹介します。第2回は、「カリスマ店員から、社員インフルエンサーに!」です。
カリスマ店員を活用したマーケティング
女性向けのファッショナブルな衣料を販売するマーケティングには、様々な手法があります。女性誌などに広告を掲載したりテレビCMを放映したりして、ブランドを認知させて購買意欲を高めさせ購入させるのです。多くのブランドは、プロのデザイナーがデザインした衣服を巧みなブランディングによって認知度を高め購入させていました。
しかし、2000年頃からの渋谷109などで販売される「ギャル系」ファッションのマーケティング手法は異なっていました。「カリスマ店員」と呼ばれる自社のブランドの衣服を着たおしゃれでかわいい店員が接客し、衣服を販売するのです。「カリスマ店員」に憧れた女性がこぞってそのブランドの衣服を購入するマーケティング手法です。この手法で大きく伸びたのが、「MOUSSY」「SLY」などギャル系ファッションの人気ブランドを持つバロックジャパンリミテッド (3548 東証1部)です。
「カリスマ店員」が顧客の意見を取り入れながら、自らが「かわいい」と思う商品を企画し、多品種少量生産で販売する手法で大きく成長しました。他人とは違う、自分だけのファッションを求める若い女性が多かったからです。人は違ったファッションを着て、他人と差別化することに意義を感じていたのです。
インスタに強い「社内インフルエンサー」を養成
しかし、リーマンショック以降のデフレ時代に入り、若者が草食化する中では、画一的な「ユニクロ」に代表される大量生産のファストファッションが流行るようになってしまいました。また、人とのリアルなコミュニケーションを好まない若者も増加し、自分のスマートフォン(スマホ)の世界で多くのことを済ましてしまうことが多くなってきました。
女性の場合、食べ物やファッション、旅行などでも、ブランドSNSでの投稿、特にインスタグラムに投稿してたくさんの「いいね」がつくかが重要なポイントとなってきたのです。いわゆる「インスタ映え」のする写真を撮れるかが重要になったのです。
バロックジャパンリミテッドは、時代に対応して自社の「カリスマ店員」に積極的にSNS(インスタグラム)へ投稿することを勧めました。「インスタ映え」する写真を撮影するのに、沖縄などにプロのカメラマンとともにロケーションまで行っています。その結果、自社のブランドを身に着けた「カリスマ店員」のインスタグラムのフォロワー数で数万もいる社員が何人も出てきています。まさに社員インフルエンサーなのです。
その上、インスタグラムの投稿ページから自社製品のネット通販ページにリンクしており、その社員の営業成績になるのです。自分がフォロワー数を増やして見てもらう方を増やし、その結果そのブランドの衣服が売れれば自分の成績になる仕組みです。
今後は、静止画だけでなく動画での展開も予定しており、ますます売れる仕組みづくりとなっています。
インフルエンサー獲得のためのプラットフォームも運営
また、バロックジャパンリミテッドは社員だけでなく、ファッションに関わるインフルエンサーを獲得するスマホアプリのSNS型コンテストプラットフォーム「CAWAMORI(カワモリ)」を7月26日に発表しています。「CAWAMORI(カワモリ)」は、スターを目指す人と求める企業をマッチングするSNS型コンテストプラットフォームです。利用者は各種コンテストへ手軽に参加でき、企業はコンテストを従来よりも少ない手間で実施できます。
中心となる利用者は10代から20代の女性を想定しており、手軽に双方向交流ができるSNSの特性を生かして利用者拡大を目指すとともに、「スターになる」という明確なゴールを設けることで他のSNSアプリとの差別化を図ります。タレント候補の人気度が利用者の投票によるランキング形式で視覚化されるため、ファンからの人気が高いインフルエンサーを獲得できます。
バロックジャパンリミテッドは、インフルエンサーマーケティングに注力し、社員インフルエンサーを含む外部のインフルエンサーも積極的に獲得しています。現在は、自社ブランドの衣服・小物雑貨の販売に限定されていますが、今後が他社のブランド・製品も販売可能な、インフルエンサーマーケティングのプラットフォームとなりそうです。
福の神の「ここがすごい」
インフルエンサーマーケティングに注力。自社ブランドの魅力を伝える社員インフルエンサーを持ち、スマホアプリでも人気が高いインフルエンサーを獲得
バロックジャパンリミテッド (3548)東証1部
■株式データ
株価 1,112円
単元株数 100株
予想PER(連) 9.55倍
実績PBR(連) 2.39倍
予想配当利回り 3.42%
時価総額 約409億円
* 株価データは2017年7月31日終値ベース
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執筆者プロフィール : 藤本誠之
「相場の福の神」と呼ばれるSBI証券客員マーケットアナリスト。 年間200社を超える上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介している。「まいど! 」の挨拶、独特の明るい語り口で人気。日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。ラジオNIKKEIで3本の看板番組を持ち、その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。 日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジストAll About株式ガイド。 著書:『難しいことは嫌いでズボラでも 株で儲け続けるたった1つの方法』(SBクリエイティブ)など合計15冊