日本橋室町三井タワーをはじめとして、日本橋エリアに数多くのビル・テナントを持つ三井不動産。なかでも最新の建物として、国内最大・最高層のハイブリッド木造建築による賃貸オフィスビル「日本橋本町三井ビルディング &forest」が、2027年1月の竣工を目指して建設工事中である。このほど、同グループの環境施策「"終わらない森"創り」をPRするイベント「EMA WISH PROJECT ~森とまちを願いでつなぐ~」が報道陣へ公開された。

  • 左より、ギネス世界記録™公式認定員 藤渕文香さん、三井不動産 取締役 海藤明子さん、なかやまきんに君さん、アンジェリーナ1/3さん

    左より、ギネス世界記録™公式認定員 藤渕文香さん、三井不動産 取締役 海藤明子さん、なかやまきんに君さん、アンジェリーナ1/3さん

名称のEMA(エマ)とは、神社やお寺に奉納されるあの「絵馬」のこと。日本橋エリアに数多くの特製絵馬を並べ、その長さでギネス世界記録を目指すイベントだ。

三井不動産グループの森づくりを象徴する「木造ビル」と「絵馬」

日本の国土面積は約7割は森林で、うち約4割が人手による管理の必要な人工林である。その多くが国産材の需要低下や「林業離れ」のため、放置され荒廃しつつあるのが現状だ。こうした状況を是正してCO2削減や生態系保全に貢献すべく、三井不動産グループの「"終わらない森"創り」では、森を「植える・(森林を手入れして)育てる・(建築資材などに)使う」の持続可能サイクルを広める活動を行っている。

  • 会場に展示されていた日本橋本町三井ビルディング &forestの模型

    会場に展示されていた日本橋本町三井ビルディング &forestの模型

こうした理念のもと建設されているのが、日本橋本町三井ビルディング &forestである。このビルは「日本橋に森をつくる」というコンセプトで、グループ保有林産を含む国産木材約1,100㎥を構造材や内装・仕上げ材に使用し、一般的な鉄骨造ビルと比べて約30%の建設時排出CO2を削減。さらにエントランスやオフィスの木質化、ビル周辺や屋上の緑化などで、ビルが林立する日本橋に森と木の安らげる空間を創出する計画だ。

  • 「日本橋本町三井ビルディング &forest」完成イメージ

    「日本橋本町三井ビルディング &forest」完成イメージ

ビルの高さは地上18階の84m。これに合わせてEMA WISH PROJECTでは、700枚、全長約84mの絵馬を並べることを目標とする。絵馬の材料となる木材は北海道のグループ保有林から産出されたものであり、裏面には旭川市立永山南小学校の生徒が描いた木のイラストが施されている。木材産出地域の方々やイラストを描いた小学生達など、多くの人々のつながりや願いの込められている。

  • EMA WISH PROJECTの大きな絵馬

    EMA WISH PROJECTの大きな絵馬

日本橋の地下に「ギネス記録」の絵馬が並ぶ

日本橋の地下歩道イベントスペースに木柵で特設会場が設置され、その周囲を絵馬がぐるりと囲む。絵馬の枚数は698枚で、ここにイベント登壇者が2枚の絵馬をプラスし700枚となったところで、ギネス認定を受けるという流れだ。

  • 小学生のイラストが描かれた柵

    小学生のイラストが描かれた柵

絵馬には三井不動産のCMに出演する女優・広瀬すずさんをはじめ、スポーツ界のアスリート達、永山南小学校の生徒、ほか一般参加者から関係者までが様々な願いを書き込んでいた。多くの人が家族の幸せや健康、チャレンジの成功などを願う一方、「世界平和」という絵馬も多く見かけられたのは、ウクライナや中東の情勢が逼迫する現在の世相ゆえだろうか。

  • 絵馬のとこどころに「世界平和」の文字も見える

    絵馬のとこどころに「世界平和」の文字も見える

ギネス世界記録の認定式では公式認定員・藤渕文香さんが厳正なチェックを実施。「特製絵馬のみ使用」「絵馬同士の間に隙間や重なりがないこと」などルール説明ののち、海藤取締役となかやまきんに君さんが絵馬を吊るし、前回記録の623枚を上回って見事ギネス記録認定となった。

  • 絵馬を吊るす前に書いたばかりの願いを見せるなかやまきんに君さん

    絵馬を吊るす前に書いたばかりの願いを見せるなかやまきんに君さん

トークセッションでは、お笑いタレント・なかやまきんに君さんと、ラジオパーソナリティ・アンジェリーナ1/3さんが、小学校の子供達と一緒に絵馬へ願い事を書き込んだ感動や森づくりへの思いが語られた。

ハイブリッド木造ビルは最新技術で耐久性と安らぎを実現

その後は日本橋本町三井ビルディング &forestの建設現場へ移動し、8階オフィスフロアを見学。フロア内は工事中のため機材や材料が並び、まだ殺風景な雰囲気ながら、柱部分には木の材料が既に露出している。触ってみると木材特有のザラリとした質感があり、普通の壁紙やプリントされた木目にはない温かみをまとっていた。

  • 建設中の「日本橋本町三井ビルディング &forest」

    建設中の「日本橋本町三井ビルディング &forest」

フロア内には構造材の断面縮小模型も展示されていた。日本橋本町三井ビルディング &forestで使用されるのは単なる木材ではなく、耐火集成材「燃エンウッド」やCLT(Cross Laminated Timber:繊維方向の違う板を積層させて耐久性を高めた木質材料)による制震壁・耐震壁などを採用し、火災や地震への高耐久性を実現。燃エンウッドは下層階が3時間耐火、中層階が2時間耐火、上層階が1時間耐火となっており、下の方ほど太く頑強になる構成だ。

  • オフィスの柱と梁に木質部が見える

    オフィスの柱と梁に木質部が見える

模型を持たせてもらうと、鉄板やコンクリート程ではないが、通常の木材とも明らかに違うズッシリした重みが手に加わった。断面は木材とモルタルを組み合わせた構造となっており、このモルタルの厚みが、そのまま柱全体の耐火時間と比例する。さらに外装が燃えてもモルタルから水分が放出され、それが気化することで温度を下げ、さらに耐久性と耐火性能を高める仕組みだ。

  • 燃エンウッドの断面縮小模型

    燃エンウッドの断面縮小模型

工事中のフロアは現在こそ荒涼としているが、完成時には「人は自然とのつながりを求めている」との前提で設計する「バイオフィリックデザイン」に基づき、ナチュラル&ストレスフリーなオフィス空間になるという。ほかにもライフサイエンス企業が利用できる都心型ラボの設置、屋上での水耕栽培とオーガニック農法の実施、軽量で湾曲可能なペロブスカイト太陽電池の実証実験など、同グループにとって重要な試みが数多く行われる予定だ。

  • 3時間耐火仕様の縮小模型。木材の中にモルタル(灰色部分)が組み合わさっている

    3時間耐火仕様の縮小模型。木材の中にモルタル(灰色部分)が組み合わさっている

そもそも日本人は住居や道具の材料としても、あるいは絵馬や仏像のような信心の対象としても、歴史的・文化的に木と密接に関わり続けてきた。同グループの絵馬を使ったアクションは一見ユニークながら、実は日本人の気質や「木の記憶」と深く結びついたものと言えそうだ。