家庭における父親のつらさをやわらげるには?

4回目は、家庭における現代の父親のつらさをやわらげる方法についてお伝えします。

男性の本音の受付先がない

子どもがうまれた後に妻が怖く感じるようになったという男性の声を聞くことがあります。なぜそうなってしまうのでしょうか。僕は、男性が夫婦関係の変化についていけていないから「怖い」と感じてしまうのではないかと考えています。

子どもができると、夫婦の関係に、新しく母と父としての役割が加わります。妻が懸命に子育てに取り組んでいると、夫は「相手にしてもらえない」と疎外感を抱いてしまいがちです。人が注げる愛情の量は一定であるということを、男性は理解する必要があるでしょう。妻が冷たいと感じるならば、自分も子育てに積極的に関わりましょう。妻の愛情の容量に余裕が生まれ、きっと夫の寂しい気持ちも理解してくれるようになります。

ただ、多くの男性が出産後に妻が冷たくなったという感想を抱いているにも関わらず、そうした声を誰も受けとめられるような環境がないとしたら、それは問題だと思います。妊娠・出産を経験する女性の方が大変なのは当然ですが、精神的にも肉体的にも追い込まれている妻と接する夫にもそれなりの苦労があるはずです。父親には父親なりの大変さがあることを、もっと知ってほしいと思います。

「男性は仕事が本業だ」と認識されているので、「育児と仕事を両立することに葛藤がある」という社会的な認識すら薄いです。これは自分が子育てしながら働いていて、実感として感じています。男性が育児に無関心で、ただ働いていればよかった時代にはありえない葛藤ですよね。現代の父親たちが抱える悩みは、家事や育児に意欲があるからこそのものなのです。

パパ友の存在も重要

父親のつらさを解消する方法として、パパ友作りをお薦めします。僕の知り合いは保育園でパパ友を作ったそうです。30歳、35歳、40歳と年齢はバラバラですが、子育ての悩みを共有して、近所でお酒を飲んだりして愚痴を言い合っているとのこと。女性で言うと「ママ友とランチを食べに行く」みたない時間がパパ友にも必要だと感じます。

「週末にはサンドイッチを作って家族全員でピクニック」といったイメージに振り回されるのではなく、時にはベビーシッターや親の力を借りて、夫婦でゆっくり過ごす時間を持つことも大切だと思います。夫婦が2人だけで子育てをするのは大変すぎるからです。

「べき論」にとらわれていることを認識しよう

「父親はこういうものだ」「母親はこういうものだ」という「べき論」は、社会の中に定着したイメージとしてあるので当たり前になってしまっています。そのため、べき論を振りかざして命令したり、自分がべき論を語っていたりすることすら、実は自分自身で認識できていないことが多いのです。

夜泣きにしても、子どもによって何度も夜中に起きたり、朝まで起きなかったりと、個性がありますよね。パートナーや子どもの個性によって、子育てにおける父親の役割はかなり違うと思います。こうあるべきと考える家庭と、目の前の家庭がずれているときに、こうあるべきというイメージの方に無理やり寄せるのではなく、目の前にある現実の家庭をどうするか考えていけたらいいですね。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

著者プロフィール

田中俊之
武蔵大学社会学部助教。社会学・男性学を主な研究分野とし、男性がゆえの生きづらさについてメディア等で発信している。自身も0歳児の子どもを持つ育児中のパパ。単著に『男性学の新展』『男がつらいよ』『男が働かない、いいじゃないか! 』、共著に「不自由な男たち その生きづらさは、どこから来るのか」などがある。