NTT東日本は、通信設備工事に従事する社員向けユニフォームのデザインを設立以来27年ぶりに全面的に刷新する。新ユニフォームは2026年秋より導入が開始される。

この取り組みは、現場の声と多様性を反映したデザインを採用し、社員の安全性・快適性を高め、働きがいのある職場づくりを目指すものだ。新ユニフォームの導入によって、社員のモチベーションやエンゲージメント向上を図り、企業イメージの刷新に寄与することが期待されている。

  • (写真左より)オンワードコーポレートデザイン 営業本部ソリューショングループ アカウントセールスDiv. コンサルティング2課 課長代理の葛川涼太氏、NTT東日本 デジタル革新本部 資材調達センタ 調達部門 第3調達担当の小林令奈氏、NTT-ME 設備マネジメント部 オンサイトマネジメント部門 ビジネスコントロール担当の願法美希氏

    (写真左より)オンワードコーポレートデザイン 営業本部ソリューショングループ アカウントセールスDiv. コンサルティング2課 課長代理の葛川涼太氏、NTT東日本 デジタル革新本部 資材調達センタ 調達部門 第3調達担当の小林令奈氏、NTT-ME 設備マネジメント部 オンサイトマネジメント部門 ビジネスコントロール担当の願法美希氏

なぜNTT東日本は27年ぶりにユニフォームを刷新したのか

NTT東日本の社員向けユニフォームはこれまで現場での安全性や機能性を重視してきたが、近年の気候変動による猛暑や豪雨、働き方の多様化や社員構成の変化などへの対応も求められるようになったことが今回のリニューアルにつながった。

しかし、「従来のユニフォームに大きな問題があったわけでもありませんでした」とNTT東日本 デジタル革新本部 資材調達センタ 調達部門 第3調達担当の小林令奈氏が振り返る通り、ユニフォーム刷新の気運はあったが喫緊の課題ではなかったという。

一方、NTT東日本はユニフォームのサプライヤーと5年おきの契約更新を行っており、ちょうど更新のタイミングだったことが刷新の大きなきっかけとなった。さらに、NTT西日本もユニフォームを刷新したばかりだったので、次はNTT東日本も見直してみてはどうかという意見にも後押しされ、ユニフォームを全面的に見直すことになった。

  • NTT東日本 デジタル革新本部 資材調達センタ 調達部門 第3調達担当 小林令奈氏

    NTT東日本 デジタル革新本部 資材調達センタ 調達部門 第3調達担当 小林令奈氏

なぜ“問題はないのに”刷新に踏み切ったのか

そこで、新ユニフォームの方向を定めるプロジェクトが結成された。プロジェクトは、ユニフォームの発注・調達を行う、NTT東日本 デジタル革新本部 資材調達センタ 調達部門 第3調達担当とユニフォームを着用する現場サイドであるNTT-ME 設備マネジメント部 オンサイトマネジメント部門が主導した。

まずはリニューアルの方向性を定めるために、「自分たちには服飾に関する知見がない」とのことで、服飾コンサルタントに意見を求め、アンケートを実施し仕様を策定した。

プロジェクト自体には途中参加となったNTT-ME 設備マネジメント部 オンサイトマネジメント部門 ビジネスコントロール担当の願法美希氏は、以前から現場の困り事や現場での改善ポイントなどに取り組む、NTT-MEの通信設備工事に従事する女性を主体とした現場改善プロジェクト「オンサイト未来プロジェクト」に参加していた。

「オンサイト未来プロジェクト」は発足当時、現場作業では女性社員の数が少なかったことから、現場における女性目線での課題解決を目的に活動していた。だが、現在は男性も含めた現場での課題に取り組んでおり、以前からユニフォームの改善についても資材調達センタと意見交換を行っていた。今回のプロジェクトにも協力・連携しており、主に現場の声をプロジェクトにフィードバックする役割を果たしている。

  • NTT-ME 設備マネジメント部 オンサイトマネジメント部門 ビジネスコントロール担当 願法美希氏

    NTT-ME 設備マネジメント部 オンサイトマネジメント部門 ビジネスコントロール担当 願法美希氏

これまでのユニフォームについて、「特に不満はなかった」という願法氏だが、「私が入社する以前からずっと同じものを使用していたと思うので、安全面がもう少し向上したらいいなとか、暑い夏でも着やすくなればいいなと思ったりもしますが、作業着としては当たり前の存在でしかなかった」と、ユニフォームに対する思いを明かす。その一方で、「せっかく担当として抜擢していただいたのだから、オンサイト未来プロジェクトのメンバーとしても、よいユニフォームを作りたい」と強い意欲を示した。

