アメリカの影を見つめ続けた先で──キム・ゴードン『PLAY ME』混迷の時代に寄り添うノイズ

キム・ゴードン(Kim Gordon)の最新アルバム『PLAY ME』が話題沸騰中。今も進化を続ける元ソニック・ユースのメンバーの現在地とは。回顧録『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』(DU BOOKS刊・2015年)の訳者・野中モモによるレビューをお届けする。

※Matador Records Campaign 2026 特製ZINEより先行公開(ZINEの詳細は記事末尾にて)

アメリカは、いや世界は、一体どうなってしまうんだろう──強大な権力を握る要人や大富豪たちにはもはや最低限の良識すら期待できず、不安と憂鬱に侵食される日々。それでもまだ生きている自分を確かめて、なんとか今日一日を終えることができるようにもがき続ける。キム・ゴードンは最新アルバム『PLAY ME』でも、そんな同時代を生きる人々の心象風景に馴染むサウンドを聴かせてくれる。

80年代初頭よりニューヨークを拠点に活動し、90年代のオルタナティヴ・ロックを牽引したソニック・ユースが解散してから、はやくも15年が過ぎた。回顧録『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』(2015年)では、しばらくは音楽よりヴィジュアルアートを追求したいと綴っていた彼女だが、2019年に初のソロ・アルバム『No Home Record』をリリースして以来、音楽活動も思いがけずかつてない広がりと充実を見せている。2024年の2ndアルバム『The Collective』は、グラミー賞の最優秀オルタナティヴ・アルバム部門にノミネート。収録曲「BYE BYE」はTikTokでバズり、ソニック・ユースを知らない世代がこぞってショート動画に使用した。同年のフジロック・フェスティバルで披露された圧巻のパフォーマンスを記憶している人も少なくないだろう。

その勢いに乗って比較的短いブランクで届けられた最新作『PLAY ME』は、重いビートや不穏な不協和音を響かせながら、不思議と軽やかでポップな印象もある。3分以内の短い曲が大半を占め、クラウトロック的な疾走感のある「NOT TODAY」が最長でおよそ3分半。前作、前々作に引き続き、チャーリー・XCX、スカイ・フェレイラ、イヴ・トゥモアなど優れたアート・ポップを数多く手掛けてきたジャスティン・ライセンと全面的にコラボレーションをおこなっている。

もとよりノイズとギター・サウンド、そして声の扱いは彼女が得意とするところだった。インターネットでポエトリー・ラップ的な表現の裾野が広がったこと、また人類が深刻な危機に瀕しているという現状認識を持つ人が増えたことで、結果的にアメリカの影を見つめ続けてきたキム・ゴードンの作品が以前より受け入れられやすくなっていると言えそうだ。まだまだその背中を追いかけ続けたい百戦錬磨のアーティストである。

【関連記事】

キム・ゴードン最新インタビュー:アート、怒り、好奇心──かつてなく自由で驚異的なソロ新章

キム・ゴードン

『PLAY ME』

発売中

Tシャツ付きセットも販売

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15589

Matador Records Campaign 2026

特製ZINE(表紙:キム・ゴードン/スネイル・メイル)

【ZINE掲載内容】

・Kim Gordon / Snail Mail 新作レビュー

・おすすめディスクレビュー

・〈Matador Records〉とは?

Review text : 野中モモ、天井潤之介、清水裕也、 小熊俊哉、Kun、鈴木喜之、鳥居真道、井草七海、木津毅、吉澤奈々(掲載順)

【特典】

Matador Records 特製ZINE(ロゴステッカー付き)

対象商品を購入で先着プレゼント

キャンペーン詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15657