モータースポーツの“入口”を広げる――KINTOカートチャレンジ体験記

トヨタのカーサブスクリプションサービス「KINTO」は、車両代や保険、税金、メンテナンス費用などを月額料金に含めた定額制サービスとして知られている。クルマを“所有する”のではなく、“利用する”という新しいスタイルを提案するサービスだ。

そんなKINTOが契約者向けに開催している体験イベントのひとつが「カートチャレンジ」である。会場は富士スピードウェイのカートコース。当日は春らしい穏やかな天候だったが、花粉の飛来はなかなかのもの。とはいえ路面コンディションは良好で、走行には申し分ない環境だった。

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イベントはまず午前中の体験走行から始まる。カートの取り扱いやコース内でのルール説明を運営スタッフからしっかりと聞いてからコースインとなる。この走行は単なるウォームアップではなく、午後に行われる70分耐久レースのチーム分けを兼ねたタイム計測でもある。参加者の平均タイムが近くなるように7チームに振り分けられ、戦力差が出にくい構成になっている。

今回使用されたマシンはレンタルカートのPraga RTA。ヤマハ製MZ300エンジン(4ストローク300cc)を搭載するカートで、重量は約140kg、ブレーキは後輪のみのディスク式というシンプルな構成だ。走らせてみると、想像以上に奥が深い。

実際のラップタイムはどの程度なのか。この日の目安となったのが、ゲストとして来場していた笹原右京選手のエキシビション走行だ。午前中、参加者の走行前に数周のデモンストレーションが行われ、記録したタイムは34秒314。わずか4〜5周の走行でこの数字を叩き出すあたりはさすがプロである。

このタイムを見て、筆者も「目標は35秒台」と息巻いていたのだが、現実はそう甘くない。午前中のタイムアタックでは40秒フラットが精一杯。カート特有のブレーキングと旋回のリズムに慣れるまで時間がかかり、思うようにタイムを詰めることができなかった。

後述するレース中では少しずつ感覚をつかみ、36秒台をコンスタントに周回できるところまでは到達したものの、最後まで悩まされたのが1コーナー進入である。ブレーキングのポイントとコーナー中のボトムスピード、ライン取りのバランスが難しく探り探りのまま自分の出走を終えチームがチェッカーを受けることになった。

トップスピード自体はすぐ頭打ちになるがコーナリングスピードは高い。ブレーキはリヤのみのためロックしやすく、市販車の感覚で踏むと簡単に姿勢を乱してしまう。どこまでもスピードが伸びるわけではないので、タイムのすべてがコーナー中のボトムスピードをいかにして高くするかにかかっていて必然的に我慢を強いられる走行であった。

さらにステアリングは重く、1ヒートも出走すれば腕がパンパンになり握力が落ちていくのがはっきりわかるほどだ。パワーステアリングなしのクルマに乗っているから「その辺りは平気だろう、なめるなよ」と高をくくっていたのが恥ずかしい。何もかもが難しい。だが、それが面白い。

午後はいよいよ70分耐久レース。レースはそれぞれ前半と後半に分かれ、前半は初級者、後半は上級者が担当する方式。前半70分レースの順位を引き継いだ状態で後半70分レースがスタートし、最終的にもっとも多く周回したチームが優勝となる。チーム戦という形式も、このイベントの魅力のひとつだ。初対面同士でも同じマシンを託し合い、バトンをつなぐ。レースが始まれば自然と会話が生まれ、チームとしての一体感も生まれていく。

レース運営の仕組みも興味深い。使用されたカートは無線によるエンジン制御が可能で、赤旗が出た際には全車の速度が自動的に制限されるほか、接触などの違反行為があった場合にはペナルティとして数周にわたり最高速が抑えられる仕組みになっている。レンタルカートとはいえ、レース運営の安全管理はかなり本格的だ。

体力面を考慮し1人あたり7周程度を目安にドライバー交代、さらには5回以上のドライバー交代が義務付けられていた。もしこの規定周回を超えて走行した場合、その超過分についてはエンジン出力が制限されるペナルティが科される。

筆者が所属した青ゼッケンのチームは、後半担当のメンバーのレース中タイムが速かったことに加え、接触などによるペナルティもなくクリーンな走行を維持。全員が2回ずつステアリングを握り、最後のドライバーがチェッカーフラッグを受けて、最終的にチーム優勝を果たすことができた。チームが優勝のチェッカーを受けた瞬間の高揚感は格別だった。

モータースポーツは興味があっても最初の一歩が踏み出しにくい世界だ。費用や環境、仲間の存在など、ハードルは少なくない。そんな中で、このKINTOカートチャレンジのように“走る楽しさ”に気軽に触れられる場をブランド主導で用意する意義は大きい。クルマとの向き合い方は一つではない。所有でも、利用でもいい。だが、その先にある楽しさは共通している。今回のカートチャレンジは、モータースポーツの世界を少しだけ身近なものにしてくれる体験だった。

今回のイベントはKINTO契約者向けに開催されたものだが、同社はモータースポーツ活動にも積極的に取り組んでいる。契約していない人でもスポーツカーを気軽に楽しめる「MOTORSPORT by KINTO(通称モスキン)」では、サブスク、スポーツカーレンタル、サーキットレンタル、走行・体験イベントの4つのサービスを展開中。本誌5月号では、その中からスポーツカーレンタルをピックアップ。気になる詳細は5月号をチェック!

〈文=ドライバーWeb編集部・石垣 写真=KINTO〉