春になると、「いつもより眠い」「ぼんやりして集中しにくい」――そんな声をよく耳にします。気温のアップダウンに加えて、生活環境も変わりやすいこの時期は、心身のコンディションが揺らぎやすいタイミングでもあります。

今回は “春の眠さ”に関するアンケートを実施し、日常生活にどんな影響が出ているのかを調査。その結果をもとに、「春の眠気とうまく付き合うコツ」を医師に教えてもらいました。

  • 【イメージ画像】あくびをするメガネの女性

    ※画像はイメージです

春はどれくらい“眠い”と感じる?

「春に眠気を感じることがあるか」を尋ねたところ、「とても感じる」43.3%、「多少感じる」39.0%となり、あわせて8割超が“眠い”と回答しました。一方で「あまり感じない」11.3%、「まったく感じない」6.3%は少数派にとどまっています。

  • 【グラフ】Q1. 春は「眠い」と感じることはありますか?

この結果から、春の眠気は一部の人だけの特殊なものではなく、多くの人に共通する“季節ならではの実感”であることがうかがえます。

春の眠気はどこに影響している?

次に、春の眠気が日常生活にどのような影響を及ぼしているかを見ていきます。回答の中で最も多かったのは「集中力が続かない」で、半数以上がこうした“ぼんやり感”を実感していました。続いて、「朝起きるのがつらい」、「作業効率が落ちる」といった、学業や仕事に直結する項目が上位に並んでいます。

  • 【グラフ】Q2. 春の眠気によって、生活にどんな影響がありますか?

また、「気分が落ち込みやすい」、「ミスが増える」という回答も一定数あり、眠気がメンタル面やパフォーマンスの低下にも影響している可能性が見えてきました。

一方で、「ほとんど影響はない」と答えた人はわずかにとどまり、春の眠気が生活の質に影響を及ぼしているケースが多いことがうかがえます。

春になると、どんな変化を感じている?

では、こうした変化の背景にはどんな要因があるのでしょうか。
「春になって、生活の中で変化したこと」を尋ねたところ、最も多かったのは「寒暖差を感じる日が多い」という回答でした。次いで、「花粉症の症状がつらい」が続きます。

  • 【グラフ】Q3. 春になって、生活の中で変化したことはありますか?

また、「睡眠の量が変わった」「睡眠の時間帯が変わった」といった“睡眠リズムの変化”に関する回答も見られ、「新生活・異動などで日中の生活リズムが変わった」という声も一定数ありました。

さまざまな変化を感じている人が多いことから、春は生活面でも体調面でもゆらぎが起こりやすい季節といえそうです。

春の「眠さ」とどう付き合う? 医師に聞く原因とコツ

「自分だけかな?」と不安になりがちな春の眠さですが、アンケートでは多くの人が同じ悩みを抱えていました。

寒暖差や花粉症、睡眠や生活リズムの変化など、複数の要素が重なる季節でもあります。無理に我慢する前に、身体のリズムを整えるヒントを知っておきたいところ。ここからは医師に、春の眠気と上手に付き合うコツを聞いていきます。

佐上 徹(さがみ とおる)医師

日本医学放射線学会 放射線診断専門医/日本医師会 産業医/日本医学放射線学会 放射線診断指導医

―アンケートでは、春に「眠気」を感じる人が8割にのぼりました。医学的には、春に眠くなりやすい原因は何だと考えられるでしょうか?

佐上医師:まず影響として考えられるのは、日照時間の変化です。春は冬よりも日の出が早まり、日照時間が延びます。この変化に体内時計の調整が一時的に追いつかない期間が生じ、実際の就寝・起床のタイミングと、身体が準備できるまでの時間にズレが生じやすくなります。そのため、いつもと同じ生活でも日中の眠気が残りやすいと考えられます。

次に、寒暖差も要因の一つでしょう。冬の寒い時期から春になって暖かい日が混ざるようになると、特に寒い日には布団から出づらく、もう少し寝ていたいと感じやすくなりますよね。これが結果として「眠気」の感覚につながる可能性があります。

―寒暖差によって睡眠の質に影響が出やすいのは、どんな人でしょうか?

