
「Audi Women's Driving Experience」は2019年から始まり、2022年からは3月8日の国際女性デーに固定開催をしている。会場は体験施設が充実するポルシェ・エクスペリエンスセンター東京だ。当日の参加者は欠席もなく満員の24名。4倍近い応募があったのは今年、土曜日だったこともあるかもしれないが、年々参加希望は増え続けているようで、継続の効果と想像できる。
【画像】スムースドライビング、ブレーキング体験、スピン回避体験、アンダー&オーバーステア体験などをアウディ最新モデルで体験!(写真19点)
このイベントばかりは女性インストラクターがチーフとなり、女性2名、男性7名、合計9名のドイツ本国アウディAGのアセスメントを受け認定されたインストラクターが参加者を迎えた。アウディは基本的にインストラクターが同乗するため、車両が多くなるほどインストラクターも多くなる。インストラクターが常に同乗することで、個々のスキルや心理状態、向上ぶりや改善点を理解し、アドバイスも行いやすいのだ。
アウディはドライビングとセーフティの意識、技術の向上に役立つ”エクスペリエンス=体験”を行うさまざまなドライビングイベントを1983年から行っている。日本では2001年からスタートし今年で26年目を迎えた。インストラクターは全員がドイツ本国のアウディAGの認定資格を持つ。余談だがこの資格は定期的にアセスメントテストを行おこない更新されるという、きわめて厳格なもの。そのようなプロのインストラクターが参加者をサポートして行われるプログラムは、継続的に開催されているスタンダードなものから、サーキットを使ったサーキット/スポーツエクスペリエンスなど多岐にわたる。
Womensプログラムは日常の運転を軸にプログラムが組まれている。軽い朝食が用意され、早朝の会場までの移動を終えてひと心地しながらプログラムのスタートを待つ。プログロムはブリーフィングからはじまり、今回のチーフである井野まりこインストラクターが座学を行った。
座学のテーマは「スムースドライビング」。ドライビングの基礎として「ドライビングポジションの取り方」からはじまった。「スムースドライビングとは」では”効率の良い運転こそ環境にも同乗者にも優しい”をゴールに、加減速やコーナリング、交差点の内輪差のような日常のちょっとした気づきになるような話を、身近な例を挙げながらおこなった。
たとえば、お皿を洗うときの話。洗剤が沢山ついたお皿をチョロチョロの水で洗うとなかなか泡が落ちない。だからといって大量に出せば水が撥ねてしまう。これは停車中の車が青信号で発進し、60km/hまで加速しようとした際に、燃料を節約しようと少しの加速でダラダラと加速するよりも、適度な加速で早く60km/hに達するほうがよほど効率の良い運転ができる、という話だ。皆さん、ときにニヤニヤとしながら何度も頷いて聞いていた。そしてその後、ドライビングポジションの取り方のデモ、女性らしい車の扱い方の所作(ドア開閉、乗り降り、シューズ選びなど)を紹介し、いよいよ実践がスタートする。
参加者を迎えるのは最新のアウディ。モデルはRS e-tron GTやA5 e-tronなどのBEV、S5やA5などのMHEV、RS3のようなICEのスポーツモデルからSUVまで様々だ。
主なプログラムは4つ。メインの走行コースを使ったスムースドライビング、急ブレーキ&ABSの性能を知るブレーキング体験、スキッドプレートという、コースに侵入すると足元の地面(プレート)がずれて強制的に姿勢が乱れ、それをコントロールするスピン回避体験。スキッドパッドを使って行うアンダー&オーバーステア体験などを順番に体験していく。
私は昨年に続き、アンダー&オーバーステアを担当した。アンダーステアが発生する原因=スピード、ステアリングの切りすぎ(過大)を滑りやすい円版の上(すなわち低速)で自らが操作して状態を作り出し、修正する術までを体験する。オーバーステアも体験は同様だ。
まずはみんなで同乗して私がデモを行い、続けて一人ずつトライをするのだが、はじめから「待ってました!」とばかりに前のめりな車好きな女性もいれば、「怖い、怖い」と腰が引けてビクビクしながらスタートする方もいて、反応は人それぞれ。怖いのも当然だ、経験したことがないことをするのだから。しかしほとんどの方は「面白くなってきました~」とだんだん積極性が増していく。しかも参加者は車酔いに配慮し、同乗せずにご自分の順番になったらドライバー交代をすればよいというのに、皆、乗りっぱなし。ちゃっかり他人の成功/失敗体験からも学ぼうとする姿にこちらも熱が入るというもの。果たして車内はいつも賑やかだった。
「女性だけのプログラムなので、安心して参加できました」という複数の感想を楽しそうに話してくれた様子から、きっと他のプログラムの車内も賑やかで和やかだったことが想像できる。
私が30年近くインストラクターをしている(アウディでは15年くらい、アウディ以外のメーカーや施設、企業などでも行っている)理由は、車の性能や技術が進化しているのにそれを使うドライバーの理解があまり進んでいないと感じるから、というのもひとつの理由なのだ。安全な場所で、ときには様々な(なかには限界性能を超えた)体験をすることで「車ってすごい!」とか「頼もしい!」とか「楽しい!」と気づく、またはリマインドする機会になることを願ってずっと続けている。
そんな私から見て、アウディ・ドライビング・エクスペリエンスはアウディというブランドらしいホスピタリティを用意しながら実にフレンドリーでアットホーム。インストラクターといっても参加者が行う様々な体験をより体験しやすくなるように、各インストラクターの技術と知識と経験をもって”サポートする”、という意識でインストラクションをしている点が素晴らしいと思う。”先生”な感じではないのだ。
アウディのドライビングイベントはアウディオーナーを中心とする”売った後”もオーナーを大切にするプログラムも少なくない。一方でアウディオーナー、アウディ以外のユーザーも参加できるイベントも少なくない。それから同伴者も多くいらっしゃる傾向があり、今回はそんな同伴者向けのプログラムもメインプログラムの裏で進行していた。同伴者にずっと見られているより、むしろ他のプログラムを楽しんでいてもらう方が、参加する方も気楽というものだ。
過去に参加経験のあるお母さんやお父さんが娘を参加させるケースはめずらしくない。昨年はこのイベントを知った息子さんがお母さんへのプレゼントとして参加申し込みをされた方がいた。パートナーを伴っていらした方のなかには「帰りは助手席で帰りま~す」というチャッカリさんもいた。
「国際女性デーらしい一日を過ごしたくて参加しました」と話してくれたTTオーナーさんは最近、サーキット走行もするほどドライビングにハマっているそう。様々なきっかけで参加される女性たちすべての方にとって、有意義な一日になったことを心から願うばかりだ。
文:飯田裕子 写真:アウディ ジャパン
Words: Yuko Iida Photography: Audi Japan