「特に大きな問題はなかった」と小林氏が語った通り、資材調達センタに不満の声が届くことはほとんどなかった。しかし、今回のアンケート結果を見て、「不満というより、意外と要望が多かった」ことに驚いたという。「資材調達センタがこれまでのやり方で進めていたら、たとえリニューアルしても、現場の要望とは乖離したユニフォームができていたかもしれなかった」と、同氏は安堵の表情を浮かべる。

なぜ現場の声を開発に反映したのか

さらに、今回のリニューアルでは現場の意見を重視する意向から、アンケートを作業過程にあわせて複数回に分けて実施。初期の不満、要望だけでなく、開発が進む途中のサンプルなどに対する意見も求めることで、より幅広い意見を集めている点が特徴だ。「オンサイト未来プロジェクトなど、現場と関わりの深い組織の方、そして現場組織の方にご協力いただいたことで、現場の方が自信と誇りを持って着ていただけるようなユニフォームができたのではないか」と小林氏は自信をのぞかせる。

現場組織からのアンケートを軸に、オンサイト未来プロジェクトや服飾コンサルの提言を取り入れつつ、仕様を策定し、RFPを実施。数社が競合するなか、オンワードコーポレートデザインが新たなサプライヤーとして選定された。

オンワードコーポレートデザイン 営業本部ソリューショングループ アカウントセールスDiv. コンサルティング2課 課長代理の葛川涼太氏は「前回の入札にも参加させていただいたのですが、そのときはちょっと残念な結果だった」と振り返る。その後のNTT東日本のロゴや社名の変更などの流れから、「いずれ、遠くない未来にユニフォームも変わるときが来るのでは」と予測。「当社はデザイン面を得意としているので、この機会にお役に立ちたかった」と、今回のプロジェクトへ参画した意気込みを明かした。

  • オンワードコーポレートデザイン 営業本部ソリューショングループ アカウントセールスDiv. コンサルティング2課 課長代理 葛川涼太氏

    オンワードコーポレートデザイン 営業本部ソリューショングループ アカウントセールスDiv. コンサルティング2課 課長代理 葛川涼太氏

新ユニフォームは何が変わったのか

デザイン面で自信をみせるオンワードコーポレートデザインだが、新ユニフォームをデザインする際は、「やはり女性の活躍を推進されている部分を打ち出されていたので、ユニセックスの男女ともに着やすいデザイン」を目指したという葛川氏。さらに、「NTT東日本グループは幅広い年代の方がいるので、年代を意識せずに着用できる」ことも重視した。

そして、ストレッチ性のある生地を使用することで、旧ユニフォームの昔ながらのシルエットを改善すると同時に機能性も高める工夫が施されているのも特徴。葛川氏「斬新なものほどカッコいいと思われがちですが、そんなことは望んでいない可能性も高い」との考えから、「NTT東日本様らしさがどこにあるのかを社内でじっくりと協議して、探り出していく過程は苦慮しました」と葛川氏は振り返る。

「現場の意見を反映したユニフォームを作りたかったが、すべてを盛り込むのはさすがに不可能」だったという小林氏。例えば、夏の作業着は、酷暑に対して通気性を求める意見と、春や秋に着用する機会があることから保温性を求める意見が対立するなど、その調整に四苦八苦した。加えて、サプライヤーを決める際、プロジェクトメンバーそれぞれの意見が異なり、「特にデザインになると個人の好みが大きく影響してしまう」こともあって、採点方式での選定でもなかなかすんなりとは決めきれなかったという。

また、サプライヤーの決定前に現場側でのトライアルが行われたが、「できるだけ多くのサービスセンターの方に着用していただきたかったが、時間の制約があるため、いくつかのサービスセンターを選ばないといけないのは残念だった」と、願法氏は正直な胸の内を明かす。

