日々流れてくるニュースの中には、思わず不安を感じてしまうものも少なくありません。そうした情報に触れたことをきっかけに、必要以上に心配してしまったり、つい何度も調べてしまったりした経験はありませんでしょうか。

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今回は、認知行動療法の第一人者による不安の取扱説明書『「いつも不安で頭がいっぱい」がなくなる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、「自分が乳がんではないか」という不安を例に「安全行動」の対処法をお届けします。

「安全行動」とは、一見必要そうだけれど、不必要にやりすぎている行動のことで、頭の中で考え続ける「反すう」や「心配する」も含まれます(同書より抜粋)。

ネガティブな予測が当たるかどうか検証しよう

本記事では実際に安全行動をやめる実験(行動実験)を紹介しましょう。急に「実験」と言われて、驚かれる方もいるかもしれません。観察と実験を通して、自分のネガティブな考え(予測)を、科学者になったつもりで、検証するのです。

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最初に、実験を計画します。次に、「自分のネガティブな予測が本当に起こったかどうか」という結果をしっかりと記録します。最後に、行動実験の結果から、バランスの取れた考えの重要さを考察します。これが、「将来最悪なことが起こるという考え(予測)」を生み出している、否定的な解釈のバランスを直すための行動実験です。

「観察と実験」という客観的、科学的な態度を身につけることが、不安感情に振り回されないために重要です。17世紀のヨーロッパで、錬金術から自然科学へと生まれ変わった科学革命を代表する人物であるイギリスのフランシス・ベーコンは、従来の先入観を排除し、「観察と実験」という経験から共通の法則を見つけ出す「帰納法」こそが、正しい科学の方法であると主張しました。

彼の経験主義哲学は、現代社会の発展の礎となる考え方の1つになっていると言えるでしょう。強い不安に悩む人も、先入観を捨てるために、「観察と実験」に取り組みましょう。

「自分が乳がんではないか」という不安を観察・実験しよう

それでは、「自分が乳がんではないか」と不安に思っているAさんを例に、具体的な行動実験のやり方をご説明します。

有名人が乳がんになった話をテレビで見た後、Aさんは学生時代の友達と久しぶりに会って食事をしました。そのときに、友達も乳がんになって、少し前に手術を受けたという話を聞きます。そこでAさんも、帰宅後に自分の乳房をよく見たり、触ったりしてみたところ、左側の乳房だけ、しこりがあって触ると痛みがあることに気づきました。それで「自分も乳がんではないか」と心配になりました。

この行動実験では、まず今の状況を書き出します。Aさんは「乳がんが心配なので、クリニックで1週間後の健診の予約をとった」と書きました。

  • ※同書より抜粋

    ※同書より抜粋

次に「起こる日付はいつか?」を書きます。クリニックでの健診は1週間後なので、1週間後の日付を記入します。

そして、次は予測(認知)です。ここでは「正確には何が起こると思うか?」「起こりうる最悪なことは何か?」を書き出します。

VTRを見るように将来のできごとをイメージすることがポイントです。最悪の事態が起こると信じる度合い(確信度)を0~100%で評価しておきましょう。

Aさんは「X線検査や超音波検査で異常を指摘される。70%」と書き出しました。

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ポジティブなイメージをして結果を待つ

ここまで書いたら、あとはクリニックで医師の診察と検査を受ける予約当日まで待ちましょう。その間、認知行動モデルの悪循環を断つために、安全行動や反すう、心配をやめ、注意を柔軟に、頭の中でなく外部を観察するように向け、ネガティブなイメージだけでなく、ポジティブなイメージも浮かべながら待つことが重要です。

行動実験は、あくまでも現実を客観的・科学的に見るために行います。けれども不安が強い人は、ネガティブなイメージに振り回されてしまい、例えばネットで乳がん体験者の手記を読みあさって毎日毎日一喜一憂するようなことがあります。

最悪なのは、「免疫力がアップして元気になりました」などの個人の感想をもとに効果があるらしいことを大げさに広告している、高額な上に効果が不明の怪しい健康食品・サプリメントなどに救いを求めてしまうパターンです。

不安なあまりネガティブなイメージをしてしまう。それはある程度しかたないですが、同時にポジティブなイメージをしておくことも意識してほしいと思います。「結果的に何もなかった、で済む可能性もある」「仮に乳がんになっても早期であれば手術で完治できる可能性が高い」などと想像することが大事です。

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そして、実際にクリニックで診断を受けたあとには結果(現実)を記録します。ここで実際に起きたことを書き出し、自分の予測が正しかったかを検証します。幸いにもAさんは検査で異常が見つからなかったので、「診断と検査で異常を指摘されなかった。予測は正しくなかった」と書きました。

最後に、学んだことをまとめます。「乳がんになる場合もあれば、ならない場合もある。9人に1人が乳がんになるという統計データがある。自分は、今回は9人のうちの8人であったが、今後も2年に一度、乳がん検診を受けて、この行動実験を継続する」なお、乳房の「しこり」のうち、全体の8〜9割が良性であるとされており、1~2割が乳がんと診断されると言われています。

結果と学びを書き出そう

乳がんの疑いがあったが、医師の診察と検査を受けた結果、問題がなかった。

こういう場合、多くの人は「よかった」で終わりにすることでしょう。健康な人はそれでOKですが、全般不安症(何か特定のことに限らず、さまざまなことが不安になってしまう 病気)の人は、同じような状況に直面したとき、同じような不安と心配を繰り返して、苦しさが続いてしまいます。

ポイントは、結果を踏まえて「今回、自分はネガティブな考えに偏りすぎで、ポジティブな考えをまったくできていなかった」「考えをやわらかくして、ネガティブとポジティブのバランスを意識する必要がある」という学びを積み重ねること。

こうしておけば、同じような状況に直面しても「悪い結果の可能性ばかりではない。良い結果になることもある」と考え、冷静にものごとを受け止められるようになるのです。

  • ※同書より抜粋

    ※同書より抜粋


不安なことや恐れていることに対しては、ついネガティブな予測を立ててしまいがちですが、俯瞰して冷静に自分の状況を「観察」「分析」してみると、うまく不安と付き合っていくことができるのかもしれません。

「いつも不安で頭がいっぱい」がなくなる本(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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監修: 清水栄司
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