価格が1,000円近い高級缶詰の中にも「ファンに支持され売れ続けている缶詰がある」と、缶詰博士の黒川氏は言います。
「木の屋石巻水産の牛たん缶がその好例。2020年に発売されたデミグラスソース煮込みは、税込900円という価格でも人気が途切れない名作なんです」
その名作缶詰にニューバージョンが加わったとか。今回はそのレポートです。
粗挽きスパイスがポイント
全国の美味を厳選して販売する「日本百貨店・食品館」。日本初の缶詰専門店「カンダフル」。この2店でコンスタントに売れているのが木の屋石巻水産の「牛たんデミグラスソース煮込み」であります。
金文字&エンボス加工のパッケージが美しく、パサつきがちな牛たんをしっとり仕上げた手法がお見事。その開発には5年(!)も掛けたそうな。
この10月には、新しい味付けの「牛たん粗挽きスパイスカレー煮込み」が加わった。ただのカレーではなく“粗挽きスパイス”と銘打っているところがポイントだろう。さてどんな味か?
豊かなスパイス類の香り
缶詰を湯せんで温めてから開缶! 今日の室温は22度なので、常温のままで開けても油脂が固まっているはずである。それでは味も香りも"閉じた"状態なので、温めることで"開いた"ほうが絶対においしい。
で、温まった状態の缶から立ち昇るのは、豊かなスパイス類の香りだ。とくに印象に残るのはクローブであります。
牛たん料理の本丸
牛たんを取り出してみると、サイズはひと口大で厚みがある。表面のシワの間を脂分がキラキラ輝きながら流れており、こうして眺めただけで「しっとり食感だろうなー」と思えてくる。
木の屋は宮城県にある企業であり、宮城県といえば牛たん料理の本丸であります。ゆえに、牛たん缶を出すからには「そこそこウマい」くらいじゃいけない。「すっげえウマい」くらいのものを目指さないと、宮城県民が許さないだろう。
そのプレッシャーはいかほどか! ご苦労お察しいたします。
マイルドながらスパイスの香り立つ
かくのごとし。ターメリックライスとともにいただくことにする。
牛たんは噛んだ瞬間、軽い弾力がある。歯が入るとねっとりとした歯触りがあり、その後は繊維状にほぐれていく。ボソボソ感はナッシング。
噛んでから飲み込むまでの間、牛たんのうまみがずっと口中にとどまっているのが嬉しい。うまみが抜けていないのだ。
カレーの辛さはマイルドながら、スパイスの香りはキリッと立っている。塩味は穏やかで、トータルでは尖った部分がない落ち着いた味だ。もしパンチが欲しかったら、レモン汁を掛けるのが効果的であります。
缶詰情報
木の屋石巻水産/牛たん粗挽きスパイスカレー煮込み 170g 900円
同社直販サイトや一部の食品店で入手可