なぜオンワードが選ばれたのか

なお、これまでのユニフォームでは最低価格方式の入札が行われたのに対し、今回は「価格」だけでなく、「機能」や「デザイン」、さらにはSDGsへの取り組みも含めた「環境」、そして安定供給の可否やBCP対策などの「会社状況」といった5つの観点から採点して決定する総合査定方式を採用。

「安かろう悪かろうでは困りますし、デザインだけいくらカッコよくても、耐久性がなければ作業着としては失格」と話す小林氏。「価格だけを重視するのではなく、機能やデザインも同じレベルで採点しています」と今回の選考について説明する。

そして、今回サプライヤーとしてオンワードコーポレートデザインが選定されたのは、5つの観点において、総合として高く評価された。「日本を代表するような企業様のユニフォームに携われること自体もうれしいことですが、特に今回のようなモデルチェンジの際にご選定いただけたことは本当に光栄」と、葛川氏も感謝の意を伝える。

オンワードコーポレートデザインが選定された最大の決め手は「デザインの良さ」にあると小林氏は考える。「着用サンプルを着用してもらったところ、年代を問わずに着用できるのがオンワードさんのデザインだった」と続け、単なるカッコよさではなく、「誰が着ても違和感なく着られることが、ほかのメーカーさんと比べても大きなアドバンテージになった」と評価する。これは先述した葛川氏が語る、今回のユニフォームに対するオンワードコーポレートデザインのデザイン姿勢にも一致する。

新ユニフォームの暑さ対策は何が変わったのか

新ユニフォームは、すでに2026年1月に発表されているが、「非常に良好な感触」と現場の声を伝える願法氏。「トライアルのときから、皆さんキラキラした目で見てくださっていたのですが、実際にニュースリリースなどが出たときには、いつから着られるのか、早く着たいという声をたくさんいただきました」と新ユニフォームへの期待の高さを語る。また、「夏場の作業も快適になりそう、仕事に対して前向きになるといった、すごくポジティブな意見が多いです」と同氏は笑顔を見せる。

また、オンサイト未来プロジェクトとしても、「現場では女性社員の数が少なく、なかなか意見を届けることができなかったのですが、汗じみやにおいの問題など、細かな意見もしっかりと拾うことができた」ことこそがプロジェクトに参画した意義だという。その成果として性別、年齢、体型を問わず快適に着用できるユニセックスのデザインを実現している。

  • NTT東日本の新ユニフォームのイメージ 出典:NTT東日本

    NTT東日本の新ユニフォームのイメージ 出典:NTT東日本

その一方で、「デザインは慣れ」という観点から機能性を重視した採点を行ったと話す願法氏。「これまでのユニフォームと同様、数年着続ければ、よほど酷いものでない限り、デザインには慣れてしまうと思うので、どこまで機能面が充実しているかを重視しました」と、自らの選考基準を明かした。

機能面で要望が多かった暑さ対策については、現在のユニフォームはファン付きの熱風を送り込めるとともにポケットに保冷剤をセットできたところ、当初の提案ではポケットが小さく既存の保冷剤がセット不可だったため、ポケットを改善して保冷剤をセットできるようにした。現場の期待も高まっている。

ただし、願法氏は「実際に使っていただけば、もっと要望がいただけるかもしれませんが、暑さ対策は重要なので、できる範囲で改善できれば」との意向を示す。また、現場に出る社員は基本的に長袖だが、現場に出ない作業も増えてきたところから半袖のユニフォームも見直し。ワイシャツからポロシャツに変更されたのは、かつて用意されていたポロシャツを復活してほしいという要望に応えた結果だという。

導入後、ユニフォームはどう改善されるのか

2026年秋の導入開始に向けて、すでに現場でのトライアルを終え、最終仕様も確定しており、後は量産を待つのみの状況となっている。

小林氏は「これから秋までは、仕様の変更などは実質的に不可能」としつつ、「着用が開始したら、できるだけ広く現場の方に着用していただき、あらためて意見を聞かせほしい」と話す。

また、小林氏は「フィードバックをもとに改善を進める方針です」と今後への展望を明かし、「オンサイト未来プロジェクトを通して、現場の方の意見もうまくまとめていきながら、より良いユニフォームを作り上げていきたい」と、さらなるブラッシュアップに取り組む意欲を示す。その上で「変更する前のほうが良かった、なんて言われないユニフォームにしていきたい」と、あらためて強い決意を明かした。