佐上医師:痩せ型の方や高齢の方など、体温調節がうまくいきにくい方は寒さを感じやすい可能性があります。その場合、身体が温まりにくく、目覚めまでに時間がかかりやすくなるため、起床が遅れたり睡眠が長引いたりして、結果として日中の眠気につながることがあるかもしれません。

―春は花粉症シーズンでもありますよね。花粉症が睡眠の質や日中の眠気に影響することはありますか?

佐上医師:影響はあり得ます。まず、花粉に触れることで起きる軽い炎症により、のどや鼻の腫れ、倦怠感を感じることがあります。こうした不調は夜間の睡眠を妨げたり浅くしたりして、翌日の日中の眠気につながる可能性があります。

また、花粉症で用いられる抗ヒスタミン薬は、眠気や倦怠感が副作用として知られています。薬による反応には個人差があり、「Aの薬では眠くなるが、Bの薬では問題ない」という方もいれば、その逆の方もいらっしゃいます。そのため、春の眠気の一部には薬剤の影響が関わっていると考えられます。

―進学や就職、異動など、生活環境の変化が眠気に影響することはありますか?

佐上医師:はい、 影響は考えられます。新生活で起床時刻が前倒しになる、いつもと違う予定が続くといった状況が重なると、睡眠の「量」や「時間帯」が乱れがちになりますからね。

―睡眠の量や時間帯の変化が続くと、どんな不調につながりやすいのでしょうか?

佐上医師:睡眠時間が少なくなったりリズムが崩れたりすると、まず集中力や判断力の低下が起きます。また、情動を司る脳の扁桃体の活動が活発になることで、イライラしやすい、不安が強くなる、怒りっぽくなるといった変化が生じることも知られています。その結果、酒量や喫煙量が増えるといった行動面の変化につながる可能性もあります。

さらに、こうした状態が長い期間続くと、自律神経の乱れとして、倦怠感、頭痛、動悸、胃腸の不調(下痢・便秘・腹痛)、蕁麻疹など、身体のさまざまな症状が出やすくなります。

また、一時的な不眠が慢性化すると、精神科領域の疾患の引き金になることがあります。いわゆるうつ病の前駆症状や併存症状として「不眠」が重要視されていることからも、睡眠リズムの乱れは軽視できないポイントといえます。

―ここまで春の眠気の要因についてお聞きしましたが、心身の健康を保つための「今日からできる眠気対策」があれば教えてください。

佐上医師:まずは“毎日続けられる”ことから整えるのが現実的です。以下を目安にしてみてください。

・寝る時刻を決めて、毎日できるだけ守る
・毎日7時間以上寝る(個人差はあるが、推奨は7時間以上)
・休日の朝寝坊は最大でも+2時間まで(平日とのギャップが大きいと、自分で“時差ボケ”を作ってしまう。休日も寝る・起きる時刻をできるだけそろえるのがポイント)
・カフェインをとるのは午後3時頃まで(カフェインは6時間以上体内に残るといわれている)
・昼休みに15分以内の仮眠をとる(短時間の仮眠は午後の集中力維持に有効とされている)
・どうしても昼間に眠いときは短い散歩をする

―「季節の変化による一時的な眠気」と医療的に注意が必要な状態の見分け方はあるのでしょうか?

佐上医師:明確な見分け方はありません。「◯◯のせい」と決めつけずに、不調(不眠・食欲不振・身体の症状)が2週間以上続くようなら、専門医の受診を検討するのが望ましいでしょう。

春の「眠さ」は決してめずらしいことではありません。今日できる小さな工夫を続けて、自分のペースを少しずつ取り戻していきましょう。

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