「人生100年時代」と言われる今、20代からの資産形成は待ったなし。とはいえ「投資の目利き力、どうやって磨く?」と悩む人も多いはず。本連載では、20代から仮想通貨や海外不動産に挑戦し、いまはバリ島でデベロッパー事業、日本では経営戦略アドバイザーも務める中島宏明氏が、投資・資産運用の知識や体験談、そして業界の注目トピックを紹介します。
今回は、機械式(立体)駐車場のメンテナンス・部品交換・緊急対応を全国展開するpmiテック株式会社の代表取締役・古木倫太郎氏に、サブリースや技術者育成についてお話を伺いました。
■「下請け任せ」な業界慣行を変えたい
――まずは、pmiテックさんの事業全体像から教えてください。
古木倫太郎氏:私たちはマンションの機械式(立体)駐車場に特化し、メンテナンスや部品交換、緊急対応をワンストップで担っています。約2,000の管理組合様と契約し、年間15万パレット超を点検しています。メーカー系列ではなく独立系だからこそ、メーカー横断の知見を蓄積し、24時間365日での駆けつけを自社技術者で完結できることが特徴です。
拠点は埼玉から九州、四国、山陽エリアまで広がり、案件に応じて広域をカバーします。2024年12月期の売上は17.9億円、従業員は約100名です。おかげさまで、右肩上がりで成長しています。管理戸数や台数の大小にかかわらず、お客様の意思決定に寄り添い、出来る限り低コストでストレスの少ない運用を標準品質として設計している点が評価いただいています。
――業界構造の課題としては、どのようなことがあるのでしょうか?
古木氏:新築時にメーカーが装置を低価格で納め、保守を自社指定にする慣行があります。しかし実際は地元協力会社に下請け発注され、発注元が誰であっても現場品質が同じ、という構図が長年続いてきました。私たちは、そこを変えたいと思っています。
メンテナンスから緊急対応までワンストップで対応し、一体で動く仕組みによって、過剰な部品交換を避け、必要なときに必要な作業を適正価格で実行します。メーカーをまたぐ汎用部材の知見がありますから、寿命評価も客観的に行えますし、停止時の原因解析力を高めることができます。仕様書に頼れない場面でも、蓄積したデータと経験則で最短の復旧筋を描き、居住者の入出庫ストレスを最小化します。
マンションの管理組合様にとって重要なのは、「年間の維持費総額」と「稼働率」です。私たちはその2つに直結するご提案しかしません。日々の小さな故障兆候を拾い上げて未然防止につなげる予防保全も行い、将来の大規模改修の山谷を滑らかにする計画立案まで伴走します。
■pmiサブリースplus(プラス)で空き区画を「収益化+メンテナンス費をゼロ化」
――高齢化が進んで立体駐車場の未利用区画が増えているようですが、そんな課題に対する解決策として、新しくサブリースを始められるそうですね。
古木氏:「pmiサブリースplus(プラス)」は、空き区画の借り上げとメンテナンスを当社が一体で受け持つ仕組みです。一般のサブリース会社はサブリースのみで、メンテナンス対応はしてくれません。そのため、メンテナンスは別途費用がかかります。私たちは本業の収益で十分回っているため、サブリースをご契約いただければメンテナンスを無償化します。地域相場を踏まえた借り上げ条件を提示し、収益の最大化を図ります。メーカーから独立系へ管理切替をためらう心理的なハードルを下げ、当社の運用を体感いただきたいと思っています。
――サブリースというとアパートやマンションなどの不動産投資のイメージしかありませんでしたが、立体駐車場でもあるんですね。高齢化で立体駐車場の利用者が減っていることを考えると、数台分空いていればそこをなんとか収益化したいと考えるのは当然ですね。
古木氏:たとえば20台構成で常時4~5台空いている立体駐車場なら、当社が空き区画を借上げ、同区画のメンテナンス費はゼロにできます。全体管理を当社に一本化いただければ、部品交換や改修提案も適正化され、中長期の維持費を圧縮できます。また将来的には、空き区画のトランクルーム設置による収益化など、安全基準と管理規約の整合もセットで検討し、現実解を提示したいと思っています。
■「人柄採用×定着率93%」で技術を継承
――技術者の採用や育成が事業の肝になりそうですが、どのような工夫をされていますか?
古木氏:競争力の源泉は、やはり人です。採用は学歴・経歴よりも「人柄」や「素直さ」「真面目さ」を重視し、支店ごとにカルチャーフィットする方をスカウト、採用します。選考はカジュアルな1on1から始めて、現場の良い点・厳しい点を包み隠さず伝えることで入社後のギャップを減らしています。
専門の部署が毎日1名ペースで面談し、合否よりもまずは相互理解を優先します。人材の定着率は93%と高く、新入社員のみんなにも満足いただけている証かなと感じますね。覚えることが多い現場だからこそ「困ったら手を差し伸べる」文化が根づき、若い頃に苦労した上司ほど部下に同じ思いをさせたくいという気持ちを持ってくれています。こうした土壌が現場の経験値を積み上げ、サービス品質を支えてくれています。
将来的には、現在の約100名から300名体制へ成長していきたいと思います。ただし量的拡大ではなく、文化と技術の継承を前提にした成長でなければ意味がありません。
■eラーニング+合宿+現場OJTで学びを仕組みに
――教育の仕組みは、どのように整えていますか?
古木氏:マニュアル整備を進めつつ、昨今のコンプライアンスなど、リカレント教育をeラーニングで提供しています。入社半年以内でWeb研修や2泊3日の対面研修で安全・品質など業務の基礎を固め、同期・先輩という“社内で何でも相談できる人”をつくるように伝えています。その後はOJTで現場力を磨いてもらいます。
私自身、5~6人単位の少人数慰労会を継続していて、悩みや希望を直接聞くことで、現場の気づきを仕組みに反映していくようにしています。経営方針が浸透しているかなど、現場のみんなから生の声を聞くことが大切です。最初は思い付きで始めたのですが、「自分がやってもらったらうれしいこと」をみんなに対してしている感覚ですね。300名体制が実現すると、「日々が慰労会」という状態になりそうです。今後も、現場の声を活かしながら、業界の新しいサービスや常識をつくっていきたいと思います。

