奇抜な車はラグジュアリー・サルーンだけではない!|ハイドロ・シトロエンの系譜

シトロエン独特の乗り心地と奇抜さを備えた車はラグジュアリー・サルーンだけではない。他のハイドロニューマチック・シトロエンを紹介しよう。

【画像】M35、SM、GS、BX、エグザンティア、C5。いずれもユニークなシトロエンの車たち(写真6点)

M35(1969年)

シトロエンの基準からしても奇妙なモデルである。500台の計画に対して実際に生産されたのはわずか267台。アミ8をベースにコーチビルダーのユーリエがクーペボディを作り上げた。ハイドロ・サスペンションを持つシトロエンの最小モデルであり、さらにエンジンは498㏄のシングルローター・ヴァンケル・エンジンを積んでいた。すべての車はいわば実用テストのためのプロトタイプとして、選ばれたシトロエンのカスタマーに販売された。後にシトロエンによって買い戻されたため(おそらくパーツ供給の責任を回避するため)生き延びたのは100台ほどと言われている。この車から得られたサスペンションとギアボックスの経験は後のGSに役立てられた。

SM(1970~75年) シトロエンの中のシトロエンとも呼ばれる。DSの大成功を受けて開発されたSMは、間違いなく最も野心的な車である。しかしながら非常に複雑でコスト高であり、そのせいで会社は最終的にプジョー傘下に入ることになった。「プロジェクトS」では、進化したハイドロニューマチック・サスペンションに相応しい新型エンジンを手に入れる必要があり、そこでシトロエンはマセラティを買収し、その V8から2気筒を省いたV6を搭載した。好みの分かれる種類の車ながら、卓越したグランドツアラーであることは疑いない。スタイリングもロベール・オプロンの最高傑作と言えるだろう。 

GS(1970~1986年) コンパクトなファミリーカーの GSもロベール・オプロンのデザインだが、明らかにピニンファリーナの「ベルリーナ・アエロディナミカ」の影響を受けている。きわめてエアロダイナミックなボディに、専用開発の空冷フラット4エンジンとハイドロニューマチック・サスペンションを備えていた。 GSは当時のヒット作であるフォード・エスコートやオペル・カデットに立ち向かう意欲作であり、実際に販売台数は初期型だけで200万台近くに上った。インテリアは SMに倣ったものだが、いわゆるボビン・メーターを採用した初めてのシトロエンだった。1973年にはヴァンケル・ロータリーエンジンを搭載し、4輪ディスクブレーキと3段セミオートマチックを採用した GSビロトールが追加されたが、親会社プジョーの意向もあって生産台数はごくわずかだった。1979年にはハッチバックボディの GSAに進化する。 

BX(1982~1994年) VWゴルフと比べればどう見ても風変わりだが、それにもかかわらずBXは、”Loves driving, hatesgarages”という販売スローガンを掲げて保守的なユーザー層に切り込もうとしたボリュームモデルである。マルチェロ・ガンディーニ(ベルトーネ)によるスクエアな BXのボディは GSよりも大きく、またボンネットやテールゲート、バンパーはプラスチック製だった。1986年のマイナーチェンジを機にユニークさは薄められて行く。特徴的だったスイッチ類はプジョーと同じレバーに替えられ、さらにシトロエン独特のボビン式スピードメーターも廃止されてしまった。それでも車高調整式ハイドロニューマチック・サスペンションは BXの最後まで維持された。87年には DOHC16Vエンジンと専用のボディパーツを備えた”ホットハッチ”、BX16Vも追加された。

エグザンティア(1992~2001年) 落ち着いたベルトーネ・デザインを持つ洗練されたハッチバック。従来型のBXよりは大きいが、XMの下のクラスを受け持った。引き続きハイドロニューマチック・サスペンションが採用され、ブレーキとステアリング系も油圧回路で連結されたのはこのエグザンティアが最後だった。プジョー406と基本的メカニズムを共有しており、そのおかげでパワフルな4気筒ターボや余裕のある3.V6エンジン搭載車も用意されていた。アンチロール・サスペンションを搭載した”アクティバ”仕様もごく少数生産された。 

C5(2000~2007年/2007~2019年) エグザンティアの後を受けて登場し、2世代にわたって生産された。当初は大型のハッチバックボディのみだったが、後にGS以降の他のモデル同様ワゴン仕様も追加された。依然としてハイドロニューマチック・サスペンションを備えるが、ブレーキとステアリングは一般的な構造に改められている。第2世代の新型 C5は先代よりもずっと常識的で、サスペンションもほとんどのモデルで金属バネを採用、ハイドロニューマチックは上級グレードに限られたため、非常にめずらしい。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA