入院すると3種類の費用が発生する
突然病気やケガで入院したら、どんな費用がかかるか考えたことがありますか。健康保険でカバーされるものの、入院すると意外にお金がかかります。一般に3種類の費用が発生するといわれています。
1つ目がいわゆる診療費や手術費、投薬代など治療費として病院に払うお金。これは健康保険の対象となり、実際にはその3割が自己負担となります。
2つ目が治療費以外で病院に支払うお金。主だったところでは、入院時の食事代と差額ベッド代があります。食事代は一定額が自己負担となり1食260 円を上限として請求されます。差額ベッド代は個室や2人部屋などに希望して入室した場合に発生。1日5,001円~1万円がかかる例がもっとも多くなっています(※)。そのほか、パジャマやテレビのレンタル代を請求されることもあります。健康保険対象外の自由診療であれば治療費は全額自己負担ですし、厚生労働省が認めた先進医療を受けた場合、技術料を全額自己負担することになり、大きな出費となります。
3つ目が病院以外に払うお金。これも、予想外に費用がかさむもの。家族が病院に通う交通費、入院に必要な衣類や小物の購入、お見舞いに来てくれた人への謝礼、子どもが小さいと託児代などが発生することもありえます。
※中央社会保険医療協議会より
入院に備えるには「医療保険」に加入
実際に入院などに備えるには、どんな保険に加入すればいいのでしょう。
代表的なのが医療保険です。医療保険は基本的には、入院費用に備える「入院保障」と、手術費用に備える「手術保障」から成りたっています。入院保障は入院1日あたり5,000円など給付金額を設定して加入します。手術給付金は入院日額の10倍、20倍、40倍など、手術内容によって給付金が支払われる仕組みのところが多いです。
加入の際は、一生涯保障される「終身型」と、10年など一定期間保障される「定期型」のどちらかを選択することができます。医療保障は高齢になるほど必要なので、できれば終身型を選ぶほうがいいでしょう。
病気の中でもがんだけに備える保険が、がん保険です。これについては次回紹介します。
貯蓄のない人ほど医療保障が必要
既に医療保険に加入している人もいると思いますが、実際、どんな人が加入や見直しを考えるといいのでしょうか?
意外と多いのが死亡保障に特約としてつけている人。この場合、死亡保障が60歳までだと、その時点で医療特約の保障も終わってしまい、医療保障が一番必要な60歳以降の時期に無保険になってしまうことも。終身型の医療保険への加入を検討すべきでしょう。
終身の医療保険には加入しているけれど、90年代など以前に加入したという人も要注意。入院しても4日間までの入院は給付されない「5日型」や8日以上入院しないと給付されない「8日型」の可能性が高いからです。できれば、日帰り入院&手術でも給付対象となる最新型への見直しがベターです。
もちろん、現在何の医療保険にも加入していないという独身者や専業主婦なども、死亡保障はともかく、一定の医療保障は準備しておくべきです。まとまった貯蓄がある人なら、当面の医療費はまかなえるかもしれませんが、貯蓄のない人ほど、医療保険には加入しておくべきでしょう。自営業など自分が働けなくなると即、収入減などに見舞われる人は、入院日額1万円など高めに加入する必要があります。
医療保険は「終身型」と「定期型」から選択
病気やケガでの入院費などをカバーできる医療保険は、一生涯保障が続く「終身型」が主流となっています。しかし、とりあえず医療保険に加入し、ライフステージが変わった時点で見直したい、今は貯蓄を優先したいので保険料を割安に抑えたいという人なら、定期型に加入するのもひとつの考え方です。
現在、入院給付については、入院が1日(日帰り入院)でも給付金が支払われる「1日型」が主流となっています。1入院での支払い限度日数は60日が主流。これは入院の短期化が進み、ほとんどの病気が60日以内でカバーできるからです。
入院日数が短期化するなか、1日あたりの入院費は上がる傾向にあります。そのため、1日あたりの入院給付金が1万円を基本型としている医療保険も増えています。給付金は一般的に、5,000円、7,000円など1,000円単位で設定できます。
手術については約款の規定により入院日額の10倍、20倍、40倍を支払うパターンが一般的でした。しかし、カバーされない手術も多くわかりにくかったことから、公的健康保険と適用範囲を揃え、給付金も一本化するタイプも増えています。
健康保険でカバーされない先進医療の技術料をカバーできる特約をつけられる保険が増えてきましたが、中には基本保障に含まれているタイプもあります。また、かかった自己負担分をすべて補償する実費補償型も、損保系医療保険で多くなっています。入院中の諸費用の実費を100万円まで補償するタイプや、ホームヘルパーの雇入補償が得られるものなど、その内容も幅広いです。ただ、実費補償型は保険期間が10年などの定期型が多いので、ライフステージに合わせて加入を検討するような利用の仕方がいいでしょう。
監修 :
家計の見直し相談センター代表取締役。
ファイナンシャルプランナー 藤川太さん
「サラリーマンは2度破産する」(朝日新聞出版)はベストセラーに。貯蓄、投資、保険、家計管理と幅広いアドバイスとその鋭い指摘にファンは多い。
(経済ジャーナリスト 酒井富士子)