
(左から)永岡里菜さん、笹川友里
永岡里菜さんは1990年生まれ、三重県尾鷲市出身。千葉大学卒業後、PR・プロモーションイベント企画制作会社に勤務、農林水産省との和食推進事業の立ち上げを経て独立し、2018年7月に株式会社おてつたびを創業。「誰かにとって”特別な地域”を作る」をミッションに掲げ、Web上のマッチングプラットフォーム「おてつたび」を運営しています。
◆地域と人をつなぐ「おてつたび」
「おてつたび」は“お手伝い”と“旅”を掛け合わせた造語で、農作業や宿泊施設の業務を手伝いながら地域に滞在することで、単なる観光とは異なる深い関係性を築けるサービスです。
「おてつたび」の利用をきっかけに、人生の選択が大きく変わるケースも増えています。永岡さんによると、アンケートの結果では、利用者の約1割が受け入れ先にそのまま移住したり、就職したりしていると言います。
永岡さんは、早期退職後に「おてつたび」を利用しながらキャンピングカーで全国を巡っていた40~50代の夫婦が、三重県の受け入れ先を気に入り、そのまま就職したケースや、大企業に勤めていた50代の男性が、鳥取県でらっきょう農家での手伝いを通じて、その魅力に惹かれて移住したケースを紹介し、「お客さまとして訪れるのではなく、ある種“仲間”として地域に入り込むので、関係性を築きやすいところがあるかなと思います」と話します。
◆体験の価値を支えるプラットフォームづくり
「おてつたび」は創業当初から、利用者と地域の双方にとってプラスアルファの価値が生まれるようなプラットフォームづくりを大切にしています。その根底には、永岡さんの「経験は誰にも盗まれない」という考えがあります。「ネットで簡単にいろんな情報を得られる時代になったからこそ、自分だけのオリジナルな経験ってすごく大事になってくるのかなって。そういう意味合いですと、『おてつたび』を使って体験をしていただけているのは本望だと思います」と語ります。
サービスを支える仕組みづくりにも力を注いでいます。「おてつたび」はアルバイト契約という形態を取るため、双方が安心して利用できる環境の整備が欠かせません。そこで、労働条件通知書の自動生成や契約のデジタル締結など、労務管理の負担を軽減する仕組みを導入することで、受け入れ先にとって煩雑になりがちな手続きを簡略化し、スムーズなマッチングを実現しています。
こうしたデジタル化は、創業当初から整っていたわけではありません。サービスを開始して約1年半はWebサイトを持たず、コミュニケーションアプリ「LINE」などを活用しながら、永岡さん1人で運営していたと言い、「いろいろ手を動かしながらやっていたなかで、『人が介在しなくてもできるところはどこか?』と整理していきながら徐々にシステムに移行していった、という背景があります。その際に、契約周りは人間が介在する必要性が一番ないと思ったところはあります」と語ります。
◆「おてつたび」が目指す未来は?
「おてつたび」は現在、地域課題の解決と新たな人の流れを創出するため、全国約70の自治体と協働しています。その一例が、北海道・羅臼町での取り組みです。漁業をはじめとする一次産業の現場は深刻な人手不足で、どこに助けを求めても来てくれなかったものの、「おてつたび」で募集を出すと一瞬で埋まるほどの人気のエリアになり、地域の方々からも喜びの声があがっているそうです。
その一方で、永岡さんは、サービスを成立させるためには「寝床の確保」が最大の課題だったと言い、「一次産業の民間企業や事業者さんでは、寝床を工面することがなかなか難しくて悩んでいたときに、羅臼町の役場の方々が一緒に遊休スペースを整理して使えるようにしてくださいました。自治体の方と私たちが目指す未来が近いこともあって、お力添えをいただきながらやっていることが多いです」と力を込めます。
最後に笹川が、今後の「おてつたび」の展望について伺うと、永岡さんは日本の“人口減少”という大きなテーマに言及し、「“人が減っている”という事実のしわ寄せが最初に来るのは都市部以外の地域だと考えています。ただ、私としては都市部以外の地域こそが日本の魅力であり、今後“観光立国”を目指すのであれば、そうした地域が少しでも多く未来に残ることが、日本の魅力の底上げにつながると信じています」と声を大にして言います。
そのうえで、これからは「地域が未来に残る選択肢をどうつくるか」が、取り組むべきテーマだとし、地域内のリソースが減少している状況のなか、いかに外から人を呼び込み支え合う仕組みづくりができるか、そして、訪れた人が継続的に関わり、人・物・お金が循環する関係性を築いていくことが重要だといいます。
とはいえ、利用者が受け入れ先に移住・定住することが「おてつたび」のゴールではないと永岡さんは言います。「移住や定住ってすごくハードルが高いことだと思いますし、そこだけを目的にしてしまうと、人を取り合う構図は変えられません。ですので、その人にとって心地いい範囲で地域とのつながりをつくり、人・物・お金をどう循環させていけるかがテーマですね」と未来の構想を語りました。
次回3月28日(土)の放送は、株式会社dTosh代表取締役の平尾俊貴さんをゲストに迎えてお届けします。企業のDX推進や生成AI・AIエージェントを活用したビジネスの未来についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/