コロナに関係なく大規模リストラ元年だった2020年

2020年の転職市場を総括するなら「リストラ」。三菱UFJ銀行をはじめ、デジタルシフトを視野に入れて大企業を中心に始まった「黒字リストラ」に始まり、コロナ禍による緊急事態宣言を受け、全世界規模のロックダウンで経済がストップ。現在は第三波の真っただ中で、終わりを見せない状況です。

  • コロナ禍によるリストラの予兆

赤字リストラが始まる

当然、雇用状況も悪化します。厚生労働省がハローワークなどを通じて行った調査によると、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人は、見込みも含めて7万8,000人余。全国のハローワークで把握できた数なので実際は、さらに多いとみられています。

当然、求人数も激減。厚生労働省が2020年12月1日に発表した「一般職業紹介状況」をみてみましょう。コロナ禍以降求人数が急降下し続け、求職者はどんどん増加しています。

  • 求人、求職及び求人倍率の推移 出典:厚生労働省

昨年の有効求人倍率は約1.6倍。求人者一人に対し、求人数が大きく上回っていましたが、今年の10月は1.04倍(季節調整値)と限りなく1に近づいていますが、当然下げ止まりではありません。「赤字リストラ」がこれから本格的に始まるからです。

3月末退職のリストラが加速する

コロナ禍の影響が出るスピードは業界により異なります。宿泊業、飲食業はすぐに影響し、会社や自宅の最寄り駅の飲食店が閉店するなど、身近に感じることでしょう。さまざまな雇用統計が発表され、「うちの業界は雇用統計からみると比較的安全だ」と安心できる人ごく一部。ただ業界全部が一瞬で吹き飛ぶわけではありません。

リストラの指標となるのは、各社の業績です。4月期初の会社であれば、9月の中間決算の結果が多いに影響します。なぜなら、企業は2期連続の赤字は避けたいからです。

売り上げが上がる見通しが出せないなら、固定費を下げて黒字を狙います。赤字で特別損失を出すなら、コロナの影響を受けた今期中で固定費削減を終える判断をします。固定費削減には当然人件費も含まれます。2年先までを想定し、大規模なリストラもやむをえない状況です。

既にリストラを発表した会社もありますが、本番はこれからです。9月の中間決算の結果を踏まえ、事業譲渡、撤退など、プランがまとまるまで時間がかるため、冬のボーナスが出たこれからがタイミングなのです。

外資系企業の多くは1月に新しい期がスタートするので、ポジションオフということで、椅子がなくなったので社内異動(ジョブ型なので、社内異動でも面接して合格しないと異動はできない)か、3月末まで席は用意されて退職金の積み増し等のパッケージを提示されるかの、二つに一つの選択が迫られ、12月中に結論は出ています。

大規模なリストラが始まる予兆

事業譲渡・撤退しない場合、実は毎年恒例の行事なのでメディアに報じられていませんが、今年は大規模に判断する企業が多く、リストラが始まる予兆は幾つかあります。

具体的な兆しを挙げると、「中途・新卒の採用凍結(補充なし)」「残業代や経費の抑制・カット」「優秀な人材の相次ぐ退職」「監査の時期でないのに監査法人が来て会議室に籠る(リストラ計画策定)」「突然の役員交代(体制変更に合わせてリストラ)」「業界トップ企業のリストラ実施」などがあります。

特に注意すべきは、業界トップ企業のリストラです。日本コカ・コーラが缶ジュースを値上げしたら、他の飲料メーカーも追従するように、リストラも同じ傾向があります。春闘も業界トップが妥結した内容をもとに、他の企業も追随するのと同様です。

では、コロナ禍でも利益をあげている企業がないかというと当然あります。ただ、残念ながら、雇用の受け皿になるような業界はここだ! という安全地帯はないというのが今年の実情でした。