「飛行機事故が怖くて乗れない」「大災害や犯罪に巻き込まれるかもしれないしれないと思うと落ち着かない」など、確率は低いけれど"確実に大丈夫"と言えないことに対しての不安が頭から離れなくなり、抜け出せなくなってしまうことはありませんか?

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実はその背景には、「不確実なことに耐えられない」という思考のクセが関係している可能性があります。

今回は、認知行動療法の第一人者による不安の取扱説明書『「いつも不安で頭がいっぱい」がなくなる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、飛行機事故などを例に「不確実性への不耐性」についてお届けします。

不確実なことに耐えられない

本記事では強い不安を起こしやすい「思考のくせ」について学んでいくことにしましょう。

航空輸送管理ジャーナルに2024年に発表された、アメリカの統計学者アーノルド・バーネット教授らの論文によると、2018年から2022年に世界全体で集計した、飛行機旅行で死亡する確率は1370万回搭乗して1回(0.0000073%)でした。

航空会社の人や飛行機の専門家は、飛行機事故の確率が低いことを知っています。ですから、「飛行機に乗っても安全ですか?」と聞かれたら、「飛行機は安全な乗り物なので、安心して乗ってください」と答えると思います。

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では、「私が乗る飛行機は絶対墜ちないですよね?」「絶対に墜ちないと保証してください」といわれたらどうでしょう。専門家は「うーん。絶対とは言い切れないです......」などと答えるしかなくなります。それを聞いて、「絶対に安全だと保証してくれないなら、その飛行機には乗りません」となってしまう人がいます。

多くの人は、非常に小さなリスクなら、飛行機を使うことの便利さを優先して飛行機に乗ります。けれども、なかには「絶対に安全だと保証してもらえないような、不確実なことを選択できない。どんな小さなリスクだとしても、そのリスクをゼロにしない限り、耐えることができない」と考える傾向を持つ人がいます。

認知行動療法では、「不確実性への不耐性」という専門用語があります。「不確実性」とは、確実でないこと、予測できないこと。「不耐性」とは耐えられない、受け入れられないということ。つまり不確実性への不耐性とは、先が読めない不確実な状況に耐えられない(と考える)傾向のことです。

不確実なことは、大きなストレスになる

不確実な状況に耐えられない人は、「飛行機が0.0000073%の確率で墜ちるかもしれない」という状況を受け入れられません。絶対に安全が保証されない限り、飛行機に乗ろうとは思いません。「石橋を叩いて渡る」ということわざを使うならば、「石橋を叩いて壊す」「石橋を叩いても渡らない」タイプの人といえます。

たしかに、先行きが不透明で、正解がわからないという状況は人間にとって大きなストレスとなります。不安を感じるのもよくわかります。例えば、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが起きたとき、「これから世の中はどうなるのだろう」「このまま活動自粛が続いたら会社の業績は大丈夫かな」などと考え、不安やストレスを感じた人は多いと思います。

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また、日本では関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災など、予期せぬ災害にたびたび直面してきました。地震・津波、台風・豪雨・洪水、火山噴火、土砂災害、大雪・雪崩などの自然災害に加え、火災、交通事故、爆発、化学物質による災害、公害など人為災害も起こりえます。災害がいつどこで起こるかわからないという状況は大きなストレスです。特殊詐欺、窃盗、暴力、殺人などの事件に巻き込まれる可能性もあります。

「物価はどこまで上がるのか」「日本も戦争に巻き込まれるかもしれない」など、ほかにも先行きが不透明なものごとはたくさんあります。

不確実なのは当たり前として受け入れよう

しかし、見方を変えれば、世の中は不測の事態や見通しの立たないことであふれています。むしろ、不確実な世界こそが当たり前です。

しかも、今の社会は変化のスピードがとても速いので、ますます先を見通すのが難しくなっています。生きていく上では、不確実性に耐える力が求められます。

そもそも不確実性は100%悪とも言い切れません。仮に世の中のすべてに見通しが立っていて、解決方法や対処方法が明らかになっていたらどうでしょうか。ストレスを感じずに安心して行動できるかもしれませんが、ちょっと退屈な気もします。

実際、多くの人は激しい変化が苦手であるのと同時に、まったく変化しない状況にも飽きてしまう性質を持っています。要するに、人はちょっとくらいは、変化のスパイスをほしがる生き物なのです。

不安の認知行動療法の最初の一歩として、あなたには、不確実な状況をそのまま受け入れる、耐性をつけることを目指してほしいです。正解のない状況を、落ち着いて客観的に眺める(観察する)ことができるようにしていきましょう。


「最悪の場合」や「予期せぬ不運」を想定しておくことは大切です。一方で、そこから生じる不安にとらわれすぎると、日常のさまざまな場面が苦しく感じられてしまいます。

不確実性そのものをなくすことはできませんが、その捉え方は変えられます。まずは「絶対」を求めすぎず、「わからないままでも大丈夫」と状況を受け入れ、客観的に眺めてみることが、「思考のくせ」を手放す第一歩になるかもしれません。

「いつも不安で頭がいっぱい」がなくなる本(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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監修: 清水栄司
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