年金だけでは暮らしが心配――。そんな不安を減らすには、「老後のお金を3つに分けて考える」ことが大切です。使う目的を整理すれば、老後のお金はもっと安心に。※サムネイル画像:PIXTA

「老後の生活費が足りなくなったら、どうしよう……」と不安に感じる人は多いですよね。私自身、父の介護を通じて、長く生きることとお金の問題を痛感しました。

父は90代まで生き、医療費や介護費で年間100万円単位のお金が出ていきました。年金をしっかりもらっていても、医療費が2割負担、介護サービスも2割負担となると、あっという間に貯金が減っていきました。

そんな経験から、私は「老後のお金は3つに分けて考える」ことをおすすめしています。

1. 日常生活費

2. ライフイベント資金

3. 医療・介護に備えるお金

◆1. 日常生活費

まずは、年金とパート収入などでまかなう「日々の生活費」です。生活費は家庭によってさまざまですが、収入としては夫が年金211万円、妻が155万円以内に収まると、「住民税非課税世帯」となり、医療費や保険料の負担が軽くなります。

このとき、妻は年金を繰り下げしても155万円に届かないことも多いです。繰り下げて不足する分は、月5万円ほどパート収入を得るのも良いでしょう。社会とのつながりも保てますし、家の中に閉じこもるよりもずっと健康的です。

◆2. ライフイベント資金

「ライフイベント資金」は、家の修繕やリフォーム、車の買い替え、お子さんやお孫さんへの援助など、予期せぬ大きな出費(ライフイベント)に備えるための資金です。

例えば、50代後半で子どもが独立した後であれば、不測の出費に備えて500万~1000万円程度を個人向け国債に預けておくのがおすすめです。

個人向け国債は、現在1.5%超えの利回り(2026年4月時点、変動金利型10年の場合)があり、普通預金よりも高金利で安全性も高いです。さらに、発行から1年経てば一部解約(中途換金)も可能という利便性もありますので、まとまったお金を管理するのに適していると考えます。

◆3. 医療・介護に備えるお金

そして3つ目が、85歳以降の「医療・介護に備えるお金」です。

老後のお金の中で、最も不確実で不安が大きいのが、この医療や介護にかかる費用です。85歳になった時点で、介護や医療費として夫婦で1000万円を目安に保持しているとよいでしょう。

高齢での入院は長期化しやすく、高額療養費制度を利用しても、医療費や介護サービス費、雑費などで貯金が減りやすい傾向にあります。せっかく長生きしていても「お金がなくて介護も医療も受けられない」という事態を避けるために、この医療・介護費用は必ず残しておくべきです。

「途中で使わずに終わったらもったいない」という声もありますが、それならそれで幸せなことだと思えばいいのです。誰も自分の寿命は分かりません。万が一長生きしたときに、お金がないほうがずっと不安ではないでしょうか。

◆お金の役割を整理して、老後の不安を減らしましょう

老後のお金の不安は、「なくなったらどうしよう……」と考えるほど大きくなります。だからこそ、「いつ」「何に」使うのかを分けて考えること。

お金の役割を整理するだけで、将来の見通しが立ち、心の負担も軽くなります。そうやって自分を守る仕組みを作っておくことが、老後の不安を減らしてくれるんです。

文:酒井 富士子(経済ジャーナリスト)

「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルートに転職し、定年あるじゃん、あるじゃん投資BOOK等の立ち上げ・編集に関わる。2006年にお金専門の制作プロダクション「回遊舎」を創業。「ポイ活」の専門家としても情報発信を行う。

文=酒井 富士子(経済ジャーナリスト)