「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

生活費のうち、定額、もしくはほぼ定額の金額を毎月支払わなければならない費用を「固定費」と呼びます。例えば、賃貸住宅であれば家賃や共益費は、毎月定額の支払いが必要となるので、固定費となります。また、電気代、ガス代、水道代は、季節によって多少の変動はありますが、ほぼ定額の支払いが発生するので、固定費となります。今回は、その固定費の1つである「電気代」に着目してみようと思います。

2016(平成28)年4月1日より、電気の小売業への参入が全面自由化され、一般家庭やお店等も含むすべての消費者が、電力会社や料金プランを自由に選択できるようになりました。とはいえ、自由化当初は、複数の選択肢のなかから電力会社を選べる世帯は少なかったのではないでしょうか。2023年11月現在においては、多くの電力会社および様々な料金プランを選ぶことができます。

そこで、今回は、電気代において、電力会社の料金プランによってどのような違いがあるのか、具体的に計算してみようと思います。

仮定

仮定として、1人暮らしで、東京と地方のどちらの場合でも、電力使用量は、1カ月あたり190kWhとします。また、契約アンペアは30A(3kVA)とします。今回はオール電化の場合を除き、電気とガスを使用する単身世帯での「電気代」を見ていきます。

一般的な電気料金の計算方法は、契約の大きさによって決められる「基本料金」と、使用電力量によって計算される「電力量料金」の合計に、再生可能エネルギー発電促進賦課金を加算したものとなります。また、「電力量料金」は、燃料費の変動に応じて、「燃料費等調整額」を加算または差し引いて計算します。

【1】基本料金
【2】電力量料金
「電力量料金単価×使用量」±「燃料費調整単価×使用量」
【3】再生可能エネルギー発電促進賦課金
「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×使用量」
【1】+【2】+【3】=電気使用者が支払う金額(月額)となります。

東京電力供給エリア内

使用電力会社:東京電力
料金プラン:従量電灯B、2023年11月分
【1】基本料金(30A):885.72円

【2】電力量料金
「電力量料金単価×使用量」
30円×120kWh=3,600円
36.60円×(190kWh-120kWh)=2,562円
「燃料費調整単価×使用量」
-9.47円×190kWh=-1,799.3円
合計:3,600円+2,562円-1,799.3円=4,362.7円

【3】再生可能エネルギー発電促進賦課金
1.40円×190kWh=266円

【1】+【2】+【3】=885.72円+4,362.7円+266円=月額5,514円(円未満切捨て)
参照:電気料金の計算方法(東京電力エナジーパートナー)

中国電力供給エリア内

使用電力会社:中国電力
料金プラン:従量電灯A、2023年11月分

【1】基本料金(30A):712.62円(最初の15kWhまで)

【2】電力量料金
「電力量料金単価×使用量」
32.83円×105kWh=3,447.15円
39.51円×70kWh=2,765.70円
「燃料費調整単価×使用量」
-158.67円(最初の15kWhまで)
-10.57円×175kWh=-1,849.75円
合計:3,447.15円+2,765.70円-158.67円-1,849.75円=4,204.43円

【3】再生可能エネルギー発電促進賦課金
21.00円(最初の15kWhまで)
1.40円×175kWh=245円
21円+245円=266円

【1】+【2】+【3】=712.62+4,204.43円+266円=月額5,183円(円未満切捨て)
参照:電気料金計算サービス(中国電力)

auでんき・関西エリア

使用電力会社:関西電力
料金プラン:でんきM、2023年11月分

【1】基本料金(30A):433.40円(最初の15kWhまで)

【2】電力量料金
「電力量料金単価×使用量」
20.30円×(120kWh-15kWh)=2,131.5円
25.70円×70kWh=1,799円
「燃料費調整単価×使用量」
-3.5円×190kWh=-665円
合計2,131.5円+1,799円-665円=3,265.5円

【3】再生可能エネルギー発電促進賦課金
21.00円(最初の15kWhまで)
1.40円×175kWh=245円
21円+245円=266円

【1】+【2】+【3】=433.40円+3,265.5円+266円=月額3,964円(円未満切捨て)
参照:auでんき料金表

結果

今回は、3つの電力会社の1カ月あたりの電気代を計算してみました。今回計算した料金プラン以外にも、様々な料金プランがありますので、一概には言えませんが、以前からある大手電力会社よりも、電力自由化で新しく電力販売事業に参入してきた電力会社のほうが、電気代が安くなる可能性が高いようです。ただし、電気代の安さに注目するだけでなく、契約解除時に解約手数料等の費用が発生しないか、停電等の緊急時に24時間体制での連絡窓口があるのかなどのサービス面も確認しましょう。