
昨季31セーブをマークして最多セーブ投手賞に輝いた平良海馬が先発転向したことで空いたクローザーのポジションに、ドラフト2位ルーキーが抜擢された。岩城颯空はチームから任された重要な役割をどのように捉え、どんな思いでマウンドに上がるのか。22歳のルーキー左腕に、開幕直後の心境を聞いた。(取材・文:灰原万由)【取材日:4月11日】
プロフィール:岩城颯空
富山商高から中央大学に進み、2025年のドラフト2位で埼玉西武ライオンズに入団した。最速152kmの力強い直球を武器に相手打者をねじ伏せる左腕。オープン戦では6試合に投げ、6回を無安打という素晴らしい成績を残して開幕一軍を勝ち取った。
開幕から任されたクローザー
西武のドラフト2位ルーキー・岩城颯空投手が、開幕からブルペンで重要な役割を担っている。
ここまで8試合に登板して1ホールド6セーブ(4月22日現在)。3月31日のオリックス・バファローズ戦では、プロ初登板で初セーブも記録した。
接戦の終盤を任される中で着実に結果を積み重ね、首脳陣の信頼をつかみつつある。
勝敗を左右する場面でマウンドに上がる中で、左腕がまず意識するのは、リードを守り抜くことだ。もちろん失点せず、1イニングを3人で締めるのが理想。ただ、打たれてはいけないと必要以上に自分を追い込みすぎると、かえって力みにつながることもある。
「絶対に逆転されないぞ」と腹を決めながら、「1点でも多くリードを守って、ゲームセットできればいい」という意識でマウンドに上がる。そうした気持ちの置き方が、落ち着きにもつながっている。
その感覚は、プロ初登板で初セーブを挙げた一戦にも表れていた。3月31日のホーム開幕戦、最終回に岩城の名前がコールされた。打線が勝ち越しに成功した直後だったこともあり、「球場の雰囲気がすごいなと。落ち着かない感じがあった」。
ただ、マウンドへ向かう中で気持ちは徐々に整っていった。「自分を落ち着かせることができたので、自分の投球ができたかなと思う」。
安打と四球で二死一、二塁のピンチを招いたが、最後は3番・西川龍馬の外角へ151キロ直球を、古賀が構えたところへズバリ。
見逃し三振で締めくくると、ゲームセットの瞬間には小さくガッツポーズし、雄叫びを上げた。
史上7人目となるプロ初登板初セーブは、岩城にとっても特別な一歩になった。試合後のお立ち台では、自らの投球を「100点」と評価。
家族や友人から祝福のメッセージをもらったほか、中央大の清水達也監督からも「よかったぞ、頑張れよ」と連絡をもらった。周囲から寄せられた言葉に、「嬉しかったですし、安心しました」と安堵した。
憧れの投手「僕もあんなストレートが投げたい」
打者と対峙した時、まず軸になるのは真っすぐだ。岩城自身も、最速152キロの直球を最大の持ち味と捉えており、プロの打者相手にもまずはそこを土台に勝負している。
憧れの投手はカブスの今永昇太。力強いストレートに理想のイメージを重ねながら、「僕もあんなストレートが投げたいと思っていて、参考にしたりとかしてます」と思い描く。
一方で、「もっと自信を持って投げられるような変化球だったり、変化球の精度はもっと磨かなきゃいけない」と課題も口にする。
持ち球はスライダー、カーブ、フォークで、「スライダーの投げる精度や、フォークに関しては落差、投げミスがないようにしていきたい」と、細部にも目を向ける。
大学4年間は、持ち味の真っすぐを磨く時間でもあった。大学に入った時点で、「野球を仕事にしたい」という思いはあったが、2年秋にリーグ戦でリリーフとしてマウンドに上がった経験を経て、プロは目指すべき場所としてよりはっきりしていった。
以降は体づくりにも本腰を入れ、ウェートトレーニングや体幹強化を継続。その積み重ねが、入学時に140キロ前後だった球速を最速152キロまで押し上げた。
大学時代もチーム全体を見た起用の中でリリーフに回ることが多かった。先発して勝ちたい思いや、長いイニングを投げて勝ち切るエースへの憧れは今もあるが、後ろを任された経験は現在の役割にもつながっている。
「今はリリーフという役割をいただいたので、今自分のやるべきことを、やれることを全うしたい」と、一軍のマウンドで求められる仕事に徹する構えだ。
西武の守護神は「弱気なタイプ」
[caption id="attachment_261032" align="aligncenter" width="2560"] 写真:編集部[/caption]
勝負どころを任される左腕だけに、気持ちの強さがあると思いきや、「弱気なタイプです」と自己分析。一軍キャンプスタートが決まった際は、本人の性格を知る家族からも気遣う言葉があり、自身も「不安も結構持っているタイプ」と認める。
それでも「うまく、練習や試合で自分のやるべきことはできたのかなと思います」。不安を抱えるからこそ入念に準備を重ね、結果につなげてきた。
試合後の切り替え方にも、その性格は表れている。「あまり良くなかった試合の後は結構モヤモヤしてしまう」と当日は反省や悔しさが頭に残る。
ただ、大学時代は連戦が多く、気持ちを引きずる間もなく次の試合がやってきたため、「寝て起きたら、もうやってやるぞと気持ちが切り替わっていた」。その習慣は試合が続くプロの舞台でも変わらず、自分の性格と向き合いながら、次の登板へ気持ちを整えている。
1年目のシーズンで優先するものは明確だ。「自分のポジション的にリードを守ってゲームセットすることが一番仕事」。その役割を出発点に、「自分が投げる時はしっかり勝ちを持ってこれるようなピッチングをしたい」と目標を定めた。
さらに、「たくさんの試合に投げて勝利だったり、無失点っていうのを続けていきたい」とシーズンを通した働きも思い描く。
今年のオールスターは地元・富山で開催される。「出たい気持ちはあります」と、凱旋登板への思いものぞかせたが、「それよりまずはチームの勝利を優先して」と軸はぶらさなかった。勝利を託されるルーキー左腕は、その期待に応える投球を積み重ねていく。
(取材・文:灰原万由)
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